第二百六十九話 DQN
理不尽
R3・1・5(火)正午
エリア ドドサンコ アサヒンカワ国 陸上自警隊アサヒンカワ駐屯地
一通の訴状が届く、アサヒンカワ国と陸上自警隊アサヒンカワ駐屯地を相手とした訴状だった。
災害派遣時に助けたあの家族からであった。
国と自警隊の初動の対応が悪い為に精神的損失を家族が受けたとの事であった。
丸山は怒りがこみ上げて、我慢ならない所まで来ていた。
当直室で静かにしてはいるが怒気が当直二名に伝わるが、当直勤務者も怒り心頭であり、大小は有るが自警隊の誰もが怒りを感じていた。
丸山
少し、駆け足に行って来ます。
そう言うと丸山は頭を冷やす為に氷点下の外に出る。
準備体操をしていると皆、思う所が有るのか、駆け足や体操する為に出ている者が多かった。
軽く、アキレス腱を伸ばしながら、ウオーキングから始める。
そして、緩やかに走り出すと、氷点下の空気が頭を冷やしてくれる。
途中、体育館の横を通ると、中は盛況の様だ。
外柵沿いを走っていると外から声を掛けられる。
すいません、毎朝通信の記者です。
災害派遣時に不手際が有り告訴されていますが、隊員として一言お願い致します。
丸山は「カーッ」と来そうになるが、氷点下に隊員を待って凍える記者をみて冷静になる。
丸山
寒い中、大変ですね。
しかしながら、答える立場では無いので広報をお通しください。
入隊時に部隊で受けた導入教育でのテンプレ通りに答えた。
記者は何人か声を掛けるが同じ答えしか返ってこないので、広報を通す事になるだろう。
途中にある慰霊碑にはやりきれない顔した隊員が静かに敬礼をしていた。
丸山も後に続き、敬礼をし駆け足に戻る。
寒い日は走ってもゆっくりと言われているので体が温まるくらいに暫く走って戻った。
当直室の戻った頃には怒りは鎮静化したが、当直の二名は悶々としている様だった。
丸山
しかし、あの家族・・いや旦那だろうな、ふざけおって。
パーテーションの奥で汗を拭き着替えていると、今の声が漏れたのか、当直の二名も息巻きながら、全くです。
英霊が報われないじゃ無いですか!
ヒートアップしそうになる。
丸山
あまり怒っては英霊も落ち着かんですよ。
我々は文民統制下、言われるがまま・・これも使命ですじゃ。
後は上級部隊や統幕やアサヒンカワ国に任せるしか無いのです・・統括する直の文官が居ればもっと楽なんですがね。
今は半旗を掲げ、営内者、営外者共には外出を自粛中であった。
外でDQNに絡まれて問題になるよりは良いと皆が思っていた。
流石に、今、英霊を馬鹿にでもされれば我慢は出来ないだろう。
この日、臨時集礼が行われた。
アマンノン司令より、対人応答要領を再度伝えられ、自粛中なので飲酒等は控える様にとのことだった。
しかし、寒い!例年以上の冷え込みだそうだ、下手すれば数日後にはー20℃、―30℃と行くのでは無いかと噂される。
災害派遣時の降雪やこの寒さには、実は大きな原因があった。
それがわかるのはもう少し後日となる。
取り敢えず、終礼が終わると当直室でストーブにあたり、暖を取る丸山だった。
次話は坂本(久米)です。




