第57話 パルノス
十二日後、メールズ祭が行われる二日前。
俺たちは、学院の代表生徒たちと共に、メールズ祭が行われる、パルノスへと向かっていた。
パルノスまではそこまで距離があるわけではないが、なるべく早く現地に到着しておきたいということで、二日前に学院を出た。
出発して五時間ほどで到着。
物凄く大きな都市だった。
今まで生きてきて見た中で、一番大規模な都市である。
大きいだけでなく、美しい街並みで、どこか気品が漂ってくる。町を歩いている人々も、優雅な感じがする。
まず全員で宿に向かう。
男子と女子で部屋は別々に分かれていた。
アリスとミナは同じ部屋になったみたいだ。
俺は一年の生徒がほかにいなかったためなのか、一人部屋になっている。
パルノスに来て一日目は、旅の疲れを癒すため、特に何もせずに終わった。
そして二日目、今日まではメールズ祭も始まらないので、自由に観光していいらしい。
俺はアリス、ミナと一緒に町を歩いていた。
「私は二人きりで観光したかったんですけれどね」
俺の右隣を歩いているアリスが、そう不満を漏らした。
左隣にはミナがいてアリスとしては、二人きりで町を回りたかったみたいだ。
「仕方ないだろ。同学年俺たちしかいないんだし、一緒に行かないとミナが一人になっちゃうだろ」
「分かっていますわ」
理屈では分かっているが、納得はいっていないという感じだ。
「ご、ごめんね、邪魔するつもりはなかったんだけどー」
「ミ、ミナが謝る必要ないよ」
慌ててミナのフォローもする。
パルノスには、色んな店が立ち並んでいる。
男として何か買ってあげるべきだと思ったが、残念ながら俺は金を持っていない。
金の作成で、必要最低限のゴールドは手に入れているが、ほかに何か買う余裕があるほどのゴールドは所持していない。あんまり大量に作った金を売るのも、詐欺をしているようで良心を咎めるのだ。別に偽物の金を売っているというわけではないので、構わないといえば構わないんだけどな。
「あ、ルド君、何か欲しいものない? 私買ってあげる。合宿の時のお礼がしたかったんだ」
ミナがそう言ってきた。
「あれは見返りを求めてやったわけじゃないし……」
「それはそうだろうけど、私の気持ちが済まないの。だから欲しいものがあったら何でも言ってね」
まあ、気が済まないというのなら何か買ってもらった方がいいかもしれないけど。
しかし欲しいものといっても今は特にはないよな……。
と思って店を見回していると、美味しそうなケーキを販売している店があった。
ケーキは美味しいけど、めちゃくちゃ高いごちそうである。以前アリスに食べさせて貰ったが、あれは高すぎて滅多に食べることは出来ない。
ほかにも牛肉料理、魚料理など、色々美味しそうなものが売っている店が、並んでいる。
ここはグルメな店が多くある場所みたいだ。
俺がそれらの店を見ていると、ミナがそれに気づいて、
「美味しいものが食べたいの?」
と尋ねてきた。
俺は頷く。
「じゃあ、どこかのお店に入ろうか! どこでもいいよ!」
と言って俺を引っ張って店の近くに行く。
「ちょ、ちょっと! ルドに美味しいものを食べさせるのは私の役目ですわ!」
アリスも抵抗し始まる。
結局、一流のレストランの料理を、二人の奢りで堪能することになった。
かなり美味しかったが、食べ過ぎて腹が満杯になった。
しかし、俺は男なのに恵んでもらってばかりである。情けない限りだ。
将来は出世して絶対にお返しをするんだと、心に誓った。