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感動のッピーエンドへ

816


「考えてもご覧なさい。私達の都合で、乳飲み子だったウルフドルを他人に育てて貰ったのに、今度はその育ての親から無理に引き離し、あげくの果ては好きな娘と別れさせ別の娘と無理に結婚させるんですか?

それじゃあまりに可哀想過ぎます」



お妃様は、そう言いながら泣いています。




王様はしばらく無言で立ち尽くしていましたが、




「分かった。


ウルフドルとデージーの結婚は認めよう。それから40才までに戻らなかったら、弟のフィールドを次の王にしよう」



と言いました。





817


お妃様は、直接村に出向きヘリオトロープ夫妻とデージーの両親に、これまでのお詫びと王様の言われたことを伝えました。



2組の夫婦は心から喜び感謝の言葉を伝えました。




でもその事をウルフドルは知りませんでした。




ヘリオトロープ夫妻やデージーの両親は、ウルフドル達が今どこにいるか分からないので、知らせることが出来なかったのです。





818


ウルフドルとデージーは『ビックローズスカイ星』で幸せに暮らしていましたが、ドリームスター星からはあまりに遠く離れていた為、両親の事が気になっていました。



それでウルフドルは、これまで勉強していた本と同じものを魔法で出し、仕事の合間に魔法の勉強をしました。1年程かけて、こちらの映像をドリームスターに住む両親に送る装置を作り出しました。





819


ヘリオトロープ夫妻と隣に住むデージーの両親は、いつものように昼食後一緒にお茶を飲みながら話をしていました。




「あの子達がいなくなってから、もう1年になるわね」



デージーのお母さんが言いました。



「何処で何をしているのやら…。幸せに暮らしているならいいんだけどね」



ローズマリーもため息をつきました。




「テレビでもかけようか」



ヘリオトロープがリモコンを手にした瞬間、テレビが付いたので、皆はキョトン(・_・)としました。




820


テレビにはウルフドルとデージーが笑顔で映っていました。


皆はポカンとして、夢ではないかと目をこすったり、何度も瞬きしたり、頬をつねったりしました。




「お父さん、お母さん…お元気ですか?


僕たちは今、『ドリームスター』から遠く離れた『ビックローズスカイ星』にいます。」



ウルフドルは、これまでの事をテレビの映像を通して伝えました。2人の元気な姿を見て4人の親達は安心しました。





821


2人の住んでいる家の中を紹介したり、庭の大きな木にはハピネスの為の家も作ってありました。



「これから月に1度映像を送ります。万が一お城の人が来たらリモコンのスイッチを切るように…、またスイッチを入れれば再開するようになっているから」


と言いました。




親達は元気な姿を見て安心はするものの、王様が2人の結婚を既に許していることが伝えられないことが残念でした。





822


それからさらに長い年月が流れました


「あの子達がこの星を出て行ってから、もうすぐ14年になりますね。ウルフドルもあと一月(ヒトツキ)で40(ヨンジュウ)になるのね。


王様も2人のことを許して下さっているのだから、もう帰ってきてほしいわ」



ローズマリーはため息をつきました。



「王様が許してくれている事を、彼らは知らないからね」



デージーの父親も残念そうに言いました。



孫たちは12才の男の子と9才の女の子の2人いて、4人は孫たちにも会いたいと思うのでした。





823


ウルフドルの家族がレストランで食事をし、店を出ようとすると、声をかけてきた者がいました。




「おやっ、これはこれはウルフドル王子ではありませんか(^-^)。


こんなところでお会いするとは奇遇ですな~」




「あなたは…(--;)

父の元で働いていたサタンリーフ…」



ウルフドルは言葉を無くしました。サタンリーフは父の信頼していた部下であり、ウルフドルとフィールドに魔法を教える先生でもありました。





824


サタンリーフの陰謀




825


「覚えて頂いていて嬉しゅうございます。今日はご家族お揃いでお食事ですか?」



サタンリーフはニヤリと笑いました。




「どうしてここが分かったんですか? 私を連れ戻しに来たんですか?」



ウルフドルは、苦しそうな表情を浮かべました。

(-_-;)




(せっかくこんな遠い星まで来たと言うのに…まさか見つかってしまうとは…)




826


「ウルフドル王子。誤解をなさらないで下さい。私は何も王様に告げ口などするつもりは毛頭ございません」




「それは本当か?」




「はい。まずは…、こんな所で立ち話をするのもなんですから、お宅までお邪魔してもよろしいでしょうか?」



ウルフドルがデージーを見ると頷いたので、サタンリーフを家に招待しました。





827


サタンリーフは、デージーの入れてくれたお茶を一口飲むと、ゆっくり話始めました。




「王様は2人が他の星に逃げた事を大変怒っておられました。見つけ出したら強引に別れさせると言っておられました。


実は王子にはビックシャイン星のサフラン王女と縁談がありまして、王様は政略結婚をさせるつもりだったのです。それがダメになり怒り心頭でして…」



側で聞いていたデージーの目からは、みるみる涙が溢れました。そんな母の顔を不安げに見ている子供達をデージーは別の部屋に連れて行きました。





828


「それだけではありません。自分の思い通りにならない息子を牢屋に入れてしまえとも…。王様は何と酷いことをおっしゃるのかと、私は涙が出てまいりました」




「本当に父がそんな事を言われたのですか?私には信じられません」




「王様は優しい仮面を被っていましたが、本来はそういう方でした。


政略結婚が破談になってから更に傲慢になって、多くの部下達がいつもビクビク怯えながら暮らしているんです」





829


「信じられない。父がそんな事をするなんて…」





それから毎日のようにサタンリーフがウルフドルの家に来ては、王様の嘘の噂を話して聞かせるのでした。


ウルフドルは厳しいけれど、父である王様を尊敬もしていました。民衆に愛される心優しい王様だと思っていたので、サタンリーフに聞かされる話は耳を覆いたくなる事ばかりでした。



自分に逆らう部下は牢屋に入れてしまったり、まるで国民を奴隷のようにこき使っているなど…とても信じられません。





830


「それで…私からの提案なのですが、ウルフドル様が王位を継がれて傲慢な王様をギャフンと言わせませんか?」




「私は王になる気はない。今のままで十分幸せだ」



ウルフドルはキッパリと答えました。




「それでは国民がどうなっても構わないとおっしゃるんですか?」




「それは……」



ウルフドルは黙り込んでしまいました。



「国民は苦しんでいるのに、ご自分だけ幸せなら関係ないとおっしゃるんですか?」




こうしてサタンリーフは説得を続けました。




831


本当は傲慢な態度で国民を苦しめていたのは、サタンリーフの方でした。



王様は信頼していただけに、真実を国民から知らされた時はショックを隠せませんでした。



仕方無しに王様は、国民を守るために、サタンリーフを国外追放することにしました。



それを知ったサタンリーフは逆恨みして、王様に復讐しようと考えたのです。



国外追放される前日、ウルフドルの実家の前を歩いていたサタンリーフは、偶然カーテンの隙間からウルフドルからの映像を見てしまったのです。





832


魔法でヘッドフォンを出して耳に当てると、ウルフドルの声が聞こえ現在住んでいる所が分かりました。



「フッフッフッ。これは使えるな…」



サタンリーフはニヤリと笑いました。


国外追放された人間はこの国に戻ることは出来ないのですが、ウルフドル王子と一緒なら大丈夫と考えたのです。



サタンリーフはドリームスターを国外追放されると、まっすぐにウルフドルが住んでいる『ビックローズスカイ』へ向かったのです。





833


「ウルフドル様の育ての親であるヘリオトロープ夫妻やデージーさんのご両親を守るためにも一緒に協力してほしいんです」



サタンリーフは熱心に誘います。





サタンリーフが帰って行き、子供たちが眠った後、デージーがリビングに入って行くと、ウルフドルはソファーに座り頭を抱えていました。




「王様がそんなことをするなんて信じられないわ」



デージーが、ハーブティのカップをウルフドルの前に置きながら言いました。




834


「僕も信じられないが、サタンリーフが嘘を言っているようにも見えないんだよ

(-_-;)


実際に僕達の結婚に反対していたのも事実だし…。


ドリームスターより何倍も大きい星の王女と僕が結婚したら大いに恩恵を受けるはずだし…」




「私は…あなたがドリームスターに行ったら、もう…戻って来ないんじゃないかと…不安なの」



デージーは辛そうです。





835


「ハハハ…、大丈夫だよ。

父に十分反省させて、ドリームスターを平和な星にしたら、弟のフィールドに王の座を託して戻って来るから。


それまでしばらくの間、子供達を頼む」




「ねえ、いったいどんなことをするの?

まさか王様に危害を加えることはしないでしょうね」



「どんなことをするかは聞いていないんだけど…。大丈夫、心配しないで待っていてほしい」





836


それから数日後。



ウルフドルは、不安そうなデージーと泣いている子供達を抱きしめると、サタンリーフの超高速宇宙船に乗り込みました。





《思っていた通りだ》



サタンリーフはニヤリとしました。




本来はドリームスターに来ることが出来ないサタンリーフでしたが、ウルフドルが一緒だったので、難なくバリアーをすり抜ける事が出来ました。





837


14年ぶりにドリームスターの地を踏んだウルフドルでしたが、昔と変わらず平和に見えました。




「まずはお城に行く前に、私からお話が…」




サタンリーフはウルフドルに目を閉じるように言うと、これまで以上に王様の悪いイメージを植え付けるマインドコントロールの魔法をかけました。





838


お城に行くと、久しぶりに戻って来た息子に会えたことを、父親である王様やお妃様は心から喜びました。



でも、マインドコントロールされているウルフドルには、そんな両親さえ仮面の下で嘲笑っているように思えました。





839


ウルフドルは、サタンリーフに言われたように、


「王位を継承し王様になります」


と父に告げました。




何も知らない王様は満面の笑みで喜び、新しい王となったウルフドルを祝うお祭りをしました。



国中の人達がウルフドルが14年ぶりに戻り、新王様となったことを喜び祝福してくれました。



ウルフドルもこの人達の笑顔守るために、出来るだけの事をしたいと強く思うのでした。





840


「王様が困れば困るほど国民は喜ぶ」



ウルフドルは、そんな風にマインドコントロールされていました。




広い庭園を壊したり、真っ白いお城の壁全体に落書きしたり、両親(大王夫婦)の衣装をボロボロに引き裂いたり…ありとあらゆる事をしていきました。





841


両親(大王夫妻)は、ウルフドルがどうしてこんなことをするのか理解できませんでした。


しかしこのままでは大変なことになると感じ、やむを得ずウルフドルを『ムガムハタ星』に送る決意をしました。



両親は、この事を国民には隠していました。



しかし、それでもお城に出入りしている人達により、ウルフドルが城中で暴れている事が一部の国民には知られてしまいました。





842


ヘリオトロープ夫妻やデージーの両親の元にもウルフドルの噂が流れて来ていました。



《まさかそんな事があるはずがない。ウルフドルなら何より先に、私達に会いに来るはずだ》



両親はそう思い、事実を確認するために、デージーの両親と共にお城に行きました。



しかし、大王はウルフドルをムガムハタ星に送り込んでしまった後でした。




843


ムガムハタ星は、ドリームスターのすぐ近くにある小さな星で、ドリームスターの領土です。



ムガムハタ星で修行している間は、空気のバリアーがあり、そこから出ることもまた、他の者が入って行くことも出来ません。



ウルフドルは、歪んだ心を正しく矯正する様々な工夫がされているこの星で、サタンリーフからのマインドコントロールからも解放されていきました。





844


指導をしてくれた人達や、一緒に修行していた仲間達とも仲良く楽しく過ごすようになっていました。



回復するにつれて、自分がサタンリーフによりマインドコントロールされた記憶も薄らいで行きました。



だから、指導していた人に自分がこれまでやって来たことを聞かされ、《何故そんなことをしたのか》どうしても信じられない思いでした。





845


長い間、家族と離れ離れになっていて、デージーや子供達にも申し訳なかったと悔やまれてなりませんでした。



ウルフドルが回復したことをムガムハタ星の指導員に聞き、大王夫妻もホッとしました。



ウルフドルがドリームスターに帰って行く時は、ムガムハタ星で一緒に過ごした全ての人達に笑顔で見送られ、晴れやかな明るい表情で、深々と頭を下げて帰って来たのでした。




846


しかし、ムガムハタ星から戻ってきたウルフドルをサタンリーフが待ち構えていました。





847


サタンリーフは言葉巧みに誘います。



「このような仕打ちをした大王様に復讐しましょう」



またしても、サタンリーフはウルフドルを魔法で催眠状態にして、王様への恨みを植えつけ、今回の事件を起こしたのでした。




ウルフドルがムガムハタ星から戻って来た日は、ちょうどケイン王子の誕生日パーティーの当日でした。




848


********


そして、こちらは現在のドリームスターです。


******** 







849


ケイン王子の誕生パーティーには、地球からたくさんの子供達が来ています。




子供たちは魔法の遊園地で楽しく遊んできて、ケインの誕生パーティーも期待していたのですが、まさかこんな恐ろしい


((((;゜Д゜)))


