第百六十五話 勝負服
デビュー服
前回からの続き
昼下がり、幾度と無く久米は歌の練習をしていた。
ウォ、ウォ〜オオ〜♬ ウォ、ウォ〜オゥオ〜♫
ふう!いい声だ、ミクミンが戻るまで二時間以上はあるな、関節の痛みも無いし、肺活量低下防止を兼ねて散歩でもするか。
リュックを背負うと、久米は階段を降りる。
外へ出ると曇り空だったが、雨は降りそうには無い。
15分ほど歩くと、とある店の前に着く。
服屋であった。
ヤポーネと呼ばれるこの世界は大航海時代前の文明レベルに微妙に魔法が合わさった世界であり、機械文明では無いので、当然、服は大量生産されておらず、古着か仕立てのどちからの選択になる。
古着でさえ一般では高価な物であった。
久米は、御免ください。と、中に入る。
中年ドワーフの男性店主
おや、オケールさんじゃないですか!
冬服の御用意ですかな?
久米
一つ、玄孫のミクミンに服を作ってやりたくてね。
中年ドワーフの男性店主
ほう?着物ですかな?それとも洋服?ライトな感じの和服の着流しとか?それともドレスですかな?郷土服ならオーキナーゼン風やアイヌ風とかもありますよ。
西陣織や博多織とかの高級品は取り寄せになります。
今なら良い藍染の反物が入っているんですが、どうですか?
大島紬の上物も御座いますよ。
流れる様なセリフが流れる。
久米
すまないが、一点物として、これを作って頂きたいのですが?
リュックから初音ミクの衣装を紙に書いたものを見せる。
ペンで書いたモノに矢印で色の指定をし、わかりやすく正面、後ろと書いた。
久米
細かいが出来るかい?
中年ドワーフの男性店主は、じっと見ながらぶつぶつ言っている。
そして、二週間頂ければ出来ると言い放った。
久米
お幾らで、出来るのかい?
中年ドワーフの男性店主は、算盤をアレがいくらで、コレがこれぐらいでと弾く、そして、眉間にシワが寄る。
中年ドワーフの男性店主
〔オケールさんの所は裕福では無い、しかし、服の仕立ては金が掛かる。が、高過ぎると諦めてしまう、かと言って赤字では商いの意味が無い。〕
うーん、子供服だから生地は少ないから・・だが、小さい分、細かい作業が有る・・うーん、8万円!いや、7万5千円で!これ以上は下げれん。
久米
7万五千円、わかりました。
先払いで良いかい?
中年ドワーフの男性店主
はい、助かります。
採寸はどうしますか?
久米は、いつの間にかヤポーネ仕様になっていた久米本人のお金から支払う。
所持金は、139,573円になった。
採寸は後で、連れて来るからそれと無く測ってやってもらえないかい?
中年ドワーフの男性店主
サプライズ プレゼントですか?
わかりました、古着を見に来た体でのサイズ調べで採寸させて頂きます。
それはそうと、Tカードはお持ちでは?
久米
えっ?Tカード!?
中年ドワーフの男性店主
折角の高額なお買い物ですし、後でも良いのでお持ちください。
久米
はい、受け取りまでには持ってきますね。
〔Tカード、有るんかい!びっくりだな〕
久米は家に戻り、小一時間、ハミングをしていると、階段を駆け上がる音と共に歌が聞こえてくる。
♪ミックミンにしてやんよ〜♫、ミクミンが帰って来たようだ。
只今ぁ!と、元気よく帰宅すると、言わなくても手洗い、うがいをする。
久米
〔ほう?さらにやる様になった!ミクミン〕
ココでミクミンにTカードに付いて聞いてみると、戸棚からオケールと書かれたTカードを持ってきた。
ミクミン
私が買い物する時に持ってく様に言われた。
久米
〔買い物のポイント貯める用か〕
ミクミン、今日は散歩に行くよ
ミクミン
うん、わかった!
・
・
服屋の前で古着を見てみようとミクミンと店内に入る。
色々と見ていると、店主がサイズ、わかりますか?と聞いてきた。
ミクミンが首を振ると、サイズ調べるね!と採寸に成功する。
店主
お嬢ちゃんは、子供用のSサイズたね。
ミクミンが有難うと言い店内を物色する間にTカードを渡すと百円に付き1ポイントで950ポイントが付与された。
ミクミンが飽きてきて帰ろうと言い出したので、ニヤる店主に挨拶して帰路に着く。
ミクミン
オケール婆ちゃん、なんか、知らない歌を歌って!
久米は「さんぽ」歌いだす。
歩こう、歩こう、私は元気〜♪
歩くの大好き〜どんどん行こう♫
二人で歌いながら帰宅するのであった。
参照
さんぽ
https://sp.uta-net.com/movie/10772/
次話は水崎・パージメンです。




