第九百話 連環の計?
いいえ違います
前回からの続き
ヤポーネ エリア トウカイン シーズニング・オカーンの地 ハママツン国とコサイン国の間 ハマナーン湖
スズキン率いるクマノン水軍の面々は緊張していた。
海運、諜報、要人警護、傭兵として海戦も畑違いの陸戦もやってきたが、今回は橋渡しである。
正しいやり方も分からない、つまり探りながら100万人以上の大群を安全に移動させるのである。
日頃、頭を使う事の無い者でさえある考えに至る。
「100万人も移動すれば、怪我人の一人や二人どころか百人以上出るんじゃ?」
百人だったとしても0.0001%である。
数字で見れば上出来ではあるのだが、黒の女王様の大行進の手伝いをして百人怪我させたと言われれば大失態以外の何物でも無い。
スズキン
我ながら部の悪い賭けだな。・・だが、部の悪い掛けは嫌いじゃ無い、多少の無茶は承知の上!
起死回生を狙うならこれぐらいで無いとな。
既に両手を血に塗られている者達が大義名分を手にするにはそれなりの難易度を突破しないと周りが認めない。
クマノン水軍の中には既に諦めてる者達も多い。
「今更、普通の生活に戻れる訳が・・」
「お頭は甘いんじゃねーか?」
「散々好き勝手やったんだ、今んなって・・夢見物語だな。」
「こびり付いた血はもう取れねーし、殺した奴らが許しはしねーよ。」
その考え自体が呪縛となっている事には全員が気付いていない。
道を誤った者、全てに言える事だがこのナーバスな考えこそが負へ縛り付ける鎖なのである。
元々神主の家系だったからか、人知れず、ずっと、スズキンはずっとこの鎖を断ち切ろうと試行錯誤していた。
神職の家系がそうさせるのか?何かの導きなのかは解らないがそうさせていた。
過去の日本においても、一生に一度は「お伊勢参り」や様々な願掛けの為に四国八十八箇所巡り、新年は山頂や海よりの初日の出の御来光を浴びる等の山岳信仰に海神・綿津見信仰プラス太陽神の天照大神の信仰と神仏土着神合体、所謂、八百万の神々が人々と密接に、近くに感じられていた。
現代の世では悪い事をすれば法的に社会的にしか裁かれず、バカッター等は過ちを犯せば、リトライの方法が無いのが現状である。これらは洋の東西を問わず同じである。
どんなに善行を積んでいても過去の過ちが露見すれば立場を失う、誰もがジャンバルジャンである。
悪行を公表しながら償って行かねば人々は許さない。下手したらその宿罪が何代にも渡る例も多くある。
この連鎖を打ち切ろうと早期から足掻くスズキンには知らず識らずの内に何かに導かれているのだろうか?
人々が湖畔に辿り着き、船上を渡り出す。
スズキン
手を貸せ、肩を貸せ!
常に注視しろ!
移動は一昼夜、掛かった。
翌朝、対岸のコサイン国では大休止が行われていた。
教団が主体となり、炊き出しが振舞われている様だった。
一人の船員が声をあげる。
か、頭、怪我人無しですぜ!
次々と奇跡だ!と声が上がる。
スズキン
そうか、なったか・・野郎ども!連結を外して錨をあげるぞ!
そのまま、ワカヤンマー港に集結するぞ。
近くの船員が聞く
「声を掛けて行かねぇのですかい?」
スズキン
ああ、ここは人知れず消え、次の地で待つのが効果的だ!
「それはダメ!」
スズキンは声の方を見るとアビィン亜里沙とサワット チュアムが船上に立っていた。
亜里沙
ダメですよ!炊き出しを全員で食べてからです!
スズキン
ですが、俺らが同じ場所で食事など・・
チュアム
教徒のみんながみなさんにお礼が言いたいんですよ、さあ、早く、早く!
スズキン
え、しかし・・
亜里沙&チュアム
鈍いなぁ、もう!
赦されたんですよ、少なくとも、この100万人には
船員
え?俺らが・・赦された・・
スズキンや他の船員達は気付かぬ内に頬に伝う何かに気付く
その顔からは険の取れた穏やかな表情であった。
参照
連環の計
https://rekishi-shizitsu.jp/renkannokei/
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