第十話 過去と未来
拙い文章ですが、よろしくお願いします!
それでは、お楽しみ下さいませ!
ズレた仮面を真っ直ぐに直して未だ縛られたままの元クラスメイト達の元へ向かう。木にくくりつけられた彼らはぽかんと口を開けたまま俺を見ている。泣くでもなく、歓喜するでもなく、まるで時が止まったかのように固まっている。
本当に何が起きたのか分かっていないという表情だ。しかし、数秒後、彼らの顔には恐怖が浮かび上がる。
口をぱくぱくさせて言葉にすらできない恐怖の悲鳴を叫んでいる。今まで魔法も剣すらも見たことないような一般人。彼らが大精霊エリミエンスの攻撃を間近で見たのだ。恐れないはずがない。ましてや今の俺は味方か敵かも分からない不審者。彼らにとっては得体の知れない存在だ。
「……ひっ!」
全員の顔を見渡す。どうやらオタクグループに所属していた男子達以外は全員いるようだ。どこかに消えたオタク達のことは放っておいて、問題はこいつらだ。
全員盗賊によって制服は破り捨てられている。下着姿で少し肌寒そうだ。なにより見苦しい。
武器も食糧もこいつらにはない。今日の寝床も怪しいだろう。本来なら異世界経験者の俺が手助けするべきなのだが、俺を追放したこいつらにそんか義理はない。
だが、見殺しにする訳にもいかないよな。
「……仕方ない」
少し離れた所に盗賊の馬車を見つけた。荷台に乗って荷物を漁る。盗品を漁るのは不本意だが、未来ある若者のためだ。仕方がない。商人や村人から奪ったであろう服や食糧を箱に適当に詰めて運ぶ。
「あ、あの、これって……」
クラス委員長の加賀美爽夜の前まで荷物を持っていって、これを指差す。
全員の縄を解くのも面倒くさい。あとのことは彼女に任せよう。俺は委員長の縄を解く。これで俺の意図は伝わっただろう。
「あの!た、助けて頂きありがとうございます!」
委員長は身体を手で隠しながらペコペコ頭を下げる。相変わらず礼儀正しい子だ。それに得体の知れない男に話しかける胆力も持っている。他の奴らは声も出せないほど怯えているというのに。
「…………」
そういえば、俺がこのクラスから追放された時、気にかけてくれた唯一の人が彼女だった。
みんなが出ていけと罵る中、彼女だけが勇気を出してみんなを諫めようとしてくれた。その努力もどこかの顔だけ野郎のせいで無駄になったが。
まぁおそらく彼女が止めたとしても俺はこのクラスから出て行っただろう。その理由はこの悲惨な光景を見たら分かるだろう。
異世界に来てそうそう仲間割れ。勇者の力を持つ彼らにとって取るに足らないはずの雑魚盗賊に負ける始末。
俺が助けなかったら全員ここで死んでいただろう。もしくは全員奴隷落ち。それくらい危険な状況だった。
元クラスメイトのよしみで助けることにしたが、本当に自分を追放した彼らを助けてよかったのだろうかと思ってしまう。
これも元勇者の性なのだろうか。困っている人を助けたくなる。手を差し伸べずにはいられない。本当に嫌になる。
──俺は、自由に生きると決めただろうに
でも、まあ彼女くらいは救われるべきだろう。こんな所で彼女は死ぬべきじゃない。
「服、ありがとうございます……。それに食糧も。後で皆んなに配りますね」
こんな時でもみんなのことを考えているのか。とんだお人好しだ。だがこういうお人好しほどすぐに死んでしまうと俺は知っている。自分を犠牲にしてまで他人を助けようとするからだ。そんな奴らを俺はたくさん見てきた。
『──お前だけでも逃げろ!ホーマ!」
いや、思い出さなくていい。感傷に浸っている時間ほど無駄なものはないだろうから。どれだけ後悔して懺悔しても失ったものは取り戻せない。そう、どうしようもできないんだ。
だから俺はもう勇者なんて肩書きに縛られることはしない。二度目の異世界は自由に生きてやる。
「……えっと……もし良かったらこの森を出るまで助けて頂けませんか?服と食糧を恵んでもらったくせに厚かましいことは重々承知なのですが……」
まあ、そのくらいの手助けはしてあげても良いだろう。だが、その後はもう一切こいつらとはもう関わらない。俺は追放されたのだ。本当ならここまでしてやる義理もないのだ。
まあ俺の手助けは異世界召喚後のチュートリアルみないなものだと考えればいいだろう。この経験を活かしてそれぞれ好きに異世界を生き抜いていってくれ。
俺は声は出せないので、一度こくりと頷いた。
すると委員長はぱあっと顔が明るくなり、もう一度深々と頭を下げた。
しかし、その時だった。
膨大な魔力が迫っているのを感じた。
──これは……空からだっ!
