第五十三話 信仰対象
エキシビジョンマッチ
会場に入ると席に着いていた者達が立ち上がる。
姫が会場に入るや否や話しだす。
トミーマーリン姫
皆の者、先だっての戦、大義であった。
旗色の悪い連邦において、唯一、我が国が勝てたのは皆のお陰ぞよ。
本日は慰労を兼ねての夕食じゃ、戦時ゆえ、酒は無いがゆるりといたせ。
聞いておる者も居ようが、先の戦で第三中隊長と伝説者の戦士、林田 蒼楽殿の助力があり、敵中隊長三名を捕虜とし、武勲をあげた。
これが勝敗を分けたが、それまで踏み留まった各大隊の奮戦があってこそである。
第一、第二、第三大隊には報酬として、金十万円を褒美とする。
まずは着席じゃ、冷めぬ内に箸をつけようぞ!
姫が舞台横のテーブル席に座ると、回りも着席し、会食が始まる。
その頃合いを見計らい、スギココロンが話す。
スギココロン
皆、そのままで聞いて頂きたい、本日は慰労と言う事で林田 蒼楽殿と私で催し物として、伝説者の世での演武をご覧頂く
武者だらけの会場が騒つく、伝説者の世界での武格に興味津々である。
スギココロン
〔よし、掴みはばっちりだ〕
さて、紹介するのは、プロレスと言う名の無手で闘う格闘技である。
相手の両肩を地面につけ三拍子固めるか、台の外へ規定の時間出してしまうか、まいったと言わせれば、勝ちである。
ただ、そこに至るまでは相手にダメージを与え、スタミナを奪い、気力を削ぐといった攻撃を加える。
論より証拠、まずは見て貰おう!
審判役の姫のお付きのコボルトが舞台にあがり紹介をする。
会場は演武に何故、審判役がいるのか?不思議がる。
そして、姫がニヤつきながら鐘を鳴らす。
「カーン」
審判
ファイト!
林田 蒼楽とスギココロンが吠えながら組み合う
力勝負である!型通り演武を予想していた者達が驚く!
林田 蒼楽が素早く回りこんでアトミックドロップを仕掛ける!会場から声が上がる。
さらに後方からスライディングからの蟹挟みでうつ伏せに倒す!席の後ろの方は立ち上がって見ている。
そのまま、ボストンクラブをしかけ、林田 蒼楽が、まいったかー!と吠える。
スギココロンは、まだ、まだだ!と、うなる。
会場は仲間のスギココロンが攻め立てられて、声援を送る。
技が解けて立たせた林田 蒼楽が技を掛けようとした瞬間、スギココロンが逆水平をバチーンと打つ、すぐにパッチーンとエルボースマッシュが返ってくる。
会場からは、やはり、伝説者には勝てないのか?と諦めムードになった瞬間、スギココロンの反撃のエルボー5連打が炸裂!しかし、林田 蒼楽は踏み留まっている所に回転してのエルボーがドシンと決まり、林田 蒼楽は仰向けに倒れる。
会場は総立ちである!
スギココロンがチェストー!と大声を上げながら高さのあるギロチンドロップを決める。
素早く立ち上がり、距離を取ると走り込むながら大きく飛ぶ!
皆が、おぉー!うぉー!と、声をあげた瞬間、フライングボディプレスが決まる。
レフリーがワン、ツー、スリーと台を叩くと、姫が鐘をカンカンカンカン!と鳴らし、スギココロンの手をあげつつレフリーが勝者、第三大隊長!とコールと共に会場は割れんばかりの歓声に包まれた!
最後にスギココロンと林田 蒼楽が握手をすると惜しみの無い拍手がおこる。
拍手に包まれ、二人のレスラーとレフリーは下がる。
会場の騒つく中、裏手でレフリーが興奮しました、近くだと尚の事です。と言うと、スギココロンが上手くいった!と上機嫌にシッポがピンとなる。
それを見ながら、林田 蒼楽はアーベン神の再戦までプロレスを布教しつつ、根付かせ、鍛えるのが天命だと感じた。
この世界にプロレスを!と自分の神様に布教を誓うのだった。
カールゴッチ
1924 〜 2007
千の技を持つ男、プロレスの神様などの二つ名がある。
九割は海に散骨
残り一割の一部を日本へ分骨
東京都荒川区南千住にお墓があります。
分骨ってブッタみたいですね、流石は神様




