第59話 一位
メールズ祭二日目。
昨日は闘技場に行ったら馬鹿にされた。今日はして来ないと思ったが、昨日のはたまたまであると思っているらしく、「今日はどうせクズみたいなのが出るんだろ」「調子に乗るなよ」などと言われた。
「今日は私の出番ですわね」
今日行われる競技は的当てである。
事前に聞いた情報では、全部で三十ある的を正確に打ち抜く必要がある。
それぞれ距離と、的の大きさが違い、難しい的ほど点数が高くなる。
魔法を打てる回数は、三十回が限度だ。
広範囲を攻撃するような魔法を使用するのは駄目である。明確にこの魔法を使ってはいけないと明記されていないので、全て審判の裁量次第である。
これもあまり無詠唱魔法を使う必要性は薄い。
というより、よく考えたら無詠唱魔法を使う必要があるのは、迷宮攻略、決闘、陣取りくらいである。ほかにはない。
まあ、教えたのは無詠唱魔法だけではない。色んな魔法を教えた。
例えばこの的当てだって、現代にはない支援魔法、《ロックオン》を使えば、いとも簡単に的当てなど出来るようになる。
対象物に確実に魔法を当てられるようにする魔法である。
ちなみに、前世の時代でも、的当てみたいな競技があり、このロックオンは禁止魔法になっていた。
現代では誰も存在を知らないため、禁止のしようがない。
競技が始まり、アリスはあっさりと三十の的を全て撃ち抜いて見せて、ぶっちぎりで優勝した。
「ば、馬鹿な……」「あ、ありえない……」「三十枚抜きなんて、もしかして新記録じゃないか……?」
魔法は案外狙いを定めるのは難しく、的当てでは百メートルくらい距離を開けるので、ロックオンを使わずに百発百中で当てるというのは、まず無理なのだ。
ロックオンの存在を知らない、観客たちの驚きは理解できる。
あまりにもあり得ない光景に、インチキでもしたんじゃないかと、言われ始めた。
まあ、インチキといえばインチキではある。
この時代の的当てのルールに、反してはいないので文句を言われる筋合いはないんだけどな。
二日目は敵意を持たれる感じで終了した。
翌日になっても、観客の敵意は消えない。
今日は俺が競技に出る日である。
高ランク魔法だ。
ランクの高い魔法を高精度で使う必要がある。
五回魔法を使って、総合得点が一番高い生徒の勝利である。
得点は使う魔法の種類と、精度の高さで決まる。
五人のジャッジがいて、それぞれ十点満点で得点を出す。これはあくまでジャッジの主観によるところが大きい。
その得点を魔法の難易度でかける。
下級なら1倍、中級なら1.5倍、上級で2倍、超級で4倍だ。
採点は主観が絡むので、アルバレスで黒髪の俺は若干不利だが、俺は魔法の難易度を全て超級に出来る。
学院生のレベルで超級魔法は滅多に使えない。使えて一種類だけとなる可能性が高い。五回全てを超級にして、それをちゃんと使えれば流石にジャッジも低すぎる数値は付けて来ないだろうから、勝てるだろう。
競技が始まった。
黒髪である事をまたも嘲笑われる。もう慣れた物なので何とも思わない。
予想通り他の学院の生徒たちは、上級と中級魔法だけを使用する。
超級魔法を使う生徒は一人もいない。
結局最後にやる俺の前まで、超級を使った者はいなかった。
これまで最高得点は、440点。全部上級魔法を使って、全てきちんと決めきった生徒がいた。
まあでも勝てるだろう。
今日のジャッジは見る限り公平だ。
きちんと魔法を使えば、5点以下の点数は付けられない。5点かける5で25、25かける4で100である。100かける5で500なので、440以下にはならないだろう。
俺の番になり、超級魔法をまず使った。
炎属性の超級魔法をドラゴンファイアだ。ドラゴンのファイアーブレスに匹敵するほどの炎を放つ魔法なので、この名がついている。
魔法は当然成功。
観客は度肝を抜かれる。
点数は9、7、6、7、8で37、これを4倍にして、148点ゲットした。
ほかの超級魔法も同じくらいの点数になり、合計764点でぶっちぎりの点数で一位になった。
次の更新はだいぶ開いて、今月29日になります。