事が起こるとは夢にも思いませんでした。





850


「俺はずっと幸せに暮らしていたんだ。それをお前はメチャクチャにしたんだ‼


いくら父親だって、子供の幸せをぶち壊すなんて許せない‼」



ウルフドルは怒りに震えています。




「私はお前の幸せを壊した覚えはない。結婚だって許した」



大王は言いました。



「ビックシャイン星のサフラン王女と政略結婚させようとしたんだろう。


俺がデージーと他の星に逃げてしまったから、探しだして俺を牢屋に入れようとしたんだろう?」



ウルフドルは泣いていました。





851


「私はそんなことを言った覚えはないぞ‼」



大王は大きな声で、キッパリ言いました。




それらの様子を舞台の幕の所から隠れるようにして、見ていた男がいました。




「そこにいるのはサタンリーフだな。

いったいどういう事なんだ。説明してもらおうか‼」



大王が叫びました。




サタンリーフはビクリとして、上目使いにこちらを見ていましたが、(観念したように)その場にヘナヘナと座り込んでしまいました。





852


「どうもおかしいと思っていたんだ。性格の優しいウルフドルがあんなに暴れたりするのは…。


いったい何があったんだろうとずっと思っていたんだ。



そうか、お前がウルフドルを魔法でマインドコントロールしてやらせていたのか‼」



大王はウルフドルにかけられていたマインドコントロールの魔法を解くと、ウルフドルは本来の優しい表情に戻りました。





853


サタンリーフは観念して舞台の上から降りて来ると、大王の前に膝まずき両手をつくと、泣きながら謝りました。




「王様、いや大王様。

……ごめんなさい……も…申し訳ありません…でした。

それから、ウルフドルさま……ウルフドル王様……本当に…ご迷惑を…おかけしました。


何と言ってお詫びして良いか…お許しください…」




サタンリーフは鼻水をすすりながら泣いて謝りました。心から反省しているように見えました。




854


「お前は、私が国外追放したことを根に持って、このような事をしでかしたのか

(*`Д´)ノ!!!」



「は…い」



サタンリーフはうなだれながら小さな声で返事しました。




855


「なんと言う事だ。


お前は私にとって信頼できる優秀な部下の1人だった。だから、息子達に魔法を教える教師にしたんだ。


だが4~5年前から明らかにお前の態度が悪くなった。


国民に嫌がらせをしたりして苛めていると言うのを聞き、お灸をすえるつもりでこの国から出したのだ。


他の星を旅して歩き、少しでも修行になればと思ってな」




サタンリーフは下を向いたまま黙っています。




856


「それなのに…、なんと言うことだ。修行どころか何の罪もないウルフドルを苦しめた。ウルフドルばかりではない。ウルフドルの家族まで巻き込んで…」



大王は泣いていました。




「私も知らないウルフドルの住んでいる星をどうやって探し出したのだ!!」




「そ…それは…、そのう…、ウルフドル様が送ってこられた映像を偶然見てしまったんです」



サタンリーフは正直に話しました。



857


「ウルフドル、どうする?煮るなり焼くなり、好きにしていいぞ」



大王はウルフドルを見て言いました。一番の被害者はウルフドルだったからです。


サタンリーフのせいで家族と2年半も離ればなれにさせられ、ムハムハタ星で修行をさせられていたのですから…。





858


ウルフドルの優しさ



859


ウルフドルは、父である大王の前で、泣き崩れているサタンリーフを言葉もなくただ見つめていました。



そして、その様子を少し離れた所から弟のフィールドが困ったように見ていました。



弟のフィールドは、兄のウルフドルがムガムハタ星に行っている間『ドリームスターの王』としての仕事を代理でしていました。




860


子供達はおびえながら、なりゆきを見守っていましたが、それでも最悪の状態は脱したと思ったからか、表情から少しこわばりが取れていました。



サタンリーフはうなだれ、涙で顔をぐしゃぐしゃにしていましたが、ポツリと言いました。



「俺は寂しかったんだ」



意外な言葉に、皆はサタンリーフをじっと見つめました。





861


*****


サタンリーフは幼い頃に両親を亡くし、その当時の王様(今の大王の父親)に引き取られ育てられました。



一人っ子だった大王は、一回り年下のサタンリーフを本当の弟のように可愛がりました。



大王が結婚して、ウルフドルやフィールドが生まれると、サタンリーフは兄のように2人の面倒を見るようになりました。



その後、サタンリーフはウルフドルとフィールドに魔法を教える先生にもなりました。


*****





862


「サタンリーフよ、お前はどうしてこんなことをしたのだ。そんなに私が憎いのか?


ウルフドルを可愛がってくれていたのでは無かったのか?」



大王は涙を流しながら、膝まづきサタンリーフの肩を揺すりました。



「どうして…どうして…こんなことをしたのだ」



863


「大王様、申し訳ありませんでした。m(__)m」



サタンリーフは床に頭をすりつけて謝りました。




「そんな言い方はやめてくれ。兄さんと呼んでくれ

(-_-;)」




「はい、兄さん。

兄さんが憎いなんて思ったことはありません

( ̄ロ ̄;)」




「それなら、何故こんなことをしたんだ」



864


「父さん(現在の大王の父)が5年前に亡くなって…、母さんも後を追うように亡くなって…、あれから俺はひどく落ち込んでいた」



サタンリーフは話し始めました。




865


「何だか生きているのが嫌になり、投げやりな気持ちになって、毎日憂鬱に過ごしていた。



それなのに…



それなのに…



俺がこんなにも心を痛めて辛い気持ちでいるのに…。



半年もしないうちに、大半の人達は…父さんの事を忘れたかのように、明るく幸せそうにしていたんた。



葬儀の時に泣いていた人達も楽しそうに笑っていて…、俺はとても腹がたって仕方がなかった」




866


「せめて1年間喪に服して、父さんの死を悲しみ、泣いていて欲しかったんだ。



俺は苛立ち、誰とはなしに皮肉を言ったり、意地悪を言ったり、心ない国民に怒りをぶつけた。



すると多くの国民が、俺の苦情を言い、兄さんは俺を他の星に行くように命じた」




「……」




867


「俺が他の星に行くと決まった前日、ウルフドルの家の前を通ると、カーテンの隙間からウルフドルの幸せそうな映像が見えたんだ。



そして、その映像を見ながら、ヘリオトロープ夫婦やデージーの両親も嬉しそうに笑っていた。



それらの様子を見ていた俺は苛立ち、皆を困らようと思った。


それで俺は今回の事を思いついたんだ」




868


ウルフドルの住んでいる星が分かると、俺は翌日何食わぬ顔で『ビックローズスカイ星』に向かい、その星でしばらく暮らし、様子を伺っていた。



そして、ウルフドルの家族がレストランに行った日、偶然を装い話しかけたんだ」




869


「お前が両親を慕っていたのは十分に分かった。両親の死を嘆き悲しみ、それほどまでに心を痛めていたことに気づいてあげられず悪かった。


だが父は97才、母は96才だったから、かなり長生きした。

人は永遠に生きることは出来ない、いつか必ず別れの時が来るんだよ」




「分かっています」



うなだれたままサタンリーフは言いました。




870


「お前に1つ言っておきたいことがある」




「何ですか?」




「それはな…、

人は誰でも生きていく中で、悲しみや苦しみなど辛い状況に遭遇するものなのだ。


これは避けることは出来ない。一時期は嘆き悲しんだとしても、そこから立ち上がり歩き出さなくてはならないのだ」



871


「国民だって、父の事を忘れたわけじゃないと思うんだよ。


いつまでもメソメソしていないで、明るく逞しく生きて行こうと頑張っているんだと思うんだ。


そういう姿を見て、天国の父さんを安心させようとしているんじゃないかな?」



「確かに…そうですね

(-_-;)。俺はずっと父さんを悲しませることばかりしてきたんですね」




「分かれば良いんだよ。気づくと言うことは大切だからね」




872


でも、何の罪もないウルフドルにした事は許される事ではない。


ウルフドルの家族、そして、今ここにいる子供達に計り知れない恐怖を与えてしまった。



これに対する《罪の償い》はしてもらわねばならないぞ」



「はい、分かっています。どんな罪でも受ける覚悟です」




873


「サタンリーフ叔父さん、あなたを赦します」




「えっ、( ; ゜Д゜)」



サタンリーフはウルフドルを見つめ驚いています。




「あんなに酷いことをした俺を…赦すと、赦すと言うのか?」



サタンリーフの目から涙が溢れました。



874


「確かに家族と長い間離れて暮らし、寂しい思いをさせてしまったけど、私がこの国を離れ他の星に行っている間中、サタンリーフ叔父さんは、祖父母や両親を支えてきてくれていました。


