第八十八話 御仏の導き
奇跡の御技
アオーン・モーリンの地 ムッツン国 R2.5月中旬
サワット チュアムの前には長蛇の列が出来ていた。
杖をついた者、大八車に載せられた者、肩を貸された者、背負われた者、足を引きずる者と様々な痛みに苦しむ者達が救いの手を求めてやって来ている。
この世界に来た初日にマサンヒトンから背や腰等、体を痛めて寝たきりの者が居ると聞いたのが始まりだった。(第十話参照)
毎日、食べて、歌を聞かされているだけではストレスも溜まり気味にもなる。
トレーニングばかりでも飽きが来る。
そこで、背や腰を痛めてる方のお宅訪問をし、タイ式マッサージをしたのだった。
免疫学が確立するまで各種マッサージや鍼灸の科学的根拠が不明であったがツボや経絡秘孔は筋肉やスジの分かれ目や血流ポイントであり、押したりする事で治そうとする治癒力を利用したモノである。
最たる民間療法では、肩を揉む、叩く、風呂で温まる、晩酌等の少量の飲酒といった行為は正に血流をよくする為の行為であり、回復力を利用しているのであり、特に入浴は日本人の長寿の理由の一つでは?と言われている。
腰、背と痛めた者が5名いた。
症状や健康状態により、2日に一度、3日に一度と訪問し、マッサージを行なってみた。
歩けるようになると、ムッツン国内にある温泉を利用する様に伝えると、5名の者は少しずつ日常生活に復帰を果たした。
中には数年間も寝たきりの者もいた。
痛い→ 動かさずかばう→ 血流が悪くなり筋肉が強張る→神経を圧迫する
コレを繰り返すとより悪化し、寝たきりに繋がったり、老化も加速する。
このルーチンにくさびを打ち込むのが、鍼灸や指圧や足踏みやマッサージである。
しかしながら、施術の個人差がある為、事故を防ぐのに資格化され、鍼灸師、整復師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、カイロプラクティックと様々と存在する。
タイ式マッサージは日本では資格外になるが、タイ王国では医療資格になっており、様々な流派がある。
サワット チュアムのタイ式マッサージは最大手にあたるワットポーと言われる流派である。(第一話参照)
寝たきりの者が黒の女王様に踏まれただけで起き上がる!
噂が噂を呼び、長蛇の列に繋がったのである。
長蛇の列は黒の女王様、チュアムに繋がり、マサンヒトンやトヨコーン、ムッツン国民を始めアオーン・モーリンの地の民からは奇跡の行列と呼ばれていた。
サワット チュアムは当然一人で出来る量を上回っているのを感じていた。
そして、打開する為の案が何個かあり、実行に移すべくマサンヒトンとトヨコーンと連日話し合いをし、どうするかの形が見えた所であった。
参照
タイ式マッサージ(タイ王国観光庁)
https://www.thailandtravel.or.jp/activity/massage/
次話はアビィン 亜里沙です。




