本当はヤバイ旧約聖書 どう見ても邪神です
キリスト教信者でもない限り、(俺含む)日本人はあんまり読んだことない聖書。絵画や映画で出てくる、カッコいいシーンしか知らなかった。
物語として普通に読むとヤバイ神である。どう見ても邪神である。
神「オマエラあそこ行って全員虐殺してこい」(コレはひどい。なろう脳で読んでると、カナンの先住民が、盗賊に襲われるエルフ村にしか見えない)
特にやばそうなところをダイジェストにしてみた。
以前ネットで、「悪魔はこれだけしか人殺してないけど、神はこんなに殺してる」みたいな棒グラフをみたことあるけど、こんな内訳だったわけだ。
物理本の厚さに引いてたが、なろうで鍛えられた今なら、ネットの電子版なら読めそう。
第一部
はじめに神は天と地を創造された。
(そうだったん? 「光あれ」が最初かと思ってたわ)
そして始まる6日間の大地の調整。初日に「光あれ」で昼と夜、一日の時間単位ができるまで、それ以前の天と地の創造期間は定かでない。
多分4日目が一番大変。昼と夜、季節や年がわかるしるしのため、太陽と月、ついでに星を造られた。7日目はお休みです。
(時計かよ!)
神「俺様、星の名前全部言えるんだぜ。スゲーだろ」
(星が出てくるのはそれだけかよ! 星の立場低いな!)
「んー動物の世話めんどくせーな。ヒュームでも作るか。コネコネ。地面の土から作ったから、名前は『地面』な。もういっこ作って、こっちは『命』な」
地面「ハイ」
命「ハイ」
「オマエらヒュームは動物の名前でも考えてろ」
「そのへんの果物食っていいぞ。ただし冷蔵庫のプリンは食うなよだ」
(中略)
「テメー、オレは冷蔵庫のプリン(*1)だけは食うなっつたよな! 聞いてなかったのか!」
アダム「つ、妻が食べていいって...」
エバ「へ、ヘビ(*2)が食べていいって...」
神「まずヘビ、オマエは手足なくしてにょろにょろしとけや。あとヒュームと敵対して踏まれてしまえ」
神「女、まず子を産むの大変にしとくから。あとオマエに判断させるとろくなことしねーな。男の言うことだけ聞いときゃいいんだよ。それが罰だ」
(コレが、西洋において男性が女性を支配する根拠に長いことなってたようだ)
アダム「あの、オレは?」
神「オマエには罰はない。ただ地面を呪って、ついでにトゲトゲ植物生やしといたから、こっから出たら苦労するかもな」
(地面と動物はとんだとばっちりである。すごい贔屓を見た)
「とにかく、さっさと出てけ!」
...
「ふーこっちは食われなかったみたいだな。念のため炎の壁で囲っとこ」
「楽園追放」 マサッチオ
修復前 修復後
後年になって付け加えられた葉を除去して、原画に戻した
(中略)
「あー、ヒュームの奴ら、俺の言うこと聞かねーし、子分はヒュームの女とキャッキャウフフとよろしくやって、子供までつくってるしよ。ムカつくわ。ヒュームなんか造るんじゃなかった」
「ただ、コイツは見所あるな。それ以外皆殺しな」
ザバーン。すべて洪水で押し流す。(ここは有名)
「洪水」ミケランジェロ
(中略)
「ヒュームの奴ら、俺様に断りもなく文明なんか作りやがって。プチっとな」(ここも有名)
「ハベルの塔」ブリューゲル
(中略)
「んーコイツも見所あるな。声かけとくか」
「我が力を貸してやろう。オマエの子孫が星の数ほど増えるように、これからオマエは『いと気高き父』と名乗るがよい」
「ただし包茎手術しろ」
「そしたら、子孫を繁栄させたるわ。頑張って|子作りしろよ《産めよ増やせよ地に満ちよ》。オマエらだけな」
(中略)
とある王国に流れ着いた『いと気高き父』とその妻。妻は非常に美しかった。
「おい、その女は何だ」「妹です」
妹と聞いて、『いと気高き父』の妻に色目を使う王。そこに神が力を貸す。
神「おっとそこまでだ。人妻に手を出すのはご法度だな。払うもん払ってもらうか」
王「い、妹だったのでは……」
疫病でバタバタ死ぬ王国の民。(いや罰は民じゃなく王にしろよ)
王「ひ、ひー勘弁してください。なんでも払いますから」
美人局成功(一回目)。
(中略)