私は祖父母が死んだことさえ知らずにいたんです」



ウルフドルは、サタンリーフを立ち上がらせると言いました。




「罪を憎んで人を憎まず…。地球には、そんな素晴らしい言葉があるそうです。

私はそういう人でありたいと思っています」




875


「ウルフドル、お前は立派な王になった」



大王は笑顔で言うと、ウルフドルの手を両手で包むように握りました。



「これで私も安心して母さんと宇宙旅行が楽しめるよ」




「父さん、待って下さい‼

王はフィールドにお願いししたいんです」




「フィールド……に?」




「フィールドは優しい人間です。私の代わりに、王としてずっとこの国を守って来ました。


私は今住んでいる『ビックローズスカイ星』にとても愛着を感じていて、これからもずっと住み続けたいと思っています」





876


「フィールド…。

これまでウルフドルの代わりにこの国を治めてきてもらったが、これからも引き続き王としてこの国をおまえに任せて良いか?」




「はい、分かりました…父さん」



大王に言われ、フィールドも了承しました。そして、サタンリーフの所まで行くと、



「サタンリーフ叔父さん

、僕と一緒にこの国を宇宙ー幸せな星にしていきましょう。ご協力お願いします」



そう言って手を差し出しました。




877


こんな俺で役にたつことがあるなら、何でもしたいけど、俺は自分自身を許せないんだ」



サタンリーフは大王に向かって言いました。



「兄さんにお願いがあります。俺を犬にして下さい。そして、宇宙旅行のお供をさせて下さい」




「そうか…、分かった。お前が望むならそうしよう。

私達もお前と一緒なら楽しい旅になりそうだ。」



大王が嬉しそうに言い、隣にいた妻の方をを見ると、妻もにこやかにうなづきました。




878


その時、ウルフドルの子供達が近づいて来て、ウルフドルに甘えて抱きついて来ました。



ウルフドルは2人を優しく抱きしめると、子供達の後ろにいたデージーに言いました。



「君には苦労をかけたね。留守を守ってくれて有難う」



デージーは首を横にふりました。



「私はずっと信じていました。あなたが優しい人で私も幸せです」



デージーはそう言うと、にっこり微笑んで、ウルフドルの腕に自分の腕を絡めました。




879


長い長い時間のようですが、本当はとても短い時間の出来事でした。



880


大王はサタンリーフを魔法で犬にすると、犬になったサタンリーフは嬉しそうにしっぽをふりました。




「ケイン、来なさい」



大王がケインを手招きしました。



ケインはモジモジしながら大王の前に来ました。




「おじいさま、お久しぶりです」




「ケイン、誕生日おめでとう。また大きく逞しくなったな」




「おじいさま、有難うございます」




「今回の誕生日は怖がらせてしまって悪かったね。サタンリーフも十分反省しているようだから勘弁して欲しい」





881


「サタンリーフ大叔父さんも寂しかったんですよね。

ちょっと怖かったけど、スリルがあって面白かったです」




「ハハハ…。ケインは将来大物になりそうだな」



大王は豪快に笑いました。



「おじいさま(大王)とおばあさま(大王の妻)も遊園地で遊んで行って下さいね(*^_^*)」




「有難う、ケイン。

楽しませてもらうわ」



おばあさまもにこやかに言うと、犬になったサタンリーフを抱き上げました。

そして、大王はそのサタンリーフの頭をなでました。




882


「まずはこのレストランを元通りにしないと…」



フィールドは魔法の呪文を唱え、すべて元通りにしました。


それらの様子を見て、子供達は目を丸くして驚きの声をあげました。





883


誕生パーティー再開



884


「はい…、それでは、初めからやり直したいと思います」



クローバーさんが舞台の中央で、明るく元気に言いました。




「今からケイン王子の10才の誕生日パーティーを始めたいと思います。


まずはこのイベントの為に協力して頂きました、地球のスタッフの皆さんに、お礼を言いたいと思います」



舞台の上に、子供達を連れてきたスタッフが並び頭を下げると、子供達がいっせいに「有難うございます」とお礼を言いました。



885


「さて、それではケイン…挨拶をどうぞ」




ケインは舞台の上に上がって行くと、後ろにいるスタッフにお礼を言った後、



「迫力あるデモンストレーションがありましたが、大丈夫でしたか?」



と続け、客席を見渡しました。地球から来た子供達の表情が少し落ち着いたようなので、安心したようにニッコリ笑いました。



886


「これから僕の星の仲間たちが歌や踊りや寸劇などを披露します。皆さん、拍手でお迎え下さい」



そう言ってペコリと頭を下げると、子供達からわれるような拍手がおこりました。




「ケイン、上手に挨拶出来てたよ」



要君が笑顔で言いました。だいちゃんや美佳ちゃん、拓也君もうなづきました。




887


「そうかな」



ケインは照れくさそうに頭をかきました。




「それでは皆さん、お待たせしました。可愛いこぶたさんたちのダンスです、どうぞ」



クローバーさんの声がしたので舞台を見ると、まだ少し恐がってる子もいましたが、皆の前で披露するため緊張している子、笑顔の子と様々でしたが、ダンスの音楽が始まると皆とっても上手に踊っていました。





888


「こぶたさんたち、可愛いね

(⌒‐⌒)」



萌ちゃんは楽しそうに、音楽に合わせて体を動かせています。




「まずは一件落着だね。安心したら、お腹がすいてきたよ」



要君が言うと、




「そうね、食べながら見ましょう」



美佳ちゃんが笑顔で言いました。




「いただきま~す」



子供達は目の前にあるご馳走を食べ始めました。




889


歌あり、漫才あり、寸劇ありと楽しい時間が過ぎて行きました。2時間程の時間がたちました。


ご馳走も食べ終わりテーブルの上が片付けられました。




「皆さん、これで第一部は終了です。30分ほど休憩した後第2部が始まります」


クローバーさんが話した後、幕が下ろされました。




「第2部はどんなのをやるの?」



マイケルがケインに尋ねました。




「それは秘密」



そう言ってケインがウインクしました。




890


「秘密なんて言われると、余計に知りなくなるよね」



だいちゃんが、要君の方を見て言いました。




「うんうん、凄く気になる」



要君は大きく頷きながら言いました。




「知らない方が、楽しみが2倍になって良いんじゃない?」



美佳ちゃんが言うと、「確かに…」と、他の子供達も頷きました。




休憩時間が終わり、会場の照明が消されました。

すると、高い天井の一部に照明が当てられました。



子供達は上を見上げると、「あっ( ̄0 ̄;と驚き、口をポカンとあけました。




891


皆の頭上に、ウェディングドレスを来た美しい女性がブランコに乗って現れました。


女性の周りにはたくさんの天使たちがいて、微笑みかけています。




「ねえ、あの綺麗な人、誰なの?」


「知らないけど、凄い美人だね」


「同姓でも憧れちゃうね」



女の子達が騒いでいます。




ブランコは少しずつ舞台に向かって動いていました。




892


「うわ~っ!!

スゲー美人。女優さんかな?」



「うん…そうかも。

それともミス日本かな?」



要君とだいちゃんも見とれています。



「あんな綺麗な人…(*''*)、生まれて初めて見たかも…」



優太君も顔を赤らめながら言いました。



「僕のお嫁さんにしたい」

(///∇///)



翔君もモジモジしながら言いました。




893


「ねえ(n‘∀‘)η、舞台の上に健太郎さんがいるよ。どうしてかな(・・?)」



萌ちゃんが、小首を傾げて言いました。




健太郎はスーツを着て、緊張した面持ちで、舞台の上にいて、美しい女性を見つめています。




「これって…ひょっとしたら…健太郎さんの結婚式?

( ; ゜Д゜)」



夏海ちゃんが叫びました。そして、それと同時に





894


「エエッ((((;゜Д゜)))」


「うそ~(@ ̄□ ̄@;)!!」


「(οдО;)信じられない‼」


「それはあり得ないでしょ…

w(°O°)w



「すると、あの美女は…桃花さん?」




パーティー会場全体にどよめきがおこりました。




895


美しい花嫁を乗せたブランコが舞台の上に来ると、女性はブランコから降りて、健太郎の元に歩いて行きました。


健太郎が手を差し出すと、桃花さんがハニカミながら手をつなぎました。




その時会場全体がパッと明るくなりました。




「ウソ~‼」


「あり得ないでしょ」



そんなことを言っている人もいましたが、2人が互いに見つめあい幸せそうな姿を見て、皆は割れんばかりの拍手をして祝福するのでした。




896


「はい、第2部は皆さんのご想像通り、健太郎君と桃花さんの結婚式です。盛大な拍手をお願いします」



クローバーさんがにっこり微笑んで言いました。



健太郎と桃花さんは微笑みながら見つめ合うと、客席に向かいお辞儀をしました。



897


「たくさんの祝福の拍手有難うございます(*^_^*)。

2人は私が地球に行って採用しました。いわば私が愛のキューピッドという事になるのでしょうか?」



クローバーさんは少しにやけています。




898


「健太郎君は、上にたくさんお姉さんがいらっしゃった影響もあり、女の子の遊びをして育ち、可愛いスカートを着るのが大好きだったそうです。



反対に桃花さんは、上にお兄さんがたくさんいて、いつも男の子と走り回っていたそうで、これまでスカートははいたことが無かったそうです」



客席の子供たちは(なるほどと)頷いています。




899


ここで働くようになって、お互いに愛し合うようになってゴールインとなったわけですが、私としても言葉にならない位嬉しいです。



まずは健太郎君から挨拶して貰いましょう。




客席の子供たちは「頑張れ~‼」と声援を送りました。




900


「私はこれまで、いつも女みたいなヤツだな…とか、気持ち悪い…とか、苛められてきました」



健太郎はポツリポツリと話し始めました。そんな健太郎の肩に手を置き、桃花さんが笑顔を向けました。



健太郎は頷くと、話を続けました。



901


「初めてクローバーさんに会ったのは、私がファミレスでバイトしている時でした。



私は不器用でなかなか仕事が覚えられなくて、テーブルに水を置こうとしてこぼしたり、注文を間違えたり…と、ドジばかりして…いつも店長に怒られていたの。


《もう、止めようかな?》



そんな事を考えていた時、クローバーさんがお客様としてお店に入って来たんです。




902


「いらっしゃいませ」


と言ってコップをテーブルに置こうとしてこぼしそうになったの。


「失礼しました」


と謝ると、


「気にしないで良いよ。それより君、転職する気ない?」


と、クローバーさんがニコニコしながら言ったんです。



「エエッ( ; ゜Д゜)」



って、私が驚いていると、クローバーさんが名刺を出して、



「バイトが終わったらここに来て」



と言って、地図の書いてあるパンフを渡されたの。仕事中だったので、私はとりあえず、それをポケットに入れたの。




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クローバーさんはパスタを注文して食べ終わると「じゃ、待ってるよ」と言って帰って行きました。




子供たちは興味津々で、健太郎の話に耳を傾けています。



夜バイトが終わって、地図を見ながら会社を探すと、古ぼけたビルに『レインボートラベル』という看板があるのが見えたの。



会社に行くと、受付の女性に応接室で待つように言われて…待っていたのね。


しばらくすると、背の高いハンサムな男性が応接室に入って来たのよ。




904


「それが桃花ちゃんだったんだけどね」



そう言うと、健太郎は桃花ちゃんを見てニコッと笑いました。



2人がソファーに座って待っていると、クローバーさんが応接室に入って来て私達の前に座るなり、



「2人とも採用が決定しました~」



と言ったの。





905


「あのう~、まだどんな仕事をするのか何も聞いていないんですけど…」



って、桃花ちゃんが言ったのよね。



そう言いながら、健太郎は隣にいる桃花ちゃんの方を見ました。



「確かに…。まだ仕事の具体的な内容については言って無かったね。


実は仕事をする所は地球じゃなくてドリームスターという星なんだ」



とクローバーさんが言ったの。もうビックリしたわよ~」




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「あの…言ってる事がよく分からないんですけど…」


って私が聞いたの。



「そうでしたね。

それでは分かりやすく説明しましょう。


お2人が働く所は、『雲の王国』という遊園地です。


この遊園地は、わがドリームスター星のケイン王子の10才の誕生日のプレゼントに作られた遊園地なんですが、もちろん子供なら誰でも自由に遊べます


お2人には、そこで子供達の世話をして欲しいんです」



907


クローバーさんは、そう言ったの。




私達はビックリして思わず顔を見合ってしまったわ。


クローバーさんが嘘を言っているようには見えなかったんだけど、宇宙にある遊園地が仕事場と言われてもにわかには信じられないわよね」



「まずは駐車場に来て下さい。ドリームスター星までご案内します」



と言われて、駐車場に行くと、何と空飛ぶ円盤があるじゃない。そりゃ~ビックリしたわよ。



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…で、そのまま円盤に乗って、一緒にここに来たって訳なの。私達の出会いはそんな感じだったわね。フフフ…。



一緒に仕事をしていくうちに、桃花ちゃんのような綺麗な人にも悩みがあることを知ったの。



桃花ちゃんはね。

中学生の時すでに175㎝も身長があったから、女の子の洋服が着れなかったらしいの。


高校生になると180㎝を越えてしまって、これまでに1度もスカートをはいたことがないと言っていたわ。



それを聞いて親近感がわいたの。





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私は女ばかりのきょうだい(姉妹)の中で可愛がられて育ったから、物心ついた頃からお姉ちゃん達にスカートをはかされていたわ。


男の私がいつもスカートをはいていて、女の子の桃花ちゃんがスカートをはいたことがないなんて…運命的なものを感じちゃったのよね。ウフフフ…



私、小さい頃から女の子の洋服を着ているけど、別に男の子が好きな訳じゃ無いのよ。


だから桃花ちゃんは理想のタイプなの。




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桃花ちゃんへの思いが片想いだと思っていたんだけど、…実は初めて会った時から、私の事が大好きだったらしいの。ウフフフ…」



健太郎はそう言って、恥ずかしそうに両手で顔を隠しました。




「まだ続くの?」



小さな子がつまらなそうに言いました。




「あの…健太郎君(^_^;)、挨拶はもう良いですか?


