第九百五十話 ジャンボ
神の戦士
前回からの続き
山火事で燃えた教会の復興費の為、いきなりのデビューがバトルロワイヤルの林田 蒼楽は控え室にいた。
覆面の下でフーッと闘気を高める。
蒼楽が使えるレジェンダーとしての能力は絶対予測と半径50km未満の制限付きのテレポートである。
今迄もそうだったが直前とは言え動きが分かっているのである。
レジェンダーである蒼楽にとって、はっきり言って楽勝である。
だが問題はそこでは無かった。
蒼楽が呟く
「どうやって勝つか、いや見せるかだ・・」
プロレスとは格闘技であるがエンターテイメントでもある。
彼女の崇拝するプロレスラーに日本プロレス史上最強と言われた男だった。
生まれた時に故人であったが動画を飽きるほど見た。
彼のプロレスの見せ方は少し難があり、強過ぎるがゆえに手を抜いてる感が強く、見せ場は片手を高く上げて「おー」と言うのが定番であった。
試合後も相手がゼイゼイと言ってるのに飄々と「おー」を連発していた。
尊敬はするがアレは彼だから許される事、私の場合はデビュー戦でしかもアウェー
序盤にいかに魅せ、魅了するかに掛かってる。
控え室内で女性レスラーがスペイン語で喋りかけてくるが言葉が分からないのもあり無視を決め込む。
周りは「デビュー戦だと思って気を使ってやってんのに何だ!あのアマ」・「新人の癖に態度がジャンボだな!」・「洗礼してやるか!」等で敵だらけになっていた。
そして、控え室の扉が大きく開かれるとマイクで何かを言ってるのが聞こえると覆面レスラー達がリングへ向かい出す。
その先頭に蒼楽が居た。
異世界ではメインイベンターだったので見せ方は分かっているつもりだった。
素早く走り出すとリングポストのてっぺんに仁王立ちになると胸を張り、額に人差し指当てるとそのまま天を指す。振り返り観客にウインクし投げキッスしたあと、バク宙でリングに降り立つと「うおー」と会場が沸き立った。
「よし、掴みはおっけい!」
しかし、周りのレスラー達は「何だこいつ」状態である。
リングネームが呼ばれ出すと真っ先に「dios guerrero」とコールされる。
思わず蒼楽は考え無しに握り拳を突き上げて「おー!」と叫んでしまうと会場も「おー!」と握り拳を上げてくれた。
「あっぶな、乗ってくれたからヨシ」
マイクで何か捲し立てていたが蒼楽には理解できてない。
内容は37年ぶりにdios guerreroが帰ってきた!前回はルチャドール(男性レスラー)だったがルチャドーラ(女性レスラー)として復活!
腰の曲がった神父さんは37年ぶりに試合に出ようとしていた事になる。
バトルロワイヤル(複数人混合試合)に一際大きいルチャドールが目を引き2mを超えてると思われる筋肉質のマスクマンは超人と言った感じであった。
蒼楽のプランが固まった。
「空中戦で周りを蹴散らして、あの超人が残ってたらフィニッシュに!」
その時、ゴングがカーンと鳴った。
絶対予測が発動する。
全てのルチャドーラ(女性レスラー)が蒼楽に殺到する。
「上等!元メインイベンターの実力を見せてやる!」
ロープは弛んだ紐でローププレイは無理であった。
最初に突っ込んできたルチャドーラに素早くカウンターでヒップアタックをかまして、仰向けに倒れた相手に尻を叩いて見せる。
素早くコーナーポストに登り、倒れた相手に対空時間の長いムーンサルトプレスで3カウント
他のレスラー達が呆気に取られる中、ロープ際のレスラーにフライングショルダーアタックでリング外にぶっ飛ばすと素早くコーナーポストから場外で倒れる相手にシューティングスタープレス
わずか1、2分の事だったが会場は大盛り上がりである。
「飛んだ新人だ」・「ここがデビューってだけかよ」・「すでに完成されてんじゃねーか!」と周りのレスラーは警戒の色を濃くするのであった。
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