また別の王国に流れ着いた『いと気高き父』とその妻。
「おい、その女は何だ」「妹です」
妹と聞いて、『いと気高き父』の妻に興味を持つ王。そこに神が力を貸す。
神「おっとそこまでだ。人妻に手を出すのはご法度だな。払うもん払ってもらうか」
王「まだ色目すら使ってませんが……」
神「今回は、手を出す前に忠告させてもらった」
王「い、妹だったのでは……」
『いと気高き父』「実は妹で妻なんです。兄妹(*3)で結婚したわけでして」「おにいちゃん……」
神「王妃も王女も侍女も召使も、王宮内の女という女は子を産めなくしてある。払うもん払ったら呪いを解除してやろう」
王「ひ、ひー勘弁してください。なんでも払いますから」
美人局成功(二回目)。
(中略)
時がたち、『いと気高き父』とその妻は子を産み、その子も成長した。そして美しい妻と結婚する。
また別の王国に流れ着いたその子とその妻。
「おい、その女は何だ」「妹です」
妹と聞いて、しかし興味を持たない王。
「他国の王から聞いてるぞ。私と王妃の仲は良好でな。貴様の妻には絶対に手を出さない。絶対にだ」
美人局失敗(三回目)。
(中略)
そして『いと気高き父』の子孫と、神(*4)との邂逅。暗闇での格闘。
「え、オマエ、オレ様見て死んでないの? よっしゃマブダチな。『神に勝つ者』と名乗っていいぞ」
(え、普通は死ぬのかよ。『子孫を繁栄させる』っといて、死んでたらどうするつもりだったんだ?)
(中略)
第二部
その後、王国で一時は栄華を味わう『神に勝つ者』とその子孫たち(以下『神に勝つ者』の民)。
しかし時がたち、国王が変わり、他民族である『神に勝つ者』の民を奴隷として扱うようになる。
「あーそういえば、子孫繁栄させたるて『いと気高き父』と『神に勝つ者』に約束してたの忘れてたわ。(2:23)」
(神は見守ってるんじゃなかったかよ! 奴隷になってからもう王が何代か変わってるよ!)
王宮で育った男、マシャ。しかし彼は赤子の時に王女に拾い上げられた奴隷の子であり、マシャと名付けられた。
二コラ・プッサン
彼は長じたのちに出生の秘密を知り、奴隷を助けるために、思わず王国兵士を殺してしまう。逃亡生活を続けるマシャ。
かくして神は、『神に勝つ者』の民の中から、たまたま神のいた場所に通りかかった運の悪いおっさん、マシャに目を付ける。
「おい。俺様はオマエの先祖に約束した神だ。約束の地に連れてってやるから、『神に勝つ者』の子孫連れてこい。オマエがリーダーな」
「え、えっと、どちらさんで?」
「|先祖《アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神》に約束した神だつってるだろ、先祖の名前も知らねーのかよ。そうだな、俺様なんでもできるから『何にでもなれる者』とでも呼んでくれ」
「い、いや、私、く、口下手なもので、とても民を導くなんて……」
「そんなん口が上手い奴にやらせとけばい-だろ。魔法が使えるようにしてやって、奇跡の杖やるから、コレで奇跡を行って連れてこい。とにかくオマエがヤレ」
「でも……」
「オマエいい加減にしろよ。ブチコロすぞ」
「Burning bush」セバスチャン・ブルドン
(中略)
そして始まるマシャ VS 王国宮廷魔術師との魔法大戦。河は血になり、モンスターが召喚され、疫病が流行り、空は暗闇となった。さらに、王子、王国全土の民の長子と家畜の長子が変死する。
神の力により、王国の王は既に神に操られていた。
「エジプト第七の災い」ジョン・マーティン
「エジプト最後の災い」エラストゥス・ソールズベリー・フィールド
変死
「もういいから出てってくれ」
かくしてマシャは『神に勝つ者』の民を連れ、約束の地へと旅立つ。王国の民衆から略奪してから出ていくのは忘れない。
この時、『神に勝つ者』の民の家にしるしをつけ、その家は通り過ぎ、それ以外の家からすべて略奪しだので、彼らは毎年コレを記念した祭りをする。イエスが最後の晩餐やってるアレだ。
「最後の晩餐」レオナルド・ダ・ヴィンチ
過越祭り(略奪記念祭)の風景
