第九百四十二話 設立
朝
R5・8・28(月)0536
パナマ共和国 某ホテル
老人の朝は早い!
昨日、テキーラ、ビールに何だかよくわからない酒を飲んでみんなグッタリと寝ていたが80歳前の丸山の朝は早かったと言うより歳をとると長時間眠れない。
男は一人、とっくに枯れた丸山だけだったので最上階のペントハウス仕様の大部屋一つにみんなで宿を取った。
あられも無い姿で寝る女性陣を見るもピクリともならない。
丸山
ふふ、情熱はどこに置いてきたんじゃろうな
寂しそうに呟きながら窓から外を見る。
緑が見えるが日本と違い深い緑色のジャングルが遠くに見え、聞いた事の無い鳥の声が聞こえる。
丸山
うーん、違った意味で異国情緒じゃな
シャワーでも浴びるかのぅ
シャワーを浴びると水量は問題なくザーザーと暑い湯が出る。
丸山はフーッと一息つくとお気に入りのヘヤートニックとオーデコロンを付ける。
その香りに藤井と山根が目を覚ます。
山根
おはよう!爺さん早いなぁ!
藤井
おはようございます。
山根さん、シャワーお先です。
山根はガラス張りのドアを開けてプールサイドに立つと毎朝のルーティンのシャドーを始める。
丸山
ほう、感心感心!後で木刀で素振りでもするかの・・あ、シャワー前にするんだったなぁw
次に林田が起きるがパンツにスポブラ姿でボーッとしていた。
昨夜の深酒が効いた様である。
林田
うーん、あれ丸山さん?あ、そうだった・・まあいっか。
何とも思わないでしょ?
丸山
まあそうじゃがあまり堂々と彷徨くのはどうかと思うがのぅ
林田
へーい、ま、良いじゃん。
そう言うとストレッチを始める。
丸山も体操をしながら筋を伸ばしていく
十時を過ぎても亜利沙とチュアムは起きない。
まだ、軽く鼾をかいていた。
藤井
そろそろ、通訳の二人を起こさないとw
林田
だね。
みんなで起きろコールをすると重そうに起き上がってくる。
亜利沙
あう、あったま痛っ
チュアム
うう、頭痛が・・
酒を飲み慣れていない二人は昨日はっちゃけ過ぎた様だ。
シャワーを浴びて用意をすると1130になっていた。
山根が上から下を覗くとすでにカストロが入り口の前で座っているのが見えた。
山根
カストロ来てんぞ!
中南米だからウチナータイムだと思ってたぜ
丸山
じゃー、一旦、出るかの
ぞろぞろとホテルを出るとカストロが近付いてきた。
チュアムがカストロに軽いランチを食べてから行こうと言うと昨日とは違う所の屋台へ連れて行かれる。
炊き込みご飯、汁ご飯、芋の煮込みの屋台らしい。
しかもリーズナブルだった。
ここでもカストロは持ち帰りを希望したのでOKを出すと芋と鶏肉の煮込みをオーダーする。
食べ終わると両手いっぱいの料理を持ったカストロに案内され、15分後にゴミゴミとした路地裏の中にある掘っ建て小屋に着くと子供がわーっと飛び出してくる。
カストロは大声でダメだと言ってる様だった。
掘っ建て小屋をよく見ると教会だった。
中南米ではジーザス「イエス・キリストの事」では無く聖母マリア信仰が強く、教会内部にはマリア像があった。
クリスチャンの亜利沙が祈りを始めると各々が習って祈りを始める。
取り敢えず祈っておこうと言う日本人らしい考えである。
祈りが終えるとカストロが年配のシスターを連れて来た。
シスターは片言の英語で芋の煮込みと昨夜の料理のお礼を伝えてきた。
ここは教会だが行き場の無い子供の孤児院でもある様だった。
スペイン語でカストロはシスターに何か話していた。
シスターは頷いていた。
カストロはここを事務所にして良いとシスターが言ってると伝えてきた。
丸山
流石に無料と言う訳には行かんの
みんなで話し合ってパナマでの平均的収入の年額10万ドルに該当する143万を寄付する事で決め伝える。
カストロ
「10万ドル!?正気かこいつら!平均年収だかそれは大卒の管理職からギャングに売春婦に到るまでの平均だぞ!」
驚きながらシスターに伝えるとシスターは両手を合わせて握りしめて感謝の意を示した。
教会の住所と銀行の口座番号をシスターから聞き書き留めた。
今年は半分の5万ドルで合意した。
カストロは思った。
日本人は誠意を見せれば誠意で返すと効いた事がある、ここは誠意のある対応をすれば将来的にこの孤児院にもチャンスになるんじゃ無いかと考える。
カストロは幼少の頃に呑んだくれの父を無くし、毎日客を取ってた母親は数日後には消えた。
空腹を抑えて彷徨っている所をシスターに拾われたのであった。
みんなをホテルに送り届けた後、最初の仕事としてポストをみんなで作った。
ポストには「Bukakumono.co.ltd」と書かれていた。
ここに有限会社 武格者が設立されたのであった。
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