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武格者(ぶかくもの)   作者: 空銃(からづつ)
第七章 提督の決断
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第百二十三話 戦争の爪跡

ワンツースリー



一夜明けた夕刻、水崎を乗せた船は、この世界最大の大陸であるポンシンユ大陸のエリア チューゴクゴク ヤーマングッチの地 ヤナヤナイ国に接岸する所であった。


港はエルフが多く、兵や入国管理官が接岸作業を見守っていた。


簡易フェリータイプの同船は荷車を先におろすと、隊商の責任者と荷車を運搬する人足がチェックを受ける。

荷物の量からして、かなり時間が掛かりそうだった。


甲板で降りる順番待ちをしてると、一人の老人男性エルフに声を掛けられる。


老エルフ

昨夜は助かりました、お礼になるかどうか、わかりませんが、下船の際には、一揉めあるかも知れ無いですぜ、エルフは閉鎖的でして、長年ドワーフ達と争ってます。

水崎(みずさき) (えい)さんって、いやぁ、ドワーフの切り札って、エルフの間では有名なんで、嫌な思いをする事も多いかも知れませんが、あんまり、エルフ達を嫌わねぇーでくだせぇ・・


水崎(みずさき) (えい)

御忠告、有難う御座います。

そうか、ここはアウェーなのか・・


老エルフ

まぁ、その分、農林水産物は旨いのと、見る所も多く、後は魔法使いが多いんで、そっちで楽しんでやってくだせぇー。

そう言うと、後ろに居たのに先に降りて行った。


水崎(みずさき) (えい)

〔えー、無いっすわ。〕

タラップを降りると、エルフに周りを囲まれる。

〔あー、成る程ね。だから、先に降りたのか〕


入国管理官

失礼だが、伝説者(レジェンダー)水崎(みずさき) (えい)だな?


水崎(みずさき) (えい)

そうですが、何でしょうか?


入国管理官

申し訳無いが、スパイ活動の嫌疑が掛けられている。

こちらの指示に従ってもらう。


水崎(みずさき) (えい)

わかったよ、そちらの事情も分かる。

俺がドワーフと仲が良いからだろ?


エルフ兵

まぁ、そう言う事だ、ドワーフ達に対する嫌がらせだ、コッチに付いてくれるんなら、別に何もしないんだがな。


水崎(みずさき) (えい)

まぁ、出会った順番って事だよ、流石に二枚舌は出来ないよ。


入国管理官

まぁ、わからないでも無いが、うちも仕事だ。

先ずは持ち物検査からだ。


水崎(みずさき) (えい)

わかったよ、後ろの並んでる奴らは先に行かせてくれよ。


入国管理官

悪いが、出来ん!

そう言う事だ、スマンな。


水崎(みずさき) (えい)

うーん、わかったよ。〔中々の確執だな〕

お手柔らかに頼みよ。


エルフ兵

お手柔らかにってのも出来んのだよ!


兵が首をクイッと振る先に上官らしき者が見ていた。


水崎(みずさき) (えい)

わかった、諦めた。

存分にやってくれ!


入国管理官

それも出来ん!


水崎(みずさき) (えい)

はぁ?何だよ、それ!


エルフ達が一同に言う、これも、嫌がらせだ!


水崎(みずさき) (えい)

あぁ、そう言う事かよ・・


たっぷりと一時間は持ち物検査をされた。

途中、アビィン亜里沙と林田(はやしだ) 蒼楽(そら)との連判状を見ても、知らん顔された。


エルフ兵

では、別室に来て貰おうか!


水崎(みずさき) (えい)は、後ろの長蛇の列に頭を下げた。

皆、やれやれといった感じだった。


入国管理官

ここからが、本番だ!

すまんがたっぷり相手をして貰う。


水崎(みずさき) (えい)

中々の骨太な対応だな、感心するよ。

〔これは、下船前に聞いて無ければ、我慢出来なかったな、ここで揉めたら、カッスンガー辺りに迷惑を掛けてしまう所だったな〕


別室へ移動すると、尋問タイムが始まった。


言葉を少し変えては同じような質問が続いた。


名前は?どこから来た?どこへ行く?何のようで?どこを通った?どこを通る?依頼は何を受けた?今後はどんな依頼を受ける?キタンキュウシン国の天気は?マツカゼヤマ国は風は強かったか?お前の性別は?今まで誰に合った?年齢は?海は満ちていたか?オオイッタンの地は夜空は綺麗だったか?キューシンズ大陸からヨンコク大陸の航路は波は荒れてたか?三日前はどこにいた?五日前の昼食は何だった?今日クソはしたか?趣味は?ヤナヤナイ国は暑いか?クニンサッキ国は涼しかったか?オオッス国は何が有った?体重は?今日は歯磨きしたか?何故空は青い?泳ぎは出来るか?足のサイズは?好きな飲み物は?何故好きなのか?服のサイズは?釣りをした事あるか?爪はいつ切った?好きな色は?etc.


返答が少しでも違うとギャーギャー喚きながら、何故違うのか?と必要に迫る。


水崎(みずさき) (えい)

〔ウンザリだ!勘弁してくれよ、いつ迄続くんだ!胃に穴が空きそうだ〕


・・5時間後に解放された。


隊商の人達がいたので、声を掛ける。


水崎(みずさき) (えい)

入国審査、終わったんですか?


隊商のリーダー

いや、待てなくて、先にヤナヤナイ探共(たんきょう)へ納品、報告をして、ヨンコク大陸への荷を積み、港に戻った所です。

水崎さんは後で報告に来るって言ってあるんで、悪く思わないでくださいね。


水崎(みずさき) (えい)

あっ、なんかコチラこそ、気を使ってもらってすいません。

探共(たんきょう)へ行ってきます。


一人、とぼとぼと歩く水崎(みずさき) (えい)であった。

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