桃花さんから言いたいことがあったらぜひお話して下さい」



クローバーさんが言いました。




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桃花ちゃんはほんのり頬を染めて、少し恥ずかしそうに咳払いをすると、



「俺は…いや私は、健太郎の笑顔が大好きです。健太郎の無邪気な笑顔を見ていると、元気が湧いて来るんです。これからもずっと仲良くやっていこうね」



桃花さんはそう言うと、健太郎の肩を軽くポンポンと叩き、にっこり笑いました。




桃花さんのウェディングドレス姿は、本当にため息が出そうな位綺麗でした。



でも、初めて着たドレスがウェディングドレスだったため、歩き辛そうでした。そしてついに裾をヒールのかかとで踏んづけて、危うく転びそうになりました。




912


しかし、健太郎がお姫様抱っこしたので、転ばずにすみました。



いくらスリムだとはいえ、身長があるので桃花さんは結構体重がありましたが、健太郎はこのように桃花さんをお姫様抱っこするために、仕事が終わった後、ジムでトレーニングしていたのでした。




結婚式は賑やかで楽しいものでした。



子供達も舞台の上に上がって、歌ったりおどったり、『なぞなぞ』や『クイズ』をしたり、笑顔いっぱいの楽しいひとときでした。




913


クローバーさんは司会を大空さんに任せて、だいちゃんたちの所にやって来ました。




「本当にあの2人、仲が良いですね。僕も結婚したくなりました」



クローバーさんがポツリと言いました。



「私がお嫁さんになってあげようか(o^-^o)」



萌ちゃんが笑顔で言いました。



「萌ちゃんはいくつなの?」



「5才だよ」



「5才か~。お嫁に行くまでに20年あるから、僕は50才になっちゃうけど、待っててくれる?」



「50才? やあだ~。

おばあちゃんと同じ年だもん」




914


「萌ちゃん、僕だったら20年たってもおじいちゃんにならないよ」



翔君が嬉しそうに言いました。




「考えとく~。幼稚園に好きな子た~くさんいるんだも~ん」



萌ちゃんに言われ、翔君はガクッときています。




「少し前に食べたばかりなのに、また何か食べたくなってきた」




要君が厨房のある方を振り返って見ています。



「もう、要君ったら食いしん坊なんだから…」



あきれたように夏海ちゃんが言いました。




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「そう言う意地悪なことをいう女の子は、お嫁にいけないぞ」



拓也君が言いました。



「ご心配なく、要君も拓也君もタイプじゃないから」



夏海ちゃんは、プイッとほっぺをふくらませて言いました。




「それじゃ、この中だったら誰がタイプなんだよ」



拓也君が言いました。




「この中で選ぶのはキツいな~。まあ、あえていえば優太君が一番タイプに近いかな?」



優太君は少し照れています。




916


桃花さんと健太郎の結婚式はキリスト教式です。これは桃花さんの希望です。フィールド王が牧師さん役です。



「病める時も健やかなる時も…。」


「それでは誓いのキスを…」



誓いのキスが終わり、花束が投げられました。思いがけず花束を受け取った恵さんはキョトンと(・_・)としています。




「恵さん、良かったですね」



美佳ちゃんが笑顔を向けました。






917


「ありがとう。でも相手がいないわ」



恵さんは苦笑い(^_^;)しています。



「それでは僕、立候補します」



クローバーさんが手をあげました。




「僕も…僕も立候補しま~す‼」



舞台の上から大空さんが大きな声で言うと、客席からは歓声が上がりました。




それらの様子には関心が無い要君は、厨房の方に歩いていました。




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「あれっ、ふうせんさんたち、こんな所にいたの?」



厨房に一番近い席に座っていたふうせんさんたちは、イスの上で眠っていました。




「ああ、要君。

食べ過ぎて苦しいから寝ていたんだよ。要君も食べていいよ」




寝ぼけ顔の赤君が言いました。



テーブルの上にはまだご馳走が残っています。




「それじゃ、しょうがないな。食べるのを手伝ってあげるよ」



要君はムシャムシャと食べ始めました。




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「要君は痩せているのによく食べるね」



ケインが(面白いものを見るように)ニヤニヤしながら言いました。



「あれっ、ケイン。いつからいるの?」



「要君の後をつけて来たの。なんか面白そうなものが見られるかな?…って思ってさ」



「残念でした。別に僕は面白くないからね」




「いや、十分面白いよ」




「ケインはあんまり食べないね」




「僕は普通だよ。それより今から花火大会が始まるんだけど、要君は行かないの?」






920


「花火大会って言っても、外は明るいんじゃないの?」



そう言いながら要君は窓の方を見ました。



「あれっ、いつの間にか夜になってる(・_・)?」




「魔法の力で空の明るさをコントロール出来るんだよまあ地表から1㎞程度だけどね」




「へえ~、凄いね」




そこへだいちゃん達がやって来ました。




「要君、花火を見に行こうよ」




「う…うん、今行く」



921


「どこへ行ったんだと思ったら、また食べてたの。あきれたぁ」

(-_-;)




「まあまあ…、夏海ちゃんもそんなこと言わないで、早く花火を見に行こう♪」



美佳ちゃんに言われ、全員外に行きました。

もちろんふうせん達も全員起きて、子供達の後について行きました。




922


広い空き地に行くと、少し明るくなっていて、多くの子供達でざわめいていました。


クローバーさんが台の上からマイクで話し始めました。



「皆さん、これから花火大会が始まります」




すると、子供達の中から歓声が上がりました。




「でも、ただ花火を見上げて見るだけではつまりませんよね。そこで…


楽しく花火を見る道具を用意しました~。

イエ~イ(^O^)/」





923


「どういうものかと言うと、まず1つ目がリラックス雲です」




子供達はキョトン(・・?)としています。




「名前の通り、雲に乗って好きな所から花火が見られます」




(⌒‐⌒) (^o^) (^-^)


雲にのって…と聞いて、子供達は嬉しそうです。




「椅子にしたりソファーにしたり自分で工夫して下さいね(*^_^*)。


もちろん、ふざけても落ちませんから安心して下さい」




「わ~い‼

\(^o^)/ (*^▽^*)



子供達は大喜び。





924


もう1つは、ビッグシャボン玉。これも名前の通り、大きなシャボン玉の中に入って、フワリフワリと揺れながら花火を見ると言うものです」




「シャボン玉は割れたりしないの?」



心配そうに言う子がいました。




「シャボン玉と言っても、魔法で作った物ですから割れませんよ。安心して下さいね」





「へえ、凄いね。僕はシャボンに玉しよう~っと」



「私は雲にしようかな」



子供達は、それぞれ好きな方を選んで、好きな所に移動しました。




925


ヒュルヒュル…ドカーン


ヒュルヒュル…ドカーン




花火が上がるたび子供達は歓声を上げました。


しかも地球の花火と違うところは、花火のすぐ側まで行っても熱くないのです。


だから花火の中に入って行くことも出来てしまうのです。




926


花火は本当に綺麗でした。



ウルフドルの家族は雲をソファーのようにして、家族で楽しそうに見ています。



弟のフィールド王夫妻も、やはりソファーに座って、笑顔で仲睦まじく見ています。



犬になったサタンリーフは、大王の膝の上でキャウンキャウンとしっぽを振りながら喜んでいます。



健太郎と桃花さんは特大のシャボン玉に2人で入って、時折見つめ合いながら楽しんでいます。



子供達は自由に花火の中をすり抜けたりしながら、歓声をあげています。





927


生まれて初めて花火を見るアフリカの子供達ばかりでなく、何度も花火を見てきた子供達も大迫力の美しさに口をポカンと開けたままで感動にひたり続けました。





花火が終わると、夜空には満天の星が輝きだしました




928


「綺麗だね」



「ううん、桃花ちゃんの方がもっと綺麗よ」



「いや、健太郎の心の方がずっと綺麗だよ。この満天の星にだって負けないよ」



「あら~ん。桃花ちゃんったら正直なんだから~ん

(*/□\*)」




結婚したばかりの健太郎と桃花さんはイチャイチャしています。





929


「場所を変えよう」



だいちゃんが言いました。



「そうだね。向こうへ行こう」



だいちゃんの隣で、雲のソファーに座って星を見ていたマイケルがうなづきました。



この雲は自分の心で思った場所に自由に移動できます。



星空を満喫すると、子供達はホテルに戻って来ました。そして、決められたそれぞれの部屋に行きました。





930


女の子逹と男の子逹は別々の部屋です。


美佳ちゃんと夏海ちゃん、萌ちゃんの部屋には恵さんが、だいちゃんやケイン達男の子の部屋には大空さんが入りました。




「今日は色々な事がありましたね。皆さんお疲れさまでした」



全員がソファーに座ると、大空さんが言いました。



「ついに告白しちゃったね」



だいちゃんがニヤニヤしながら言うと、他の子供達も大空さんを見てニヤニヤしています。




931


「心臓が口から飛び出すんじゃないかと思う位緊張しちゃったよ」



大空さんは後頭部をさすりながら言いました。




「結果はともかく、気持ちを伝えられたんだから良いと思うよ。ネッ、だいちゃん」



「うん、僕もマイケルの言う通りだと思う。でも、恵さん美人だから他にもライバルがいそうだね」



だいちゃんは腕くみをしました。





932


「そうなんだよね~。

他にも何人か恵さんのこと好きな人いるんだよね。


でも恵さん自身は、どうやら…自分がモテてることに気づいていないみたいなんだ」



皆は良いアイデアは無いかと考えましたが、誰も浮かびませんでした。



「まあ、その事は僕の問題なので…。皆さん気にしないで下さい。


それより疲れを取るために少し眠りましょうか」



大空さんは明るく言いました。





933


「別に疲れていないよ。だって僕達若いもん(^o^)v」



拓也君が笑顔で言いました。



「それじゃ、ゲームでもしましょうか?」



「さんせい~」



翔君が立ち上がり万歳しました。



「ゲームに負けても泣くんじゃないよ」



お兄ちゃんの優太君が、翔君の頭に手を乗せました。



「僕、泣かないもん」



翔君はほっぺを膨らませるとプイッと横を向きました。




「まあまあ、ケンカしないで。どんなゲームが良いかな?」






934


一方こちらは美佳ちゃん達の部屋です。




「恵さんモテるんですね」



夏海ちゃんが言いました。



「そんなぁ~、2人とも会場を盛り上げるために言っただけよ。実際にあのあと雰囲気が盛り上がったでしょ」



「そうかな~。あの告白は本気だったと思うけど…。女の子としては、ちょっと羨ましかったな」



美佳ちゃんが言いました。



「桃花ちゃん、すご~く綺麗だったねぇ(^ー^)」



萌ちゃんが(*´-`)うっとりしながら言いました。





935


「本当に綺麗だったよね。桃花さんに最初に会った時は男性かと思ったのよ」



恵さんはクスッと笑いながら言いました。



「私も…」


「私も…」




美佳ちゃんと夏海ちゃんは同時に言うと、ちょっぴり寂しそうな顔をしてお互いの顔を見ました。



「正直言うとね。私達、桃花さんに一目惚れしちゃったの(^o^;)」



と夏海ちゃん。




「だって私達の周りに、あんな格好いい人いないものね(;^_^A」



と美佳ちゃん。





936


「でも今はあの2人を見て心から祝福してるの。幸せになって欲しいと思ってる」



美佳ちゃんの言葉に夏海ちゃんもうなづいています。



恵さんは美佳ちゃんと夏海ちゃんを交互に見ると、



「あの2人なら大丈夫。必ず幸せになれるわ。それより少し寝ましょうか。


明日もフル回転で遊ぶためには充電も必要よ」




「はーい(^O^)/」



萌ちゃんは元気に手をあげました。



937


皆はベッドで少し体を休めると、ホテルのレストランへ行きました。



料理はセルフサービスで、自由に食べたい物を好きなだけ食べるようになっています。



座席は自由ですが、やはり皆グループ毎に座っているようです。



皆、自分達が遊んだアトラクションを楽しそうに話し、また他の子供達の話を興味深く聞いていました。




938


「どれも楽しそう~。全部遊びたくなっちゃうね」



夏海ちゃんが夢見るように言いました。



「この遊園地の乗り物ぜ~んぶ遊びた~い(^O^)/」



翔君がハンバーグを食べながら、興奮して話します。




「ほらほら、口の中の食べ物が落ちるよ」



優太君が言う通り、翔君の口から食べかけのハンバーグがポロリと落ちました。



「楽しんでもらえているようで、僕も嬉しいです。」



大空さんはテーブルを拭きながら笑顔で言いました。





939


「昨日は有難う(*^_^*)」



その声に振り返ると、桃花さんと健太郎が笑顔で立っていました。

桃花さんは男装に、健太郎は女装に戻っていました。



「桃花さん、スカートははかないんですか?

