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Grab《グラープ》  作者: たにゅめ
1/2

1:りんご泥棒


りんご泥棒が居た。



僕の住んでる孤児院のりんごを、口笛を吹きながら収穫している。


もちろん見知らぬ少年が。


関わりたくはないが、放ってもおけない。


僕は袖を握り締めた。




「........あ、のぅ」


その声は、枝を切るハサミの音と共に弾け散った。


人見知りが祟っている。


「あのう!!!」


勇気を出して大声を出すと、少年の髪が揺れた。


「ん?なに?」


振り向いた少年は、

太陽の光を吸い込んだような金色の髪、

吸い込まれるような青い目、

オーバーオールに、包帯のようなものを身体中にゆるく巻いていた。


「あの........『なに』じゃなくてですね........」


「ん?」


少年は無駄ににこにこしている。


「泥棒だと思うんです........えっと、それ、孤児院のりんごなので」


「えっ........?うぇっ!?ここ孤児院なんだ!!!」


突然の大声にびくっと心臓が跳ねる。



........わざとらしいほどの大声に。


「立派な木だったから気づかなかったよ〜

『ごめん!』っていんちょー先生に言っといて!」


どこかヘラヘラしてて反省の様子はない。


「自分で言っ」「んじゃ俺はこれで」


食い気味で逃げようとしたので咄嗟に腕を掴んだ。


「いやんえっち」

「同性なんだからこれぐらい許容範囲でしょう」


少年は終始にやにやしている。


「んじゃ俺も仕返し〜」


「ちょっ........」


少年が勢いよく僕の胸に少年が飛び込んで来た。


「わっ........!」


体制を崩して少年に押し倒される。


「こんなので倒れるなんて、随分運動不足なんだねえ〜


........うん?」


少年が何かを発見したような顔になった。



「ねえ、この()........」



「!!!」



血の気が引いた。


鼓動が早まる。




僕の左の二の腕には、生まれつき線が引かれたような痣がある。


押し倒された時に袖がめくれたんだ。


できれば誰にも見せたくなかった。






僕はこれのせいで親に捨てられた。






「この世の終わりみたいな顔してるねぇ」


少年は打って変わって真面目な顔をしている。


「........あなたに何がわかるんですか」


僕は消え入りそうな声で言った。



その途端、少年の表情が引きつった。



少年はおもむろに立ち上がると、


「 あーダルいダルいそういうの!!!!

暗いムード!病んでます感!

だから黒髪ダサメガネなんだよ!

何その巫女風コスチューム!コスプレですか??????あん???? 」


僕を叱った。


いっぽう僕の方は叱られた、というか........


「ダサい言うな!!!!僕のスタイルだこれは!!!!」


キレた。



ダサいは禁句。



「いいんだよそれで!その勢い保ってこ!

明るく生きてこうぜ!()()()()()()()!」


「うるさ........



........え???」


度肝を抜かれた。


この元気で闇のひとつも知らなさそうな少年が?



「ということは君も........」


「そう!俺も........」


少年は にかっ と笑った。





「俺も異能力者なんだ!」




┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


町外れのカフェは、昼にしては空いていた。


「話をするならカフェがいいよね〜

あっ俺はクリームソーダ!

こっちの眼鏡はコーヒーね」


少年は人差し指を立てながら注文をした。


「あの........話というのは........?」


知らない人について行ってしまったという事実に、緊張と反省を隠しきれない。


「本当に、異能力者に、僕に、居場所を与えてくださるんですか?」


「モチのロン!」


少年は自信ありげに微笑んだ。


「その前に自己紹介をしよう!」


少年は机に手をついて身を乗り出した。


「俺はアイザック!『ザック』って呼んでね!」



「アイザックって........


アイザック・ニュートンさんですか?」


「そそ。でもザックって呼んでくれると嬉しいな!」


少年........ザックくんは座りながら言った。


「わかりました」


異能力者にこういう名前のものは少なくない。


それ故に僕もさほど驚かなかった。




「君の名前は?」


ザックくんが軽く首を傾げた。


「僕はアンリです」


僕はほんのり笑みを浮かべる。


「アンリかぁ........いい名前を授かったね」


ザックくんは独り言のように放ち目を細めた。


「まあでも、親につけられた名前ではないんですけどね。

いつの間にかその名前で、いつの間にかそう呼ばれていただけです」



僕が顔を伏せると、ザックくんは「ん?」と

首を傾げた。





「異能力者全員そうだけど?」






「........うぇっ??」



驚いてマヌケな声が出た。


生まれてすぐに捨てられた僕ならわかるけれど、異能力者全員そうだって?


「........どういうことなんです?」


自分の中の常識が軽く覆されたため、

開いた口が塞がらない。


「うははっ!今のアンリすごくあほ面!

いいよ!教えてあげる!」


ザックくんは届いたばかりのクリームソーダのアイスをひとくち食べた。


「異能力者にあるその痣は、元々その人の名前らしいんだよねえ〜。

1歳ぐらいでぼやけて読めなくなるらしいけど」


「へえ........」


コーヒーを飲もうとするが、湯気の時点で熱くて諦める。


「返事もマヌケだねぇ........」


くすりと笑ったその顔が、少し大人びて見えた。


「さてと........アンリ、ちょっと仲良くなったことだし、本題にうつろうか」


「あっそうですね。すみません」


ザックくんはクリームソーダを一気に飲むと、


「ゴホン!俺はアンリに、とある場所をオススメします!」


スプーンで僕の顔の前あたりを指しながら言い放った。


「と言いますと?」


首を傾げると、予想通りと言った具合に話を続けた。


「全寮制で、友達も沢山できる場所........」


怪しげににやりと笑った。





「俺の通ってる異能学校に来ないかい?」






最後まで読んで頂きありがとうございます!

ここからが本番です。

もっとドキワクしていきましょう!

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