(王国の民衆側から見るとヒドイ。「お頭、あの時は略奪でぼろ儲けでしたね」という山賊パーティみたいだ)
しかし海辺に近づいた時に王国の追手が! 王は既に操られてるので、完全にヤラセである。マシャが脱出したトコでワザと追いかけさせ、さらにギリギリのトコで助ける。
「見た? 見た? 今のカッコよかったろ? こんなん俺様にしっかできねーだろ。コレで俺様の凄さが王国の奴らに分かったろ?」
「The Crossing of the Red Sea」二コラ・プッサン
「Pharaoh's army engulfed by the Red Sea」Frederick Arthur Bridgman
(神の凄さを見せつけるためだけのために、大地を荒らされ、王子と民の子と家畜の子が死んだ、王と王国は完全にとばっちりである)
(中略)
約束の地の近く。もちろん|先住民が住んでいる《カナン人、ヘテ人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人》。
神「オマエラあそこ行って全員虐殺してこい」
(コレはひどい。なろう脳で読んでると、カナンの先住民が、盗賊に襲われるエルフ村にしか見えない)
(中略)
「あ? 、ダレが偵察しろなんて言った? 俺様がいつそんなこと言った?」
「偵察に賛成した奴はダレだ? オマエか? オマエもか?」
「俺様が力を貸してやるつってんのに、勝手に偵察へ行ったってことは、俺様の力を信じてねえってことだな。ああ?」
「連帯責任で、全員40年の放浪だ。約束の地へ行けるのは、偵察に反対したやつと子孫だけ。偵察に賛成した奴は野垂れ死ね」
(これもヒドイ。偵察は戦争の基本では? という人間の理屈は神には通じない)
マシャ「え? 俺も? 40年? 放浪?」
(モーセもとばっちり。この辺から、モーセが無茶ブリ上司の下の中間管理職に見えてくる。経験者は胃がキリキリしてくる)
放浪中「こんなハズじゃなかった」「王国の奴隷の方がマシだった」「オマエが連れ出したせいだぞ」
マシャにぶー垂れる『神に勝つ者』の民。
マシャ「ちょ、おま、オレがどんだけ苦労してると。神に聞こえたらどーすんだよ」
神「聞こえてんぞ」「言った奴は死ね」どんどん減る『神に勝つ者』の民。
(中略)
「もう放浪やめて、このへんで畑でも作って住めば都だよ」「肥沃そうだな」「んだんだ」
マシャ「ちょ、おま、シーッ」
神「聞こえてんぞ」「言った奴は死ね」またどんどん減る『神に勝つ者』の民。
(中略)
「あー腹減った」「ホント腹減った」「クソ不味い神の食物しかねーし」またぶー垂れる『神に勝つ者』の民。
神「ほー、腹が減ったと」「俺様が用意したメシが不味いと」「すまんな気づかなくて」「よっしゃ、オレ様がウマイモンを腹いっぱい食わせてやろう」
「やったーさすが神」「まさに神」「ステキ! 抱いて!」「肉だー」手のひら返す『神に勝つ者』の民。
「もうおなかいっぱいだ」「こんなに食べたのは久しぶりだ」「肉だー」
「んー、聞こえんなー。腹が減ってたんだろ。もっと食べろよ。まだまだあるぞ。ホラ、俺様が食わせてやろう」
「ちょ、ン、ムググ.....」 ..... 「パーン」 さらにどんどん減る『神に勝つ者』の民。
(中略)
マシャ「もうこれ以上、言うこと聞かない民を率いていくのは(心の声:もっとワガママな神の言うこと聞くのは)、私には無理です。いっそ殺してください」(血涙)
神「んー聞こえんなー」
神と『神に勝つ者』の民に挟まれ、マシャの中間管理職な日々は続く。
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嘘予告
聖なる山の山頂で、神との契約をするマシャ。(約束の地と完全に逆方向だよ)
神「……でな、俺様を祀るときは、こーゆー祭壇で何センチ何ミリでこういう飾り付けて……」
マシャ(なげーよ。こまけーよ。誰だよ十個とか言った奴)
(俗に十戒と呼ばれてますが、613個もあります。しかもバージョン3くらいあります。600x3 = 1800 。読めるか!)
