第8話 不良生徒に絡まれる
「ははは、元ミルドレスの奴が来るって聞いたから、どんな奴かと思えば」
「黒髪とはなぁ、ははは」
こいつら、自己紹介していた時、笑ってた奴らだな。
同じクラスの奴らだ。
髪の色は白髪と青髪と金髪の男子生徒3人。
白と青はこの時代では、1番優秀とされている髪の色。
金髪は、2つに次ぐくらい、優秀とされている色だ。
この学院では、恐らく優秀な方なので、いきがってるんだろうなこいつらは。
こんな奴らの相手をする必要はないな。
俺は無視して行こうと思い、クルツを見たら、びくびくと震えている。だいぶこいつらにビビってるみたいだ。
「行くぞクルツ」
俺はそう言いながら、クルツの腕を掴み、行こうとした。
「おっと、どこに行こうとしているんだ?」
白い髪の男子生徒が通せんぼする。
「飯食いに行くんだよ。邪魔だからどけ」
俺は、通せんぼして来た男子生徒を、睨みつけながら言った。
「お? この黒髪、このギーシュ様に楯突くつもりか?」
「ははは、この学院に来たばかりで、ギーシュが、学年じゃトップクラスの実力の持ち主だって、知らねぇだろうからなぁ」
「分からせてやるか?」
「まあ待て。おい黒髪! さっきの無礼な発言、ごめんなさい、もう2度と言いませんギーシュ様と、言ったら許してやる。さあ言うんだな」
はぁ~。
こいつら馬鹿な奴だなぁ。
程度が低すぎるっていうか。
ミルドレス魔法学院の奴らは、ハブっては来たが、絡んでは来なかったから、まだよかった方なのかもしれんな。
しかし、前世の知識を得る以前は、こんなこと言われたらへこんでたかもしれないが、今は何とも思わんな。
逆に言った奴らが、哀れに思えてくるくらいだ。
「ル……ルド。ギーシュ達は本当に強いから、謝っておいた方がいいよ。僕も一緒に謝るからさ」
クルツが小声でそう言って来た。
そうだなぁ。
変に騒ぎを起こすのも何だから、謝るのもありではあるが……
でも、俺もプライドがゼロって訳じゃない。
ここまで馬鹿にされて、大人しく頭は下げれんだろ。
「いいから、どいてくれ。腹減ってんだこっちは。これ以上邪魔したら実力行使するぞ」
「あぁ?」
「ル、ルド!?」
俺がそう言った瞬間、ギーシュは俺を睨みつけ、クルツは驚いて目を見開き俺の方を見た。
「お前、今何つった?」
「どけって言ったんだよ。最初からそう言ってるだろ? 邪魔なのお前ら」
「……」
俺の言葉を聞いたギーシュは、無言になりピキピキと額に青筋をたてる。
あーだいぶ怒ってんな。
「どうやらお前には、自分の立場ってもんを分からせてやる必要があるな」
ギーシュは少し下がり、そして、
「火よ、この手に集い……」
呪文を唱え出した。
まじか。魔法使う気なのかよこいつ。
この呪文はフレイムだ。
フレイムは、火属性の下級攻撃魔法。
下級とはいえ、当たったら無事では済まない。
仕方ない、相手から喧嘩を売って来たんだ。
実力行使だな。
俺はある魔法を無詠唱で使った。
そして、
「敵を……がっ!」
呪文が最後まで唱えられる事はなかった。
俺が素早く動き、ギーシュの顎を殴ったからだ。
「ギーシュ!」
「何だ今のは!?」
ギーシュは俺に殴られ気絶した。
ちょっと力の加減を間違えたな。
詠唱を止めるだけにするつもりだったが、気絶させてしまうとは。
「てめぇ何をした!?」
「素早く動いて、素早く殴っただけだ。気絶させるつもりは無かったがな」
「馬鹿を言うんじゃねー! 魔法使いがそんなに早く動けるわけがねぇ!」
「動けるんだから仕方ないだろ。お前らそいつ連れて、さっさとどっかいけ」
俺は睨みをきかせてそう言った。
ギーシュの取り巻きの男子生徒2人は、さっきギーシュがやられた所を間近で見ていた為、怯んだ。
そして、ギーシュを連れて逃げるようにこの場を去って行った。
「凄いね! ルド! 何してるか見えないくらい早く動いてたよ! 魔法使いなのに、凄い身体能力を持ってるんだね!」
クルツが感心したように言ってきた。
ちなみに俺は運動は苦手だ。
さっきの動きは、身体能力を強化する魔法、《フィジカルアップ》を使ったからできたのだ。
現代には、身体能力を強化する魔法は存在しない。
だから、無詠唱で唱えても魔法を使っているとは思われず、凄い身体能力を持った奴だと思われただけで済んだ。
まあ、魔法使いで高い運動能力を持っている者は、かなりレアだから、そういう意味では不自然に思われたかもしれないが。
ちなみに、身体能力を強化する魔法は、前世の時代では、結構ポピュラーな魔法だった。
過去ではほとんどの魔法使いが使っていたようだが、現代ではそんなありふれた魔法すら失われてしまっている。
何があったらこうなるんだろうと、魔法技術が失われた理由に若干興味が湧いてきたな。
どうやって調べればいいのかはわからんがな。
「じゃあ、飯食いに行こうぜ」
「うん」
俺とクルツは昼飯を食べて、その後、実技の授業が始まった。