昨日似合っていましたよ」



大空さんが言うと、



「やっぱり慣れないものはダメだわ。こっちの方が動きやすいからね」



桃花さんはウインクしました。



美佳ちゃんと夏海ちゃんは思わずドキッ

(m'□'m)としてしまうのでした。





940


「ねぇ、桃花ちゃん。もう行きましょう」



「あ~、うん」



健太郎は桃花さんと手をつなぐと、「じゃ~ね」と手を振って行ってしまいました。




2人の後ろ姿を見送り、

(〃´o`)=3 ハァ とため息をつくと、



「私達もそろそろ行こうか」



美佳ちゃんが言いました。


「うん(^_^;)」



夏海ちゃんもうなづきました。




「僕達も行こ~うね」



要君が拓也君と手をつなぎおどけて言いました。



「キモいんですけど~

( ̄ロ ̄;)」



拓也君は要君の手を振り払いました。





941


「だってあの2人だって、男同士みたいなもんでしょ」



面白がってふざける要君に恵さんが言いました。




「要君(-_-;)‼

桃花さんは思いやりがあって、とっても優しい人よ」



優しい恵さんが怒ったように言ったので、要君はふざけすぎたことを反省しましたm(._.)m。ゴメンナサイ




「この遊園地広すぎて、アトラクションもいっぱいあり過ぎて迷っちゃうね。

今日はどれで遊ぶ?」



だいちゃんが、ケインに尋ねました。






942


「昨日は皆バラバラに別れて遊んでいたけど、今日はそれぞれのお勧めのアトラクションに皆で行くって言うのはどうかな?」




「うん、それいいね。そうしよう」



だいちゃんが言うと、他の子供達も賛成したので決まりです。



椅子に座って、作戦会議です。自分達のお勧めのアトラクションを出し合いました。



943


再び遊園地で遊ぼう



944


皆はホテル前の駐車場に来ると、遊園地行きの汽車に乗り込みました。



最後にうさぎの車掌さんが乗り込み「発車オーライ」と言うと、汽車はゆっくりと舞い上がって行きました。



遊園地に着くと、子供達はぞろぞろと汽車から降りて行きました。



945


「まずは、『童話のこみち』へいくんだったよね」


拓哉君が興味無さそうに言いました。




「なんか嫌そうな顔してない? 多数決で決めたんだから、そんな顔しないでよ」



夏海ちゃんは口を尖らせて言いました。



「おあいにくさま。僕はこういう顔なの。


だいたい…悲しい話をハッピーエンドにする必要なんてあるの?」



あきらかに行きたくないと言った感じです。




946


「世の中、必ずしも楽しいことはかりじゃないし、人生不幸で終わる人もいるんだから、わざわざ物語を変える必要なんて無いと思うんだよね」




「酷いことを言うのね。それなら拓也君は見なくて良いから…フン ( ̄ロ ̄;)」



夏海ちゃんは怒って言いました。




「確かに拓也の言うように、生まれてからずっと苦労の連続という人もいると思うよ。


だからこそ、童話や絵本の中だけでも楽しい思いをしたいんだよね」





947


「お姉ちゃんって、そんなに苦労してないじゃん」



「私がって言うわけじゃなくて、本来子供の読む童話や絵本は、子供が読んでいてワクワクするような夢のある楽しいものであって欲しいんだよね。


最後はハッピーエンド…であって欲しいの」



美佳ちゃんが言いました。




「僕、美佳ちゃんの言いたいこと分かります。



マイケルが言いました。




例えば、僕の住むアフリカでは食べるものさえ十分に食べられなくて、飢え死にしていく子供がたくさんいます。



948


「病気になっても、医者にいくお金がないために死んでしまう子供もたくさんいます。




「そんな子供には、悲しく終わるお話よりも、楽しくて幸せになれるような話を聞かせたいよ。


たとえ短い時間でも笑ってもらいたいもの。


ひょっとしたら、いつかは幸せになれるかもしれないと希望を与えてあげたい」



マイケルがしんみりと言いました。




それを聞いて、拓也君は

「ごめん」

と言いました。




949


「頭の中では、世界中に餓死している子供がたくさんいるって分かっているんだけど…、僕達は平和な国に住んでいるから…、本当に辛い毎日を送っている人の気持ちが分からないんだね」



拓也君は反省しているようです。



「それじゃ行こう(*^_^*)」



だいちゃんが笑顔で言うと、拓也君は恥ずかしそうにうなづきました。




950


皆は遊園地に行くと、動く道路に乗りました。




「は~い、着きました~」



夏海ちゃんが言うと、皆は動く道路から降りて、『童話のこみち』と言う看板のあるアトラクションの前に来ました。



「ねえ、『ごんぎつね』を一緒に見ようよ」



萌ちゃんが、翔君と手をつなぐと揺すりながら誘いました。




「エエッ、だってもう遊んだんでしょ。他の話にしようよ」



要君は不満そうです。





951


「僕は見てみたいな。

だって、萌ちゃんもそのお話の中に登場しているんでしょ(^ー^)」



翔君は嬉しそうに言いました。




「僕はどんな話だか分からないけど、見てみたいなぁ」



マイケルも興味があるようなので、


「それじゃ」


と、皆で見ることになりました。




「一応定員は5名になっているんですけど…。


分かりました。イスを持って来ます」




受付の女性がイスを持ってきてくれたので、全員が座りました。





952


ごんぎつねが野山を楽しそうに走り回っているところから始まって、


……ゴンが兵十の家に栗や松茸をせっせと運んでいる場面になりました。




そこに兵十が帰って来ました。またイタズラをしに来たと勘違いした兵十は火縄銃に手をかけます。



すると、



「ダメだ‼ ゴン逃げろ‼」



拓也君が叫びました。



「拓也君、静かにして下さい」



マイケルが言いました。





953


「さっき言ったでしょ。私達がハッピーエンドにしたって…。今は私達が作り変えた話を見ているんだから大丈夫なのι(`ロ´)ノ」




「夏海ちゃん…、何も怒らなくたって(^_^;)。

僕だって…思わず声が出そうになったもの」




だいちゃんが言ったので、夏海ちゃんは


「ごめんなさい<(_ _*)>」


と謝りました。




ゴンが医者に治してもらい元気になると、皆万歳して大喜びです。





954


男の子達は、お祭りの盆踊りの中に入って行くと、


「ねえ一緒に踊ろうよ」


と手招きしました。




「だって~、すでに私達が映画の中で踊っているのよ。おかしくない?」




「気にしない気にしない」



だいちゃんが映画の中から出てきて、「おいで」と萌ちゃんと手をつなぎました。




「うん、もえ…踊りたい」



萌ちゃんは映画の中に入って行きました。





955


「どうする(^_^;)?」



夏海ちゃんが美佳ちゃんに語りかけました。



「行こうか(^o^;)」



美佳ちゃんと夏海ちゃんも映画の中に入って行きました。




映画の中に入って行くと、美佳ちゃんと夏海ちゃんと萌ちゃんが2人ずついます。何か変な感じがします。



萌ちゃんが、もう一人の萌ちゃんに


「こんにちは」


と言いました。




すると、もう一人の萌ちゃんがニッコリ笑って


「こんにちは、一緒に踊ろう」


と言いました。





956


《何か自分が2人いるなんて不思議だわ》




美佳ちゃんと夏海ちゃんは同じことを考えていました。すると、




「一緒に踊りましょ」



もう一人の美佳ちゃんと夏海ちゃんが恥ずかしそうに手を出しました。




「ええ」

「うん」



2人はそれぞれもう一人の自分と手をつなぐと、盆踊りの輪の中に走って行きました。




957


本当に本当に楽しい楽しいお祭りでした。こんな体験は魔法の国でしか体験出来ません。



女の子達が楽しそうにしている様子を、男の子達は少し羨ましいと思いました。

そう…自分達にも分身が欲しいと思ったのです。




058


映画の中の人達に別れを告げると、次は『フランダースの犬』や『幸福の王子』や『マッチ売りの少女』などを見て、全員で力を合わせてハッピーエンドにしていきました。




「やっぱり物語はハッピーエンドじゃないとね

(*^□^*)」



拓也君は当然と言うように言いました。



959


次は『お菓子の家』に行きました。




「僕ね。幼稚園の頃絵本を読んで、お菓子の家を食べたいなって思っていたんだ。まさか、その夢が叶うとは思わなかったよ」



要君は本当に嬉しそうに食べています。




「実は、私もなの」



夏海ちゃんもニッコリ笑いました。



皆幸せそうな顔をしています。



大空さんと恵さんもソフトクリームを食べながら、そんな子供達を笑顔で見ています。




960


それから皆で季節の丘にも行きました。かまくらに入ったり、スケートをしたり、スキー場で温かいかき氷も食べました。

女の子達も大喜びです。




「私ずっと気になっているんだけど、ツリーハウスに行かない?」



美佳ちゃんが言うと、


「行きたい、行きたい」

\(^_^ )( ^_^)/

夏海ちゃんと萌ちゃんもはしゃいでいるので行くことにしました。



961


「すご~い‼」

ヾ(=^▽^=)ノ (*^□^*)

(⌒‐⌒)



ツリーハウスの一番高い所から景色を眺めながら女の子3人は大興奮です。




テーブルに座ると、それぞれ食べたい物を注文して食べながらおしゃべりに花が咲きます。




「空を飛ぶ汽車も驚いたけど、熊やウサギがちゃんと仕事しているのには驚いたわ」



夏海ちゃんが言いました。




962


「人間も動物さんも、みんな仲良し(*^o^)/\(^-^*)なんだよね」



萌ちゃんが嬉しそうにチョコレートパフェのスプーンを振り回しながら言いました。



「怖い体験もしたけど、悪人だと思っていた人も、本当はそれほど悪い人じゃなかったしね」




だいちゃんが言うと、皆も「そうだね」とうなづきました。




「皆に面白い物を見せましょう」



そう言うと、大空さんはポケットから小さな小さなスケッチブックを出しました。





963


皆は今から何が始まるんだろうと、興味津々です。




「ここに誰か絵を描いて下さい。萌ちゃん描く?」



大空さんが笑顔で言いました。



「もえ、かきたい」



萌ちゃんはサインペンを受けとると、ニコニコしながら絵を描き始めました。




「ぷっ」



拓也君が吹き出したので、美佳ちゃんがひじでつついてたしなめました。





964


萌ちゃんは動物を描いているようですが、犬なのか猫なのか何の動物を描いたのか分かりません。




「上手ですね。これは猫ですね」



「うん」



萌ちゃんはごきけんです。



「出来ましたね。そしたらその絵に向かって(ふぅ)と息を吹きかけてごらん」



萌ちゃんは、言われた通り、(ふぅ)と息を吹きかけました。




すると…、





965


先ほどのスケッチブックから、萌ちゃんの描いた絵だけがポロリと落ちました。



子供達は目がテンになっています。しかも大空さんはその線の絵をそっとテーブルの中央に置くと、その上に手をかざしました。



966


子供達はこれから何が始まるんだろうと見つめます。


すると…、



大空さんが指を動かすと、それに合わせて萌ちゃんが描いた線の猫が動き出したのです。ヒモなどどこにも無いのにあやつり人形のように動くのです。



2本足で歩いたり、逆立ちしたり、くるくるまわったり…。まるで生きているように自由に動き回るのです。



967


子供達は夢中になって見ていましたが、そのうちに



「僕もやりたい」


「私も…」



と言い出しました。自分達もやりたくなったのです。




「皆もどうぞ」




大空さんはスケッチブックを切り離すと、全員の前に紙を置きました。




「ここにサインペンがありますから、好きな色で絵を描いて下さいね」



大空さんはテーブルの上にたくさんの色のサインペンの入ったケースを置きました。




968


「何色を使おうかな?」


「何を描こうかな?」




皆、楽しそうに絵を描いています。さすがに6年生の美佳ちゃんは、なかなか上手に描けています。




「何、描いてるの?」



萌ちゃんの絵を(^・ェ・)⤵チラッ とのぞきこんで拓也君が言いました。




「見れば分かるでしょ‼

(`Δ´)」



萌ちゃんはほっぺを膨らませて言いました。




「分からないから聞いてるんじゃん(・・?)」



首をかしげる拓也君の頭を、美佳ちゃんがサインペンでコンコンと叩きました。




969


「イテッ(>_<")」



拓也君が頭を押さえていると、




「ほんっとに無神経なんだから…(-_-;)」



夏海ちゃんがため息をつきました。




「ウヒヒヒヒ…」



それを見て要君は愉快そうにニヤニヤしています。




「チェッ、( -_-)つまんないの~。だいたい要君は笑い過ぎなんだよ( ̄ロ ̄;)」



拓也君は頬を膨らませてふてくされていましたが、すぐに機嫌を直して、真剣な表情で絵を描き始めました。



970


「おお~っ‼

( ; ゜Д゜)すご~い‼

マイケルは本当に上手だね~。まるで漫画家みたいじゃん」



だいちゃんが言うと、皆もマイケルの絵をのぞきこみました。


マイケルは照れ臭そうにはにかんでいましたが、手を休めることなく真剣な表情で描き続けました。。




皆が描き終わったところで、自分の絵に息を吹きかけて紙から絵を外してテーブルに置き、その上に手をかざしました。




971


「わっ、ヘ(゜ο°;)ノ う…動いた。すご~い‼」




「僕のも見て‼

ほら、躍りだってできちゃうよ」




皆、大興奮です。




マイケルはライオンとトラを描き、両手を使って闘かわせました。




「おぅ~迫力満点だ~‼」



男の子達は見いっていましたが、女の子達は恐がっていました。




972


「面白かった~\(^o^)/」



子供達が楽しんでいる姿を見て、大空さんや恵さんも嬉しそうです。





「いい眺めだね~」



後ろの方で聞き覚えのある声がしたので、そ~っと振り向いた拓也君は、焦ったように慌てて前に向き直りました。




それは最初にグループになったマリアと双子の妹達でした。




973


拓也君の様子を見て、優太君も何だろうと後ろを振り返ってみました。



『マズイ( ; ゜Д゜)』



優太君も慌てて前に顔を戻すと、隣にいる拓也君の方を見ました。

すると拓也君は、




「逃げようぜ」



小さな声で優太君に耳打ちしました。




「でも…。あやまった方が…」



優太君は困った顔をしています。





974


拓也君は手をつなぎ、

「行くよ」

と言うと、優太君も決心したようにうなづきました。




2人がぬき足さし足忍び足…何て囁きながら歩いていると、




「お兄ちゃん逹、どこいくの?」



翔君が大きな声で言いました。





《ガーン‼》


(|| ゜Д゜)( ̄□ ̄;)!!


