第百三十九話 赤い彗星
北条 氏政公
水崎 叡は、しっかりと確認した。
アキバで一緒だった久米と言う男が森に斜めに突っ込むのを!赤いジャンパーが鮮やかに見える。
赤い彗星かよ!
そして、水崎は自然と落下現場へ走り出した。
パージメン、エイッチャー、ツートンも走り出した。
中々、現場が特定出来ずに彷徨くと、パージメンの声がする。
パージメン
おった、こっち、こっち、はよ!
現場は悲惨だった、虫の息の久米が仰向けになっていた。
左肩から先は無く、右足も膝から先を欠損、左足に至っては股関節から先が見当たらない。
右脇腹から骨が数本突き出ていた。
右手は骨は見えているが何とか付いていた。
まさに血だるま状態に近かった。
息が有るのが奇跡的だった。
水崎 叡
えっと、久米さん?聞こえる?
久米 慶人
あ、ああ
アキバで一緒だった、水崎君?
水崎 叡
ええ、そうです。
あのステータス内に何か、助かる方法があるかも?
ステータス、みました?
久米 慶人
見たが無い。
お願いがあるんだが・・
そう言うと、アキバの裏路地で買った、かなり長いネジを右手で自分心臓の上に立てる。
久米 慶人
すまない、痛くてたまらないんだ・・その棒でネジの頭を叩いてくれないか?
ステータス内に転生があるから、ギリ殺人じゃ無いから・・さ
パージメン
顔見知りみたいやし、楽にしたったら?
かなり、痛い筈やで・・
水崎 叡
ホントに転生するんだな?
久米 慶人
本・・当だ、すまないが・・楽にさせて、くれない・・か?
水崎 叡
わかったよ、気は進まないけど・・行くぞ!
頭の中で弾ける様な音がした。
アキバの木の棒を振りおろすと、久米は痛みから解放された、そして、遺体が光り出すとネジや持ち物の全てが消えた。
遺体と服はあるが、持ち物やリュックが消えたのだった。
水崎 叡
えっ?伝説者って死んだら持ち物、残らないのか?それとも彼だけ?
ツートン
服以外は消えた、どう言うことや?
とりあえず、バラバラの手足を集めて四人で穴を掘り埋めた。
水崎 叡
酷い話だ、いきなり転移したら、流れ星かよ。
島だったオレは運が良かったんだな。
転生って言ってたけど、記憶や経験値、消えた持ち物はどうなるんだろう?
後で、この事をアビィン 亜里沙と林田 蒼楽に知らせないとな。
四人は現場を跡にし、野営地へ戻り、一部始終を皆に伝え、夕食をとり、夜に備えた。
順番で見張りをらし、夜明けを迎える。
そして、朝食時に水崎は気付く、ん、美味い。
特に汁物は出汁の取り方が絶妙だった、関西風の味噌や醤油に頼らない、絶妙な合わせ出汁が水崎を唸らせる。
無口な長兄のケイジーンが口を開く、ほう?水崎はんの口に合うみたいやな、もう一杯、どないや?
水崎は遠慮なく頂いた。
水崎 叡
こんなに美味しい味噌汁は久方ぶりです、もう一杯いけそうです。
カオルーン
水崎さん、味噌汁は二杯迄にしとかな、バカ殿超えてまうで?
水崎 叡
ははは、そうですね。
〔あっ、何か聞いた事が有ったな、ご飯に味噌汁をかけて食べる時、味噌汁が足りないともう一杯かけるやつだな、誰だったかな?まあ良いや、ただ、食時に無頓着なだけだったかも知れないし〕
久しぶりに食べた、ご飯と味噌汁と沢庵が美味かった。
転移後、強制飛行で、ろくな食時も出来ずに逝った久米が不憫だと、ふと思う水崎だった。




