第百二十三話 戦争の爪跡
ワンツースリー
一夜明けた夕刻、水崎を乗せた船は、この世界最大の大陸であるポンシンユ大陸のエリア チューゴクゴク ヤーマングッチの地 ヤナヤナイ国に接岸する所であった。
港はエルフが多く、兵や入国管理官が接岸作業を見守っていた。
簡易フェリータイプの同船は荷車を先におろすと、隊商の責任者と荷車を運搬する人足がチェックを受ける。
荷物の量からして、かなり時間が掛かりそうだった。
甲板で降りる順番待ちをしてると、一人の老人男性エルフに声を掛けられる。
老エルフ
昨夜は助かりました、お礼になるかどうか、わかりませんが、下船の際には、一揉めあるかも知れ無いですぜ、エルフは閉鎖的でして、長年ドワーフ達と争ってます。
水崎 叡さんって、いやぁ、ドワーフの切り札って、エルフの間では有名なんで、嫌な思いをする事も多いかも知れませんが、あんまり、エルフ達を嫌わねぇーでくだせぇ・・
水崎 叡
御忠告、有難う御座います。
そうか、ここはアウェーなのか・・
老エルフ
まぁ、その分、農林水産物は旨いのと、見る所も多く、後は魔法使いが多いんで、そっちで楽しんでやってくだせぇー。
そう言うと、後ろに居たのに先に降りて行った。
水崎 叡
〔えー、無いっすわ。〕
タラップを降りると、エルフに周りを囲まれる。
〔あー、成る程ね。だから、先に降りたのか〕
入国管理官
失礼だが、伝説者の水崎 叡だな?
水崎 叡
そうですが、何でしょうか?
入国管理官
申し訳無いが、スパイ活動の嫌疑が掛けられている。
こちらの指示に従ってもらう。
水崎 叡
わかったよ、そちらの事情も分かる。
俺がドワーフと仲が良いからだろ?
エルフ兵
まぁ、そう言う事だ、ドワーフ達に対する嫌がらせだ、コッチに付いてくれるんなら、別に何もしないんだがな。
水崎 叡
まぁ、出会った順番って事だよ、流石に二枚舌は出来ないよ。
入国管理官
まぁ、わからないでも無いが、うちも仕事だ。
先ずは持ち物検査からだ。
水崎 叡
わかったよ、後ろの並んでる奴らは先に行かせてくれよ。
入国管理官
悪いが、出来ん!
そう言う事だ、スマンな。
水崎 叡
うーん、わかったよ。〔中々の確執だな〕
お手柔らかに頼みよ。
エルフ兵
お手柔らかにってのも出来んのだよ!
兵が首をクイッと振る先に上官らしき者が見ていた。
水崎 叡
わかった、諦めた。
存分にやってくれ!
入国管理官
それも出来ん!
水崎 叡
はぁ?何だよ、それ!
エルフ達が一同に言う、これも、嫌がらせだ!
水崎 叡
あぁ、そう言う事かよ・・
たっぷりと一時間は持ち物検査をされた。
途中、アビィン亜里沙と林田 蒼楽との連判状を見ても、知らん顔された。
エルフ兵
では、別室に来て貰おうか!
水崎 叡は、後ろの長蛇の列に頭を下げた。
皆、やれやれといった感じだった。
入国管理官
ここからが、本番だ!
すまんがたっぷり相手をして貰う。
水崎 叡
中々の骨太な対応だな、感心するよ。
〔これは、下船前に聞いて無ければ、我慢出来なかったな、ここで揉めたら、カッスンガー辺りに迷惑を掛けてしまう所だったな〕
別室へ移動すると、尋問タイムが始まった。
言葉を少し変えては同じような質問が続いた。
名前は?どこから来た?どこへ行く?何のようで?どこを通った?どこを通る?依頼は何を受けた?今後はどんな依頼を受ける?キタンキュウシン国の天気は?マツカゼヤマ国は風は強かったか?お前の性別は?今まで誰に合った?年齢は?海は満ちていたか?オオイッタンの地は夜空は綺麗だったか?キューシンズ大陸からヨンコク大陸の航路は波は荒れてたか?三日前はどこにいた?五日前の昼食は何だった?今日クソはしたか?趣味は?ヤナヤナイ国は暑いか?クニンサッキ国は涼しかったか?オオッス国は何が有った?体重は?今日は歯磨きしたか?何故空は青い?泳ぎは出来るか?足のサイズは?好きな飲み物は?何故好きなのか?服のサイズは?釣りをした事あるか?爪はいつ切った?好きな色は?etc.
返答が少しでも違うとギャーギャー喚きながら、何故違うのか?と必要に迫る。
水崎 叡
〔ウンザリだ!勘弁してくれよ、いつ迄続くんだ!胃に穴が空きそうだ〕
・・5時間後に解放された。
隊商の人達がいたので、声を掛ける。
水崎 叡
入国審査、終わったんですか?
隊商のリーダー
いや、待てなくて、先にヤナヤナイ探共へ納品、報告をして、ヨンコク大陸への荷を積み、港に戻った所です。
水崎さんは後で報告に来るって言ってあるんで、悪く思わないでくださいね。
水崎 叡
あっ、なんかコチラこそ、気を使ってもらってすいません。
探共へ行ってきます。
一人、とぼとぼと歩く水崎 叡であった。