《ビクッ‼》


(οдО;)( ; ゜Д゜)




拓也君と優太君は固まりました。背中を冷や汗が流れます。





975


「「翔く~ん」」



双子の姉妹のリンダとジェニーが笑顔で走って来ました。3人は手をつないで嬉しそうに飛びはねています。




「そこにいるのは、拓也と優太?」



マリアの声に《ビクッ》として、あきらめたように2人は振り返りました。



そして、どちらからともなく


「ごめんなさいm(__)m」


とあやまりました。





すると、マリアは怒るどころかにっこり笑顔になりました。





976


拓也君と優太君は(・・?)キョトンとしました。




「怒らないの?」



首をかしげる拓也君。




「どうして?

私ね。あやまりたくて君達を探していたのよ」




マリアはにっこり微笑むと、ペコリと頭を下げました。




拓也君と優太君は、お互いの顔を見ながら(・_・)首をかしげました。




977


「2人が逃げた後、最初はひどいと思ったのよ。でもよく考えたら、誰だって自由に好きな所で遊びたいわよね。


それなのに…、私は無理に妹達が喜ぶからって、君達が興味が湧かない遊具で遊ばせようとしたわ。


ごめんなさい。2人にあやまりたくて探していたのよ」



マリアはそう言って右手を出したので、拓也君と優太君もおずおずと手を出し握手をしました。



すると、マリアは安心したような笑顔になりました。

笑ったマリアは案外可愛いじゃんと2人は思いました。




978


「この子たちが新しい仲間なの」



マリアが紹介したのは、マリアと同い年位の女の子と8才位の女の子でした。



マリア達は隣のテーブルに行きイスに座ると、さっそくケーキなどを注文し、ワイワイガヤガヤと楽しそうにおしゃべりをしています。





そんな様子を見て、これで一件落着とばかりに安心してると……、






長さが10m以上もある巨大な龍が、子供達のいる展望台に向かってまっすぐに近づいて来ていました。





(@ ̄□ ̄@;)!! 


((((;゜Д゜))) 


(οдО;) (@_@;)





979


龍は体をクネクネとくねらせながら、近づいて来ました。




近づくにつれ、龍の恐い顔が迫って来ます。




女の子逹は( ̄□ ̄;)キャーキャーと、まるで絶叫マシーンにでも乗っているような騒ぎ方です。




一方男の子逹は、ちょっと恐いけど「カッコイイ‼」と思いました。




龍はいったん展望台の横を通り過ぎて行き、女の子達はホッとした表情を見せています。






しかし、龍はしばらくすると、またぐるりと廻って戻って来ました。




980


そして、ツリーハウスの柵の横に止まりました。




再び女の子達は騒ぎ出しました。




でも良く見ると、龍の背中には10人位の黒人の子供が乗っているようでした。




そして、その内の1人の子供がストンとツリーハウスの方に飛び移りました。




「マイケル、今度は僕達と遊ぼうよ」




少年はマイケルの友達でした。マイケルが龍を見上げると、アフリカから一緒に来た友達が乗っていました。



いつも一緒に遊んでいる仲間たちが、にこにこしながら手を振っています。




マイケルは迷っているようです。





981


「友達の所に行ってあげたら? まだ遊ぶ時間はたっぷりあるから、まだ会えるんだしさ」



だいちゃんが言いました。



「そうだよ。

友達だって、いつも一緒に遊んでいるマイケルがいないと寂しいはずだから…」



ケインが笑顔で言ったので、マイケルはうなづきました。




「うん。これからは友達と遊ぶよ。それじゃ、また会おうね」



そう言うと、マイケルは元気に龍の背中に乗りました。そのマイケルの背中を友達が嬉しそうにポンと叩きました。




龍がゆっくりと動き出すと、マイケルやマイケルの友達は「またね~」と、手をふりました。




子供達も手を振ってマイケルを見送りました。




982


マイケルが乗った龍を見送っていたら、今度は空飛ぶスポーツカーがゆっくりと走って来ました。



運転しているのはウルフドルで、隣にデージーが座り後ろの座席には子供たちが乗っていました。

皆、本当に楽しそうです。




「楽しそうな人達を見ていると、こっちまで嬉しくなっちゃうね」



だいちゃんが言いました。




「そうだね、だいちゃん」



要君が、だいちゃんの肩に自分の腕を乗せながらうなづきました。




983


「さあさあ、楽しいアトラクションはまだ一杯あるから遊ぼう‼」



ケインがウインクしながら言いました。




「私…ほうきに乗って、お空を飛びたいな」



萌ちゃんが言いました。




「あ~、私も乗りた~い♪ねえケイン。そんなのあるの?」



夏海ちゃんも瞳を輝かせて言いました。




「うん、あるよ。

ひょっとして、魔女の衣装なんかもいるかな?」



ケインはにっこり笑いました。





984


「「いる~‼(o^-^o)」」



夏海ちゃんと萌ちゃんは声をそろえて言いました。




「ケイン、どうして私達の考えてること分かったの?」



夏海ちゃんが不思議そうに尋ねました。




「大空さんに地球にある童話やアニメなんかを教えてもらっているからだよ。


魔法使いが黒い衣装を来てほうきに乗って空を飛んだりする童話、僕も好きだったから…」




大空さんと恵さんが、黒い衣装とほうきを持って来ました。





985


女の子達と翔君は、さっそく着替えてほうきを受け取りました。




男の子達は、そんな女の子達に背中を向けています。




「ねえ、君達は着替えないの?」




美佳ちゃんが首を傾げながら言いました。





「う…ん」



男の子達は生返事をしています。




美佳ちゃんは、男の子達が何を見ているんだろうと、視線の先を目で追ってみると…。



その視線の先にあったのは何と『幽霊船』でした。

よくアニメなどで見る壊れかけた帆船です。





986


「幽霊船…乗ってみたいよね」



優太君が言いました。




「ちょっと((((;゜Д゜)))恐いけど、僕も乗ってみたい」



だいちゃんも興味津々です。




「カッコいい~‼

迫力満点じゃん。僕も乗りたい♪」



要君も嬉しそうです。




「僕も…(^_^;)、少し興味ある…って言うか。

魔法のほうきも楽しそうだし…、どっちに…しようかな?」



拓也君は、正直いうとあんまり恐いのは苦手です。




「まさか、怖いんじゃないよね?」



すかさず要君が言います。




987


「まっ…まさか~(^o^;)。そっ…そんな訳ないでしょうが~( ̄ロ ̄;)。


魔法のほうきも楽しそうだったから、どっちがいいかちょっと迷っただけだよ」


迷ったあげく、幽霊船に決めました、はい(^o^;)」




「そうか、それじゃ僕も幽霊船に一緒に乗るから…」


大空さんが言うと、




「私は魔法のほうきに乗ります」



恵さんはニッコリ笑って言いました。




988


女の子達+翔君は魔法使いの黒い衣装を着て、興奮気味にほうきにまたがると、飛び立って行きました。






「さあ、僕達も行きましょう」



大空さんが手をあげると、幽霊船がだいちゃんたちのいるツリーハウスの展望台の横に停まりました。




幽霊船は近くで見ると、さらに薄気味悪く、誰もがゴクンと生唾を飲み込みました。





989


船の先頭の所には、薄汚れてボロボロに破れた大きな旗があり、風もないのに大きな音をたてて揺れていました。その旗にはドクロが描かれています。




船には小さな窓が見えますが、ギシッギシッと音をたてて、勝手に開いたり閉まったりしています。




「いや~、間近で見ると、迫力あるねぇ(^o^;)」



要君が言いました。




「う…うん(~_~;)」



だいちゃんはうなづいたものの、やっぱり乗るのを止めようかなと思ってしまいました。




990


「うわ~っ(@゜▽゜@)‼

凄い迫力だ~。カッコいい‼」



優太君1人が感動している以外は、皆、乗ると言ったことを後悔していました。



特に拓也君に関しては、青ざめた顔(;-_-+をしていて、ブルブル震えており、唇をギュッとかみしめています(>_<)。




「早く行こうよ‼」



優太君が元気に声をかけます。





「う…うん(;^_^A。


あ…あ…あのさ~(^o^;)、あのさ。…と…、そうそうトイレに行きたくなっちゃったんだ(οдО;)ウッ。


い…行って良いかな

( ̄~ ̄;)」



拓也君は我ながら名案だと思いました。



すると、



991


「あれっ、さっき行ったばかりなんじゃないの?。


うん、でも行って来ていいよ。待ってるから」




優太君がにっこり(o^-^o)笑いました。




「いや…別に(^o^;)

ま…待ってないで、先に行っていいよ。

皆に迷惑かけちゃ悪いから…さ」



拓也君は、右手を激しく左右に振りながら言いました。




「遠慮しなくて良いよ。戻って来るまで待っててあげるから…。ねっ」

(・д・ = ・д・)



優太君はだいちゃんと要君に同意を求めるように言いました。




992


「「うん、待ってるよ」」




だいちゃんと要君は笑顔で言いました。2人は今から怖い幽霊船に入って行くので、仲間は1人でも多い方が良いと思ったからです。



「そ…そうなの?

