第百八十七話 勝って兜の緒を締めよ!
サイン
キューシンズエリア クマモーン城
トミーマーリン姫と事務方は論功報償の算出がほぼ、ほぼ終わり、安堵していた。
事務方や残存兵及び近隣住民や旅人に対して無料のプロレス大会が城の城門前、特設ステージで行われた。
販促グッズも飛ぶように売れ、無料なのに赤字にならないと言う不思議な結果になった。
その影にはサイン専用色紙や専用グッズにリングネームサインを書きまくる四人のマスクレスラー達がいた。
林田 蒼楽と第一、二、三大隊長である、リングネームを書いて、書いて、書きまくって、その都度握手をし、有難うや応援ヨロシク等の言葉を掛けていく。
地域住民や旅人と同じくらい、事務方が帰郷前の手土産として購入しているのも目につく
離れた場所で見ているトミーマーリン姫は頭の中で算盤を弾くような音がするのを心地良く感じていた。
トミーマーリン
いやー、論功報償の算出時には二度と聞きとう無いと思っておったのに、人と言うのは現金な生き物じゃのう。
正に「損して徳取れ」ってヤツじゃのう、笑みが止まらぬのうw
二時間ほどで、サイン会は終わり、その間にリング等の撤収は終わっていた。
四人のマスクレスラーは姫にお茶に誘われ、城内でお茶を飲み談笑を楽しむ。
自分の名前以上にリングネームを書いただの、腕がパンパンだの、夢に見そうだのと、もはやリングネームが本名の様だのと語っていると、分厚い紙の束が運ばれてくる。
トミーマーリン姫
すまぬが、そのカラー木版画にサインを頼めるかのう?
論功報償関連じゃ、個別と全体が有のるじゃが・・頼む!!
これもスター選手としての定めじゃ
蒼楽殿とスギココロン(ブラックタイガー)は枚数が多いんじゃが、一つ頼む!
そう言うとペンが用意される。
四人共、ヒーヒー言いながらサインを書いていると、姫へ火急の報告が入る。
大隊長クラスしかいないので皆に聞こえる様に報告を求める。
報告者
忍からの火急の報告です。
カーゴシーマンの地 南部の諸島域にて魔王復活!
魔王は強大な力と家臣のドラゴンを使い、オーキナーゼンの地 ウマルチャン国からキューシンズ大陸南部の諸島域までを支配下においたそうです。
オーキナーゼンの地は魔王に反抗声明を出すどころか、恭順姿勢を示す国多数、オーキナーゼンの地、陥落は時間の問題との事(第百六十話参照)
トミーマーリン姫
はあ?魔王じゃと!
ニシノンオモッテー国は連邦から脱退し、再加入の使者を送る予定であったのに・・
油断した訳では無く、慢心したつもりも無いが、いつの間にやら、サツマアゲン連邦の尻に火が付いておるではないか!
戦後、すぐに次の戦に備えよと言うのか?
スギココロン
ドラゴンを使役するなど、最早、我らも覚悟を決めねば・・
林田 蒼楽
天守閣にいた魔人って、その魔王の配下だったのかな?
トミーマーリン姫
何らかの手を打たねばの、魔王討伐部隊の編成か・・連合戦の数倍は必要になるやも知れんの・・船舶の用意も必要じゃしの、正直言って連戦は無理じゃ、12月下旬の論功報償を終えて、金策をしてからの準備になるの、これでは領地が発展どころか疲弊する一方じゃ!!
林田 蒼楽
姫、待って!
先ずは使者を送って見ない?
ワンチャン戦わずに済むかも?何なら、私が行くよ。
トミーマーリン姫
・・そうじゃな、交渉の余地が有るのなら、それも手じゃな。
時間稼ぎになるやも知れぬ。
すまぬが蒼楽殿、遊撃隊からの数名の選抜者を連れ、使者の件、頼めるかの?
林田 蒼楽
うん、わかった。
トミーマーリン姫
さらにすまんが、サインは今日中に終わらせてたも
林田 蒼楽
・・うん、わかった。
全く減らない紙の束に黙々とサインをするレスラー達であった。
次話、水崎 叡です。
参照
現在は「損して得とれ」の表記が多いが、本来は「損して徳とれ」で利益が少なくとも仕事をちゃんとする事で仕事の依頼がくる。と言う意味です。




