第6話 編入試験
「私はウルベルト・ロシュテス。アルバレス魔法学院の教師だ。よろしく」
門番に連れて来られた男、ウルベルトは、仏頂面のまま俺に握手を求めてきた。
「ルド・アーネストです。こちらこそよろしくお願いします」
俺はそう言いながら、握手を返した。
軽く握手をして、すぐ離した。
手を離したあと、ウルベルトは値踏みするかの様な目で、俺を観察してきた。
「黒髪だね」
「はい。ウルベルトさんは白髪ですね」
「黒髪でミルドレス魔法学院にいたという事は、筆記が得意なのかい?」
「ええ、得意ですよ」
「ふーむ。そうか」
ウルベルトは顎に手を当て、悩む。
「よし、決めた。君には筆記試験と実技試験を受けてもらうから、それに受かったら編入を許そう」
「本当ですか!」
おお、試験を受けられるみたいだ。
試験を受けられさえすれば、多分受かる、きっと受かる。
「まずは実技だ。付いてきたまえ」
「はい!」
俺は元気な声で返事をして、ウルベルトの後を付いて行った。
○
「さて、まずは実技試験を行う。単純に魔法の威力を測る。4属性の下級魔法である。《フレイム》、《アイススピア》、《サンダーボルト》、《ロックニードル》の魔法をこの計測板に打ち込んでくれ」
金属の板が目の前にある。
計測板だ。
あれに向かって魔法を放てばいい。
さて、魔法だが。
俺は詠唱して魔法を撃つと、威力が弱まる。
ただし、無詠唱で撃つと確実に騒がれる。
ここで1つ方法がある。
無詠唱で魔法を発動させながら、あたかも詠唱して魔法を使っているよう見せる為、呪文を唱えながら魔法を使う。
無詠唱で魔法を使う時と、詠唱して魔法を使う時とでは、全く別の回路を使って魔法を発動させる為、無詠唱発動させている魔法を、あたかも詠唱して発動させているように見せるのは可能であるのだ。
やってみよう。
まずは無詠唱魔法を発動させる。
思い出したのは知識だけではなく、魔法の使い方のコツや感覚なども思い出しているようで、魔法を使うのにはまるで苦労はしなかった。
発動すると同時、カモフラージュの為の詠唱をする。
「《火よ、この手に集い敵を焼け》!」
最初に使ったのは《フレイム》の魔法。
俺の手のひらから、強烈な火の玉が飛び出し、計測版に当たり、爆発した。
ここまでの威力の魔法を撃ったのは初めてだ。
「……なんと……」
アルベルトが、驚きながら俺の魔法を見ていた。
「今のは計測結果を見るまでもなく、高威力だと分かる。君は本当にミルドレス魔法学院を、退学させられたのかね」
「ええ、そうですが……」
「信じられん。黒髪の者がこのレベルの威力を……ミルドレス魔法学院のレベルはかなり上がったのか?」
ちょっと威力を強くしすぎたみたいだな。
優秀な生徒に見られるのは問題ないが、不信感を持たれるのは避けたい。
今度は少し弱めに魔法を使うか。
「じゃあ、続いて魔法使います」
「う、うぬ」
続けて魔法を使った。
だが、うまく威力が調整できず、強い威力になった。
どうも、経験や感覚は思い出してはいるが、体が変わった影響か、まだそこまで魔法を操りきれてないみたいだ。
ウルベルトがあんぐりと口を開けて、俺が魔法を使う様子を見ている。
「これは……うぬ。素晴らしい……筆記試験は受けないでいいくらいだが、一応受けてくれ。ただ君なら合格間違い無しだろう」
「ありがとうございます!」
やったー。とりあえず合格したっぽい。
筆記試験は得意分野だ。
普通に高得点を残した。
ウルベルトは満足げな表情で俺の答案を見ながら、合格を言い渡した。
俺はアルバレス魔法学院に編入する事になった。