別に待ってなくても、良いんだけど…」




拓也君はあきらめて、皆と一緒に幽霊船に乗ることにしました。




「あれっ、トイレ行かなくて良いの?」



要君が言いました。




「大丈夫…みたい(~_~;)」




993


「それじゃ、準備は良いですか?」




「「はーい」」



大空さんが言うと、子供達は返事をしましたが、優太君以外はいつも程の元気がありません。




幽霊船からツリーハウスの展望台に、木で出来たはしごがスッと伸びてきました。



( ; ゜Д゜)(@ ̄□ ̄@;)



朽ちかけた板を打ち付けている釘も錆びていて、折れ曲がっていたり、抜け落ちて無い所もあります。





994


順番は先頭が優太君、次はケイン、要君、だいちゃん、拓也君と続き最後が大空さんに決まりました。



拓也君がホッとして胸をなでおろしたのは言うまでもありません。




《ギシッ、ギシッ…‼》



はしごは歩くたびに、不気味な音をたてます。時々腐った木の粉が下に落ちました。



子供達は慎重に一歩一歩、用心して歩いて行きます。




《ギギィ~》




幽霊船の入口まで来ると、勝手にドアがこちら側に開きました。子供達はキョロキョロ(゜゜;)(。。;)見渡しましたが、もちろん誰もいません。




995


「うわっ、よく出来てるね。まるで本物の幽霊船みたいだ」



だいちゃんが振り返って、後ろにいる拓也君に言いました。




「まあね( ̄~ ̄;)

良くは出来てるけど、単なる自動ドアでしょ」



拓也君は、余裕余裕と言うように平気そうに言いました。




996


「いらっしゃ~い。よ~うこそ、幽霊船にお越し下さいました~。フフフ……」




何処からともなく、不気味な声が聞こえてきました。

声は前からも、上からも、そして横からも聞こえますが、姿は見えません。





《ギャ~‼》 \(>_<)/



突然要君が叫び声をあげました。




「どうしたの?」(・_・)



だいちゃんがビックリして言いました。





997


「誰かが、僕のここんところに…ふ~って息を吹きかけたんだ」



要君はそう言いながら、自分の首の所を指さしました。


だいちゃんは、誰かがいるのかと(゜゜;)(。。;)探しましたが誰もいないようでした。




「気のせいだよ。だって誰もいないよ。怖い怖いと思っていると、いないものがいるように感じるんだよ」



「そんなぁ、僕がウソを言ってると思ってるの?」



「だって…しょうがないじゃん。ホントに誰もいないんだから」




2人の話を聞きながら、拓也君はビビって(οдО;)いました。





998


「拓也君、大丈夫?」



大空さんが、拓也君の肩をポンと叩きました。




「ぜ~んぜん平気(^o^;)ですよ」




「そう。…ならいいけど」



大空さんは安心したように言いました。



ここは普通のお化け屋敷のように真っ暗ではないので、近くにいる人の顔は見えます。




優太君とケインが先の方に行ってしまい姿が見えなくなったので、要君とだいちゃんが走って行きました。




999


ちょっと心細く思いながら歩いていた拓也君の首筋に誰かが息を吹きかけました。



《ギクッ》(;゜゜)



反射的に顔を向けましたが誰もいません。きっと気のせいだ。拓也君は無理にそう思うことにしました。



でも、さっき要君も同じことを言ってたな。やっぱり、誰かいるのかな?



拓也君はブルブルと頭を振り、心の中で『気合いだ~‼』の10連発をしました。




1000


怖い怖いと思っているから怖いんだ。幽霊なんかいないんだから、僕は怖くなんかないぞ。




気合いを入れた拓也君は、胸をはって歩きました。

しばらく歩いて行くと、



「た~くやく~ん。あ~そび~ましょ~~」



耳元で声がしました。


(゜゜;)→(οдО;)→(+_+)→( ̄□ ̄;)!!




今のは空耳じゃない。確かに聞こえたぞ。




「大空さん、今誰かが僕に遊びましょう~って言ったんだ」




「そうですか~」




「ホントに言ったんだよ。ウソじゃないんだ」





1001


「そうですか?

まっ、気にしない気にしない」




まあ、大空さんもいることだし、気にしないことにしよう。拓也君はまた歩き出しました。



すると、ピタッと冷たいものが拓也君の足にはりつきました。恐る恐る下を覗くと、



《ギャ~‼》( ̄□ ̄;)!!



と大声を出しました。何と拓也君の足にはりついていたのはヘビだったのです。




1002


「へ…ヘビが~‼

  ((((;゜Д゜)))」




「ハハハ…。青大将は人には危害を加えないから怖くありませんよ」



大空さんが笑いながら言いました。




この青大将はこの幽霊船をねぐらにしていて、昼寝の最中でしたが、突然拓也君に踏んづけられたのでビックリして反射的に、足にぶつかったのでした。




1003


しかも大声を出されさらにビックリして、拓也君の首に巻き付きました。




《ギャ~‼》\(>_<)/




拓也君は思わず大空さんにしがみつきました。




「大丈夫ですか、拓也君‼」



その声に大空さんの顔を見上げると、




《ギャ~‼》(οдО;)



またまた拓也君は悲鳴をあげました。何と大空さんだと思ってしがみついていたのは、一つ目のお化けだったのです。




拓也君は恐怖でヘナヘナと座り込んでしまいました。





1004


「拓也君、驚かせてごめんなさい」




そう言って、大空さんが顔のお面を取りました。




「あれっ?(;゜∀゜)

大空さんだったの? 驚かさないでよ。心臓が止まりそうな位ビックリしちゃったよ(´Д`)」






「ホントごめん。

調子に乗ったお詫びに拓也君に良いことを教えてあげましょうか」




「良いことって?」





1005


「実はこの幽霊船にいる幽霊は本物の幽霊なんです」




「エエッ、(;゜∀゜)

言ってる意味が分かんないんですけど…」



拓也君は首をかしげました。




「普通の遊園地のアトラクションにいる幽霊は作り物ですが、この幽霊船にいる幽霊はすべて本物の幽霊なんです」




《ギョエ~‼》

((((;゜Д゜)))



「ほ…本物?

ホントに…ホント?」





1006


「はい。呼びましょうか?」




「け…結構です

  ( ̄ロ ̄;)」




拓也君は驚き過ぎて、それだけを言うのが精一杯です。




「まあ、そう言わずに…

(^ー^)。歌にもあるじゃないですか(^.^)



「オバケノトモダチ ツレテアルイタラ ソコラジュウノ ヒトガ ビックリスルダロ 」



大空さんが体を揺らしながら楽しそうに歌い出しました。(o^o^o)




1007


「大空さんは楽しそうに歌ってますけど…、その歌に出てくる子供はお化けを怖がっていると(・_・| 思いますけど…( -_-)」




「そうですか?(^.^)

僕はお化けを友達に自慢する歌だと思ってましたけど…?」



大空さんはキョトンとして言いました。




「ダケドチョット ダケドチョット ボクダッテ コワイナ…」




拓也君が歌います。





1008


「な~るほど…。確かに…そうも取れますね。


でも、ここに住んでいるお化けさん達は、皆さんいい人ばかりですよ」




大空さんはニッコリ笑いました。





「僕から言わせれば、いいおばけとか悪いおばけとか関係無いんだよね。皆まとめて怖いんだよ~。


((((;゜Д゜)))


さっきは皆の出前、見栄を張って怖くないそぶりをしたけどね」

(-_-;)




拓也君が話し終わると同時に、しくしくと泣く声が聞こえてきました。




1009


「誰か…いる…の?」

(゜゜;)(。。;)



拓也君が言いました。




「はい」




そう言って、ふわりふわりと拓也君の前に現れたのは……何と幽霊でした。




拓也君は気絶しそうになりましたが、かろうじて耐えていました。





「僕たちは友達が欲しいんです。シクシク(;´∩`)」



幽霊は泣いています。



1010


「そんなことを言われたって…こ…困るよ」

((((;゜Д゜)))



拓也君は頭を激しく左右に振りました。足はブルブル震え、声は恐怖のあまり裏返っていました。





「まあ、そう言わずに友達になってあげて下さいね」



大空さんが肩に手をかけながら笑顔で言いました。




「大空さんは怖くないんですか?」




「怖いも怖くないも、この幽霊船のスタッフとして採用したのは僕だから…」




「採用したって…?」




1011



「このアトラクションを始めるにあたり募集をしたんです。そしたら彼らが面接に来たんです。


もちろん即採用しましたよ。だって彼らにとっても天職ですし、僕達にとっても最高の人材ですからね」




「はあ~?」



拓也君は言葉がありません。



1012


「そうなんです(*''*)」




どこからともなく、もう一人の幽霊がふわりふわりと現れました。




一人だけでも十分に怖いのに、2人目が現れて拓也君は、『もうだめ~』と倒れかかりましたが、誰かが頭と背中を支えてくれて、気絶して床に倒れずにすみました。



…が、



その支えてくれたのが3人目の幽霊と4人目の幽霊でした。




1013


もう拓也君の頭の中は大混乱‼


何が何だか分からなくなってしまいました。



その後も5人目、6人目、7人目……。



「幽霊さんいらっしゃ~い」何て誰も言ってないのに、幽霊達はドンドン集まって来ました。合計で12名の幽霊が集まってきました。





1014


***



その頃優太君達は…



「ねえケイン。ここは幽霊船なのに、幽霊が全くいないね」



優太君が不満気に言いました。




「おかしいな。皆何処に行っちゃったんだろう?」



ケインは首をかしげました。




「まあ、いないなら…それにこしたことはないけどね(^o^)」



と、要君。



「でも、やっぱり幽霊船なんだから、1人位はいないとおかしくない?」



だいちゃんが言うと、




「お呼びになりました?」



ふわりふわりと幽霊が現れました。




1015


要君は一瞬ギクリとしましたが、引きつった笑いをしながら言いました。




「良く出来てるね。まるで本物の幽霊みたいだね。

でも、この白い服の下には足があるんだよね」




要君は、白い布の足元をめくりました。




「ホラね( -_・)?


足が……。あれっ?

(・_・)→(;>_<;)


足が無い‼

((((;゜Д゜)))



……と言うことは(;^_^A)

ほ…本物のゆうれい?」


((((;゜Д゜)))



要君は固まってしまいました。





1016


「エエッ! 本物の幽霊さん? 凄い⤴⤴。僕、初めて見たよ。感激だな~」




優太君は、怖がるどころか幽霊との出会いを心から喜んでいるようで、グルリと回って見ています。




「そんなに見られるとちょっと照れるな~( 〃▽〃)」



幽霊も喜んでいます。




「こ…怖くないの?」




だいちゃんが聞くと、




「何で? 彼らは何も悪いことしていないのに、怪談とかで悪者にされて、いつも可哀想だなって思っていたんだ。


ねえ、ここにいる間だけでも仲良くしようね」




優太君は幽霊と固い握手をしました。





1017


その姿を見て、だいちゃんと要君はブルブル首を左右に振って「あり得ない」を連発しました。





「ねえ、他の幽霊さん達はどうしたの?」



ケインが幽霊に尋ねました。




「先ほど連絡が入りまして、大空さんと拓也君の所に皆行ってるそうです」





それを聞いてだいちゃんは思いました。たった1人の幽霊でも怖いのに大勢の幽霊達といても平気なんて、拓也君って凄いと。




1018


***


その頃、拓也君は…



(+_+)気絶していました。



幽霊達はどうして良いか分からずウチワであおいだり、体を揺すったりしていました。




「う…ん」

(-.-)→(Тωヽ)



拓也君が目をさましたようです。幽霊達は心配で拓也君の顔を覗きこんでいました。



「うわ~」

(@_@)→((((;゜Д゜)))


ゆ…ゆ…ゆうれい~

ギャー ( ̄□ ̄;)!!



幽霊たちを見て、拓也君はまた気を失ってしまいました。(☆。☆)→(+.+)



無理もありません。

目を開けた瞬間に幽霊達の24の瞳が自分をじっと覗きこんでいたのですから…。





1019


「ごめんなさい。驚かせてしまって…」



幽霊たちは謝りました。




「いいよ(^_^;)。

幽霊さんたちは、人を驚かせるのが仕事なんだから…

( ̄ロ ̄;)」



そう言いながら拓也君は立ち上がりました。




「許してくれて有難うございます。僕たちの友達になってくれませんか?」





1020


「そ…それは…(^_^;)

ええと…、うんと…ふぅ」



拓也君は大きなため息をつくと、困ったな~(-_-;)と思いました。




すると、シクシク シクシク 幽霊たちが泣き出しました。1人、2人…そして全員で泣き出しました。もう、うるさくてたまりません。




「分かったよ。友達になってあげるよ」

(チョット コワイケド…)




1021


「エエッ、本当ですか?