「……くそっ!まさか!」
大空に羽ばたくのは飛竜。その数はざっと50は超える。たった一体で街一つ分を破壊できるとされる飛竜が50体以上である。そしてその全てはここを目指している。
飛竜の上には甲冑を身に纏った戦士が騎乗している。飛竜を乗りこなすのは並の戦士には難しい。長年の修錬がねければなしえない。
飛竜の先頭には他の飛竜よりも一層大きな黒の飛竜。そこに仁王立ちするのは大剣を持った大柄の男、一人。
「………あ!あれは!?」
飛竜に括り付けられているエンブレムをよく見る。飛竜と剣が描かれた赤のエンブレム。あれは以前俺をこの世界に召喚したスンナ王国のものだった。
だが、俺の記憶の中のスンナ王国とは違った。スンナ王国は飛竜なんて所有していないはず。なのにこんな大量に飛竜を従えている。驚くべきことだ。
俺が今スンナ王国に見つかるのは非常にまずい。俺は魔王を倒した後、用済みだと捨てられるように元の世界に送還された。そんな俺がまたこの世界に舞い戻ってきたとバレたら非常に面倒くさいことになる。
委員長には悪いが、ここは逃げる一択だ。
「ち、ちょっと待って!その声!もしかして──」
しまった。突然の出来事に思わず声が出てしまっていた。
「しっーー!!」
俺は彼女の口を塞いで、周りに聞こえないようにできるだけ小さい声で話す。
「正体が俺であることは他言するな。あと、さっきの、みんなを森から脱出されるっていう話、やっぱり無しにしてくれ」
こんな状況で数十人連れての森からの脱出は不可能だ。必ずあいらにバレてしまうだろう。恐らくあいつらの狙いは俺達だ。だからあんな戦力を揃えてこんな何も無い森までやってきたのだろう。
だったら捕まるわけにはいかない。捕まればどんな未来が待っているかなんて予想するまでもなくわかる。実際経験したからな。
「……な、なんで……?」
彼女も小さな声で俺に話す。物分かりが良くて助かる。だが、その体は震えていて、その小さな指は俺の服を摘んでいる。どこかに行かないでと言っているようだった。
俺は空を指差す。
「……今から王国の兵士がやってくる。多分異世界召喚されたお前達を捕らえるためだ。俺はあいつらから逃げなくちゃいけない」
ギャャャアア!!と空から飛竜の咆哮が聞こえてきた。どうやら見つかってしまったらしい。ここに辿り着くのも時間の問題だろう。すぐにここを離れなくては。
「……みんなはどうなるの?」
震える声で委員長はそう聞いた。委員長は目に涙を溜めている。そりゃ怖いに決まっている。得体の知れないものが迫ってきているのだから。
「……分からない。だけど──」
これは言うべきなのか。これはなんのためなのか。
分からない。分からないけど、俺は聞かざるを得なかった。
「今ならまだ逃げれる。委員長。君だけなら逃すことができる。一緒にくるか?」
他のやつなんて知ったこっちゃないが彼女は違う。良い人が辛い目に遭うのなんてみたくない。
彼女は犠牲になるべきじゃない。
時間がない。
俺は右手を彼女に差し出す。
だけど、差し出した手が握られることは無かった。
「……一人だけ逃げるなんてできない。ごめんね。和君」
その瞳には強い信念が宿っていた。非力な少女はそれでもこの世界を生き抜くのだという。
「そうか……」
飛竜の気配はもうすぐそこまできている。
魔力もだいぶ体の中に溜まった。
「……《アイテムボックス》」
最後に俺は一つの指輪を彼女に差し出す。かなり貴重な魔道具だ。いつか彼女の身に危険が迫った時のために彼女を守れるように。
「これって……」
「お守りだよ。君は死なないで欲しいから」
いつかきっと、また会えるように。
「……うん。ありがとう!」
もう一度飛竜の咆哮が聞こえた時、
「………『転移』」
俺の体はその場からかき消えたのだった。
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