第百九十二話 シュプレヒコール
聖なる黒
前回からの続き
朝礼場所に着くと全自警官が乙武装で整列していた。
そのまま、カキウッチー1佐が登壇し、事の経緯を10に分けて説明する。
1 現在、この世に黒の女王様が二名顕現されている事
2 東の黒の女王、サワット チュアム様が表敬訪問中である事。
3 サワット チュアム様は共済組合の主事補で有り、自らの意思で隊員になった事
4 命令書が出ており、その通りの行動をしている事
5 西の黒の女王、アビィン亜里沙様と旧知の仲である事
6 西の黒の女王、アビィン亜里沙様と教団幹部は現在、黒色教連合の争いを止める為にキューシンズ大陸へ出向き不在と言う事実
7 亜里沙教団により謂れ無い事実で非難を受けている事
8 デモ隊が向かっている事
9 自警隊トークシーマン地方協力本部・海上自警隊コマッツシマ航空基地・陸上自警隊トークシーマン駐屯地は亜里沙教団に殉じると表明した事
10 自警隊に何ら非がない事
そして、カキウッチー1佐が降壇し、サワット チュアム主事補が登壇する。
チュアム
隊員の皆さん、お疲れ様です。
東の女王事、サワット チュアム主事補であります。
今回は西の女王事、アビィン亜里沙さんの表敬を兼ねて、この部隊を表敬訪問させて頂きました。
先ほどの基地司令の談話の通りではありますが、亜里沙教団に何か勘違いが有るようです。
デモ隊が到着次第に私、自らが誤解を解く為に対話に臨みたく思います。
万が一、千が一の場合を想定し、非常呼集で、乙武装で待機となり、隊員の方々に負担になった事が残念であります。
対話の結果、亜里沙教団やトークシーマンの地の他部隊と戦闘状態になった場合は・・私が先頭に立ちます!
ここで、ざわめきが起こる。
こう見えても、私は伝説者で武格者です。
武神アーベンと戦った事もあります、安心してください。
ただ、隊員の皆さんにおかれては、正当防衛時は躊躇わずに行動されたい。
聖戦は我らにあります。以上、皆さんに聖なる導きを!
チュアムが手を合わせると、カキウッチー1佐が「気を付け」の全隊号令が掛かると、頭、中!の号令が掛かった。
部隊の士気が一気に上がる。
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そして解散となると、隊員は乙武装、各隊所定で日常業務に移行する。
司令室にカキウッチー1佐、センガワ海将、ブックシーマン海将補、ツカンヤーマン事務官、サワット チュアム主事補が集まる。
カキウッチー1佐
驚きです、予定に無かったお言葉、痺れました!
チュアム主事補
ケジメとしての私なりの言葉です。
予定に無かったチュアムのアドリブは下の二文だった。
「対話の結果、亜里沙教団やトークシーマンの地の他部隊と戦闘状態になった場合は・・私が先頭に立ちます!」
と
「聖戦は我らにあります。」
である。
窮地のトークシーマン航空基地と北トークシーマン分屯地にしてみれば、勇気100倍、100%勇気の御言葉である。
ただ、センガワ達からすると女王を擁立した軍事クーデターに見える。
センガワ海将
チュアム様、本当に先頭に立って戦うのですか?
チュアム主事補
あくまでも、対話後に戦闘になったら、ですよ。
ツカンヤーマン事務官
しかし、あのアドリブは心臓に悪いですな!ホントに「どきっ」としました。
こんな刺激的なのは初めてです、チュアム様に付いて来た甲斐が有りますよ。と苦笑いをする。
ブックシーマン海将補
こうなったらどこまでも突っ走るしかないですね。
お供致します。
そして、デモ隊が近づいたと情報が入る。
二手に別れてマツンシゲン飛行場を取り囲むように進む。
飛行場内にある二つの部隊は逃げ道は無くなった。
チュアムはセーラー服姿で、閉じた正門近くでデモ隊を待ち構える。
遠方よりシュプレヒコールが聞こえてくる、「チュアム様を返せー!」、「女王様を利用するなー!」、「自警隊、反対―!」等の怒声が迫っている。
武装した民衆は怒りに身を任せ危うい状態だ、まさに一触即発である。
閉じたゲート前にデモ隊の先頭が付くとチュアムは隊員達を下がらせる。
デモ隊が正門近くの褐色の少女に気付く
あっ、アレを!亜里沙様と同じ装飾品に御召し物
おお、あれがもう一人の黒の女王様!お迎えにあがりました。
チュアムは閉じた正門に向かい走り出すと大きく飛び上がり、一回転すると、ふわりと門の上に降り立つ
デモ隊から、「く、黒いおパンツが!」と声が上がる。
チュアム
誰がおパンツを見て良いと言いましたか?
デモ隊の者達が慌てて下を向く、気勢を剥ぐのに成功した。
隠れて見ていたカキウッチー1佐が「イエス!ナイス黒いおパンツ!」とガッツポーズを取ると、センガワ海将とブックシーマン海将補にシバかれる。
チュアム
私が東の黒の女王にして、海上自警隊員のサワット チュアムです。
責任者はどなたですか?
デモ隊から、驚きの声が上がる・・海上自警隊員!?