とっても嬉しいです」

(^ー^)(*^□^*)(^∇^)(^.^)



幽霊たちは大喜びで、拓也君に近づいて来ました。



「ちょっと…待って‼

(^_^;) 悪いけど、それ以上は近づかないでね。

…(コワイカラ)親しき仲にも礼儀ありって言う言葉があるからね」




「はい、分かりました」



幽霊たちは素直に謝り、少し離れました。





1022


「幽霊さんたち、良かったですね(*^_^*)」



大空さんが嬉しそうに幽霊たちに笑顔を向けました。




「「はい、嬉しいです」」




幽霊たちは本当に嬉しそうです。




その時、「拓也く~ん」と言う声がしました。



声のする方を見ると、優太君とケインでした。




「うわっ、幽霊さんがたくさんいるね」



優太君がニコニコしながら言いました。





1023


「僕たちが怖くないんですか?」




「ぜ~んぜん。こんなに大勢の幽霊さんたちと会えて嬉しいな(^ー^)」




優太君は笑顔で言いました。




「それじゃ、僕達と友達になってもらえますか?」




「うん、いいよ」



優太君が言うと、幽霊たちは優太君の回りに集まって来ました。そして握手をしました。ケインは嬉しそうにそんな様子を見ていました。





1024


だいぶ遅れて要君とだいちゃんが来ましたが、幽霊と楽しそうに話をしている優太君を怪訝な表情でみています。




「どうする?」



要君がだいちゃんに話しかけます




「行こうよ。

じゃないと、僕たちが怖がってるって思われちゃうもん」




「((((;゜Д゜)))…そうだよね」



要君はそう言うと、ブルブルッと身震いして、更に大きく深呼吸しました。



それから、ひきつった笑いを浮かべながら、幽霊たちの方に歩いて行きました。




1025


「や…やあ(^o^;)、

た…たの…楽しそうだねぇ。ぼ…ぼ…僕も仲間に入れて…ほ、欲しいな~」



親しげな言葉とは裏腹に足はブルプルと震えています。




「あ、要君も幽霊さんたちと友達になってくれるよね」



ケインがにっこり笑って話しかけます。




「も…もちろん…だよ。ねっ、だいちゃん」




「うん、いいよ(^_^;)」



だいちゃんも、そうは言ったもののちょっと怖いなと思いました。



1026


「嬉しいです~(⌒‐⌒)

ちなみに僕達、足はあるんですよ。移動する時に足が無い方が早いので、しまってますけど…」




「「しまって…って…?」」




子供たちがキョトン(・_・)としていると、




「はい、使わない時は…こうして背中にしょってます」



そう言うと、1人の幽霊が背中から何かを出しました。



その出したものとは、太股から下の《足》でした。




1027


子供たちはあまりにもビックリして、固まってしまいました。

((((;゜Д゜)))




「必要な時だけ使いますけど、大抵はこうして背中にペタンと貼りつけて…


あれっ、皆どうしたんですか

( ; ゜Д゜)?」




優太君は目がテン(・_・)になっています。拓也君とだいちゃん、要君はヘナヘナ座り込んでしまいました。

(☆。☆) (>_<) (οдО;)




1028


「幽霊さん、子供たちにはちょっと刺激が強すぎたみたいですね(^_^;)」



大空さんが言うと、幽霊たちは首をすくめました。




「へえ、便利だね」



ただ1人優太君だけは平気みたいで感心しているようです。




=普段は大人しいのに、凄いな~=



皆は驚きと尊敬の目で、優太君を見るのでした。





皆の気持ちが落ち着いたところで、幽霊たちの話を聞くことになりました。




1029


「ここは狭いので、向こうに行きましょう。ダンスホールがあるんです」



幽霊のリーダー格の人が言いました。





床張りのダンスホールに案内されて足を踏み入れると、ギジッと床が音をたてました。



端の方に丸いテーブルが数個あり、その回りに木のイスが置いてありました。



子供たちは椅子に座りました。




幽霊たちは背中から足を取り出して、体につけてから座っていました。何とも異様な光景です。




1030


「僕達、一日の仕事が終わると、ここでダンスパーティーをするんです。お酒を飲みながらおしゃべりしたり歌ったり…楽しいですよ」


(*^□^*) (o^-^o)




「幽霊さんたちは、どうしてここで働こうと思ったの?」



だいちゃんが尋ねました。



「そうだよね。べつに働かなくたって、 天国は楽しい所だと思うけど…。まあ想像だけど」



要君が首をかしげました。



1031


「まあ、確かに天国は楽園でした。花も一年中咲き乱れていましたし、ご馳走もたくさんあります。皆さんいい人ばかりで…なに不自由の無い生活ではありました」




「それなのに、どうしてここの募集を見て働こうと思ったの?」



拓也君が尋ねました。




「あまり平和すぎると、刺激がほしくなるものなんですよ。それで神様にその話をすると、君達がやってみたいなら行きなさい。


神様はそう優しく、言ってくださったんです」





1032


「なるほどね。僕だったら遊んで暮らす方が良いけどね」




「「僕も…」」



要君の言葉に、だいちゃんと拓也君が頷きました。




しばらく話をしているうちに、幽霊たちへの恐怖心も無くなり、皆で歌ったり踊ったりと楽しいひとときを過ごしました。





「皆さん、楽しいひとときを有難う。次の客が来たようなので、この辺で失礼します」



リーダー格の幽霊が言いました。すると、他の幽霊たちもお礼を言いながら、足を外し背中に貼りつけて、自分の所定の場所に移動して行きました。




1033


幽霊船を出ると、美佳ちゃん達はまだ魔法のホウキに乗って遊んでいましたが、だいちゃん達を見ると、降りて来ました。




「幽霊船は面白かった?」



夏海ちゃんが聞きます。




「もう~最高に面白かったよ」




要君がニコニコして話すので、萌ちゃんは乗り気になっています。


美佳ちゃんは萌ちゃんがまだ小さいので心配しましたが、恵さんに相談したら



「私も行くので大丈夫でしょう」



と言い、幽霊船に行くことになりました。



1034


「ウキキキ…」



要君は、皆が怯えながら幽霊船から出てくることを想像して、ニタニタしています。



「僕達も魔法のホウキで遊ばない?」



だいちゃんが言うと、皆も賛成して、魔法のホウキで遊びました。



長く乗っていても、お尻が痛くならないようになっています。皆は魔法使いになった気分で楽しく遊びました。



1035


しばらく遊んでいると、美佳ちゃん達が幽霊船から帰って来ました。皆ニコニコしています。




「怖くなかった?」



だいちゃんが尋ねました。



「ぜーんぜん」



萌ちゃんははしゃいでいます。




「ホントにほんっとに、怖くなかったの?」



拓也君が聞きました。




「面白かったよね~」



夏海ちゃんと萌ちゃんは顔を見合わせて、楽しそうに笑っています。




「まさか、拓也君は怖かったの?」




夏海ちゃんは意地悪っぽく、顔を覗き込むようにして言いました。




「ま…まさか~(^_^;)」



拓也君は首を左右にブンブン振りました。そして、女子チームは驚異の心臓だと思いました。



1036


《小さい子がいるから、足を見せたりしないように》


と、恵さんが幽霊のリーダー格の人にこっそり頼んでいたんですけどね。





*****



幽霊船のハシゴを上り、入口のドアの前まで来ると恵さんは、



「少し待っててくれる?」



とだけ言い、ドアを開け1人だけ中に入って行きました。10m程歩いて行った所で、



「隊長~いる?」



と言いました。すると…、




「何かご用でしょうか?」



リーダー格の幽霊が、フワリフワリとやって来ました。




1037


「隊長実はね…。

小さい子がいるから、子供たちの前で足を出したり閉まったりしないで欲しいのよ。


それから、あまり怖がらせないでね」




恵さんはお願いしました。



すると…。

いつの間にか、あちらこちらにいた幽霊達が集まって来ました。



幽霊の隊長は、皆に恵さんから頼まれたことを伝えました。



すると、幽霊達は「了解しました」と言って、背中に張り付けていた足を外し、白い衣の中に隠しました。



そして、それぞれの場所に戻って行きました。その後ろ姿は少し寂しげでした。




そんな訳なので、女の子達はそれほど怖い思いはしていなかったのです。




1038


さよなら…幸せになってね



1039


その時、



「ウルフドル様ご家族と大王様ご家族が帰られます。皆でお見送りしましょう。広場にお集まりください」



というアナウンスが流れました。皆はお城前の広場に集まりました。




1040


お城の前の広場にはたくさんの人が集まっていました。


地球から来た子供達の他にも、この星の国民が大勢集まっていて、広い広い広場は黒山の人だかりです。





ステージの上には大王夫婦と犬になったサタンリーフ、それからウルフドルの家族が立っていました。





1041


「皆さん、お集まり頂き有難うございます。大王のご家族とウルフドル様のご家族が帰られると言うことで集まって頂きました。


ひと言ご挨拶したいそうですので、お聞き頂きたいと存じます。


まずは大王様…どうぞ」




司会のクローバーさんが、言いました。




「地球から来た皆さん。魔法の遊園地『雲の王国』を楽しんで頂けていますか?」




「「はーい」」



子供達は笑顔で元気一杯にこたえます。





1042


「それは良かった」



大王はニッコリ笑いました。



「途中で怖い思いをさせてしまい、申し訳なかったとお詫び致します。


あのトラブルを起こした張本人は、深く反省して《犬》になり生きる決意をしました」



大王はそう言うと、隣に立っている妻の腕に抱かれているサタンリーフを見つめました。





1043


「サタンリーフは私の弟です。亡くなった父をとても慕っていて、父をあまりにも愛するあまりに、このような事件を起こしてしまいました。



サタンリーフのしたことは許されることではありません。


それでも、敢えて言わせて頂きます。どうか許してあげて頂きたいと…」


体を犬に変えても、魔法の力で、言葉を話すことは出来るのですが、それすらも拒み、ただペットとしてのみ生きる決意をしました。


自分の過ちに気づいた彼の懺悔の気持ちだと思います」




1044


大王は深く深く頭を下げ続けました。もちろん妻も頭を深く下げました。




「いいよ~。許してあげるよ~」



一人の子供が言いました。すると、あちらからもこちらからも、




「許してあげるよ~」


「ワンちゃん、頑張ってね~」


「幸せになるんだよ~」


「大王様の言うことを聞いて、いい子にしてね~」




そんな声が聞こえてきました。





1045


サタンリーフは妻の腕から飛び降りると、客席に向かって嬉しそうにしっぽを振りました。




国民や地球から来た子供達、大勢の人の暖かい声援を受けて、大王夫婦もウルフドル夫婦も涙ぐんでいました。





「さて次は…ウルフドル様の挨拶…です」



クローバーさんも泣いていたようで、指先で涙をぬぐっていました。




1046


「皆さん、このたびは大変ご迷惑をおかけしました。本当に…本当に…深く反省しています。


私達はこれから他の星に帰ります。夫婦仲良く、家族仲良く幸せに暮らしていきます。


皆さんは、まだ時間がたっぷりあるので、楽しんで下さいね」




ウルフドルは話しながらも、子供の頭を撫でたり、妻のデージーを優しく見つめたり、本当に幸せをかみしめているようでした。




ウルフドルが挨拶を終えてお辞儀をすると、サタンリーフが来て、しっぽを振りながらウルフドルの足にすりよってきました。





1047


ペットの犬として生きる道を選び、言葉を話すことは出来ないサタンリーフでしたが、甥に当たるウルフドルとの懐かしい思い出が、心の何処かに残っているのでしょうか。


嬉しそうにしっぽを振り続けています。



ウルフドルは、そんなサタンリーフを抱き上げ頬ずりしました。会場から拍手がおこりました。サタンリーフは嬉しそうにウルフドルの頬をなめています。



1048


大王とウルフドルの家族は、ステージの中央にある階段を降りていきました。


そして、最初に大王夫妻と犬になったサタンリーフが先に円盤に乗りました。



サタンリーフは大王夫妻の真ん中に座り、2人を交互に見ながら嬉しそうにしています。




大王夫妻が旅立つのを見送ると、次にウルフドル一家が、虹色のじゅうたんに乗りました。


そして、深くお辞儀をすると、家族全員で手を振りました。




「またね~」



ウルフドルの子供達が言いました。





1049


そして、虹色のじゅうたんが動きだし、皆の姿が小さく小さくなっていきましたが、いつまでもいつまでもウルフドルの子供達は手を振り続けました。




このドリームスターの国中の人達も、また地球から来た子供たちも視界から見えなくなるまで、いつまでも見ていました。




大王達の乗った円盤とウルフドルの家族が乗った虹色のじゅうたんが見えなくなった時、見送っている人たちの心に様々な思いが残りました。





1050


「短い間に色々な事があったな~」



だいちゃんがつぶやきました。




「ホントに色々な事があったね」




美佳ちゃんがしみじみと言いました。




「さあ、まだまだ時間はありますよ。次は何して遊びましょうか‼」



大空さんがにっこり笑って言いました。




「そうですよ。まだ半分しか遊んでいませんからね。今度はどのアトラクションで遊びますか?」



恵さんが笑顔で言いました。




「ようし、遊びまくるぞ~」



だいちゃんが右手をあげて元気に言いました。




「「僕も…」」


「「私も…」」




子供達は、笑顔で言いました。





おわり




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