その時、麓で待ちきれない『神に勝つ者』の民が勝手に祭りを始める。祀り方の違う祭りに神は大激怒。
神「……アイツラ言うこと聞かねーし、もう皆殺ししてオマエ(マシャ)の子孫だけでよくね?」
マシャ「ちょ、ちょっと待ってくださいよ」
(だったら、板挟みであんなに苦労した40年の意味は? 最初からそうしろよ)
マシャ「祭りした奴ら、私が責任をもって殺しときますんで、皆殺しはご勘弁を。参加してない民は助けてやってください」
ダッシュで麓へ。
参考地図:エジプトから見てカナンは右上の湾、シナイ山は中央下の突起部にある、
補足
*1)善悪の実
「知恵の実」という言い方もされますが、どちらが正しいのかわかりません。どう訳すかで、訳者の思想、読者の印象が変わります。
*2) ヘビ
当時のユダヤ教解釈では「そりゃヘビに咬まれたら踏み潰すだろ」(ユダヤ人の歴史家 ヨセフス)
キリスト教解釈では、このヘビは悪魔サタンの化身で、人類を堕落させるための罠、騙された女が原罪。ヘビが踏まれるのは、後に人類の子孫として生まれるイエス・キリストが、将来悪魔サタンを滅ぼす予言だそうな。
個人的にはこじつけすぎだと思う。なお旧約には「反対者」は出てきますが、「悪魔」は出てきません。
SF解釈では、主神の奴隷にされてる人類を憐れんで、一部の神が知恵を授けた、となります。初出は知りませんが、ギリシャ神話では、人類を憐れんで火を与えたプロメテウスが主神ゼウスに罰せられるので、その辺りか。
ネタバレになるので名は出しませんが、王道ファンタジーかと思ったら最後SFで、人類を助ける神と思ってたのがヘビ相当の宇宙人、モンスター(ここでいうトゲトゲ植物)生みだしたラスボスが主神相当の宇宙人、てのがありました。
*3) 兄妹
旧約聖書を記述しているヘブライ語では、兄妹・義兄妹・従妹が同じ語なので、どれか不明
*4) 神
キリスト教では「み使い」「天使」と訳されてますが、原文では神と同じ語。いっぱい神が出てきて、神々の会議とかもあります。一神教というより一心教(オレ様だけを一心に愛せ)。
神のお気に入りを天使が勝手に殺しかけたら、神から懲罰モノだと思うので、ここでは神としました。
「ヤコブと天使の戦い」ドラクロワ (部分)
以前ネットで、「悪魔はこれだけしか人殺してないけど、神はこんなに殺してる」みたいな棒グラフをみたことあるけど、こんな内訳だったわけだ。
旧約の神は、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム教の全ての母体になっています。
中東でなんで紛争ばかりしてるか、わかった気がします。
国連が決めた土地ではなく、神が決めた土地を攻め滅ぼさないと神に殺されちゃんだもん。
愛を謳うキリスト教の国が戦争ばかりしたり、原住民を滅ぼしたりする理由も。
「旧約聖書を読めば世界がわかる」みたいな本が既にありそうな。
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2か月近く0ptで沈んでた作品の突然の人気にビックリ。読んでくれた方、評価してくれた方、ありがとうございます。
この後どうしよう。
1. 連載にして「嘘予告」の続き。全部やるとエタるので、とりあえずモーセ五書、約束の地につくまで目標。
2. 新約聖書にツッコミ
3. 古事記にツッコミ