第九百四十五話 かすかな希望
年老いたシスターの苦悩
前回からの続き
パナマ共和国 スラムの教会
一夜を空けて朝の教会の清掃が終わると、お祈りの時間に近所から何人かが朝の礼拝にきていた。
シスターは聖書の聖句を読み伝えると、教会運営と恵まれない者の為にと布袋を前の信者に渡す。
この袋は寄進用の袋で気持ちを入れてくださいという意味である。
入れない人もいれば、入れる人もいるし、苦しさから頂く者までと様々である。
朝礼拝が終わるとシスターは袋の中を確認する。
小銭ばかりで1$(ドル)45¢(セント)が入っていた。
空っぽの日が続く事も稀では無いので今回はかなり高額なのだが・・
シスターは手を合わせ神と聖母マリアに感謝の祈りを捧げた。
祈り終わり自室で色々と考えるがお金が足りない、食費も厳しく教会の修繕など手が出せない。
雨漏りに隙間風に壊れた壁に屏にドアに窓・・
孤児院出身の大人達も時々寄付をしてはくれるが現実は世知辛い。
彼らもギリギリであり、ましてやこちらから「寄付を」とは言いにくい現状である。
そこで自室がノックされる。
カストロであった。
シスター
どうかしたのですか?
カストロは日本に来ないか?と言われた事を打ち明けた。
シスター
ボクシング?
そんな危ない事を何故?
カストロ、あなたはまだ子供よ?遠い国まで行って・・私は心配です。
日本人達もクリスチャンは亜利沙の一人しかいないし信用しても良いのかシスターは即答出来ずにいた。
カストロは言わずにおこうと思っていたが自分が居なくなれば口減らしになるし、その分・・と言ってしまう。
シスターはハッとした。
自分の顔に出ていたのだろうか?と・・
静かにカストロを抱きしめながら「カストロ、あなたがそんな事を考える必要はありません。大丈夫です。」と伝えつつ、心の中で「ああ神よ!」と祈る。
その時だった、小さな少女の声で「シスター、お客様がきたー」と声が聞こえた。
出迎えると日本人達だった。
チュアムが英語でカストロに伝える。
カストロがシスターにスペイン語で伝える。
「5万ドルを入金したって!」
シスター
gracias・・gracias amigo
Muchas gracias
※ ありがとう・・皆さん有難う
本当に有難う御座います。
スペイン語だったが伝説者達にもハッキリと伝わった。
そして、シスターはカストロに「日本に行って来なさい、この方々なら大丈夫でしょう。」と伝えた。
カストロの顔がパッと明るくなった。
日本へ行けるからでもなく、ボクシングをできるからでもない。
経済的に後顧の憂いが無くなった事である。
「これで兄弟姉妹が飢える事も無く、シスターも苦しまなくてもいい」それが顔を明るくした。
パスポートの手続き、留学申請、旅券の用意と話を詰める。
シスターが何やら伝えてくる。
カストロの顔を見ると誰かの子供にしてもらえないのか?と言ってるとの事だった。
丸山
おお、それも有りじゃな
林田
手続きとかどうなんだろ?
それより誰の養子にすんの?
丸山
わしじゃ!
子供もおらんし、せめて丸山の名だけでも
山根
え?普通に言ってあーしでしょ
ボクシングなんだし
藤井
とりあえずみんなのカストロ君って事で
カストロは少しだけ希望を感じながらワイワイ言ってる日本人達を見るのであった。
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