第一話 異世界の勇者
新連載です!!
元々投稿していた作品をリメイクしました!
最初の方は連続で投稿するのでよろしくお願いします!!
どうぞお楽しみ下さい!
場面が変わる所は****このような記号をいれますが、ご了承ください
最初に意識に浮かんだのは、ひどく場違いな感覚だった。
──冷たい。
背中に触れている床が、妙に冷たい。教室の床とは違う、もっと硬くて、温度のない冷たさだ。
その感覚が、ゆっくりと現実を引き寄せてくる。
「……ん」
俺──二条秋斗は、重たいまぶたを持ち上げた。
視界の中で、ぼやけた光が揺れている。瞬きを何度か繰り返すと、それは少しずつ形を持ちはじめた。
天井だった。
やけに高い天井。
白い石のアーチが幾重にも重なり、中心には巨大なシャンデリアが吊り下げられている。金色の飾りが光を受けて、鈍く輝いていた。金持ちの家に吊るしてありそうな、だけどどこか形も色も若干違和感のあるそんな印象。
見慣れない。どこにも見覚えがない。俺は数秒、その天井を眺めていた。
(……あれ)
おかしい。
ゆっくりと首を傾ける。
背中に触れている床の硬さ。鼻にかすかに届く石の匂い。そして、空気の広がり方。
そうだ、ぼーっとしていた。どう考えてもここは、教室ではない。俺はさっきまで高校の教室にいた。
グワングワン頭を叩き起こし、肘をついて体を起こした。制服の袖が床に擦れて、ざり、と乾いた音がした。
そこで初めて、周囲の様子が目に入った。
「……え?」
思わず声が漏れる。周囲にいたのは、見慣れた顔だった。クラスメイトたちだ。良かった。みんないる。
同じ制服。同じ教室で毎日顔を合わせている連中。
男子も女子も、十数人ほどが同じように床に座り込んでいる。
そして全員、混乱に陥っていた。
「ちょ、なにここ!?」
誰かが叫ぶ。
「意味わかんないんだけど!」
「さっきまで教室だったよな!?」
ざわざわと騒ぎが広がっていく。
俺は、ぼんやりとその光景を見渡した。
(……なんだこれ)
記憶を辿る。
確か、さっきまで教室にいた。
ホームルームの時間だった。
担任が黒板の前で、どうでもいい連絡をしていた気がする。文化祭の係がどうとか、進路希望の紙がどうとか。
クラスの半分は話を聞いていなかった。
俺も、その一人だ。
窓の外をぼんやり眺めていた。
そのときだった。
突然、床が光った。
教室の床に、円形の光が広がった。
まるで、ゲームに出てくる魔法陣みたいな模様。
誰かが「なんだこれ」と言った。
誰かが「プロジェクター?」と笑った。
だが次の瞬間、光は一気に強くなった。
眩しくて、目を閉じた。
そして――
次に目を開けたときには、ここにいた。
「……」
ゆっくり息を吐く。そして、ようやく周囲をしっかり見回す。
──広い。
とにかく広い空間だった。床は白い石で作られている。壁には巨大な柱が並び、赤い旗が掛けられていた。どこかで見たことがある景色。歴史の教科書とか、映画とか。そういう場所に、よく似ている。
(……王宮?)
その言葉が頭に浮かんだ瞬間。
重々しい音が響いた。
ゴォォン……
広間の奥にある巨大な扉が、ゆっくりと開いていく。
その音だけで、ざわついていたクラスの空気が一瞬で静まった。
全員の視線が、自然とそちらに向く。
そこから現れたのは――
鎧を着た男たちだった。
銀色の鎧。
長い槍。
整然と並ぶ足並み。
足音が石の床に響く。
カン、カン、カン、と乾いた音。
秋斗は無意識に息を飲んだ。
(……本物?)
コスプレにしては、妙にリアルだ。
鎧の擦れる音。
革の匂い。
金属の冷たい光。
どれもが作り物には見えなかった。
兵士たちは左右に分かれ、道を作る。
そしてその奥から、一人の老人が現れた。
白い髭を蓄えた男だった。
深紅のマントを羽織り、頭には金の王冠。
彼はゆっくりと階段を上り、広間の奥にある玉座に腰を下ろした。
秋斗はその光景を見て、思った。
(あー……)
理解した。
これは、たぶん。
「ようこそ」
老人が口を開いた。
低く、よく通る声だった。
広間全体に、静かに響く。
「勇者たちよ」
その言葉が落ちた瞬間。
空気が止まった。
クラスメイトたちは顔を見合わせる。
「……え?」
誰かが小さく声を漏らした。
老人――王様らしき人物は、ゆっくりと立ち上がる。
「そなたたちは、我が国が召喚した」
一瞬、間を置く。
「勇者である」
沈黙。
数秒の空白のあと。
「ええええ!?」
広間が一気に騒がしくなった。
「勇者!?」
「まじで!?」
「異世界ってやつ!?」
興奮と混乱が入り混じった声。
誰かが笑い、誰かが戸惑い、誰かがスマホを取り出そうとして――電波がないことに気づく。
秋斗はその騒ぎを、少し離れた場所から眺めていた。
(……やっぱり)
どこかで見た展開だ。
クラス転移。
勇者召喚。
魔王討伐。
ラノベや漫画で、何度も読んだことがある。
王様は手を上げ、静かに言った。
「この世界は今、魔王の脅威にさらされている」
やっぱり魔王もいるらしい。
秋斗は小さく息を吐いた。
そして思う。
(テンプレ、フルコースだな)
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