第54話 二年に教える
二年生に教えるためには、当然二年生に集まってもらわなければならない。
しかし、俺に二年の知り合いなんていないし、どうやって集まってもらおうか。
普通に誰か二年の人に頼むか?
集めてくれるかなそれで。
もう直接二年の教室まで行ってみるか。
この学院の学舎は三階建であり、一階に一年の教室が、二階に二年の教室が、三階に三年の教室がある。
二年生の人は見たことは何度かあるけど、交流したことは一度もない。
とりあえず行ってみよう。
一人で行くのも何だか、丸く収まるのか分からないので、誰かと一緒に行こう。
俺は、アリス、ミナ、クルツに頼んで、一緒に行くことにした。
「しかし、ルドが二年生にも教えたいって言った時は驚いたなー。素直に聞いてくれるんだろうか話を」
二年の教室に向かう途中、クルツがそう言ってきた。
「全生徒に広めるのが、今の俺の目的だからな」
「え、それ三年にも広めるってこと?」
「そうだ」
「うわー、ますます大丈夫なんだろうか」
「ルドの魔法は画期的ですから、何年生だろうと教わりたいと思いますわ」
「よっぽどプライド高い人じゃない限り、大丈夫だと私も思うな」
ネガティブなクルツと対照的に、アリスとミナはポジティブな考え方をしていた。
まあ、別に悪いことしに行くわけではないんだし、そんなに硬くなる必要はないだろう。
教室にたどり着く。
今は休み時間で、生徒たちはあまりいないが、何人かいた。
近づくと、
「あれ? 君たち一年生? どうしたの?」
と女子の先輩に声をかけられた。
「ほんとだ可愛いー」
「あれ、君黒髪の……ルド・アーネスト君でしょ? 有名だよ君ー」
「ああ、あの時、決闘で凄かった子でしょ? この前の模擬戦でも大活躍したって噂だし、期待のホープって感じ?」
二年女子の生徒が集まってきて、俺に群がってきた。どうも俺の活躍は二年生まで広まっていたみたいだ。褒められて若干照れ臭い感じがする。
「ルド、鼻の下を伸ばしていますの?」
女子生徒に群がられて、若干表情が緩んでいたのか、それを見たアリスがムスッとした表情で俺を見てきた。隣で見ていたミナも笑顔なのだが、何だか怒っているような気がするのは気のせいか?
「え、えーと、今回は用事があってきたっていうか」
「何用事ってー」
「魔法を教えに来たというか……」
「えー?」
女子生徒たちは顔を見合わせる。
あまりにも直球過ぎたか? そう思っていると、
「いいよー、どんな魔法?」
「期待のホープ君から魔法を教えてもらえるなんて、ラッキーだなー」
意外と好感触である。
まあ、この学院の生徒はぶっちゃけそんなに魔法に熱心な奴はいないからな。アルバレスは落ちこぼれが集まる学院だし。
そこまで強いプライドとかないのかもしれない。
俺は彼女たちに無詠唱魔法を教えた。
「す、凄い……」
「これヤバイよね……」
「うん、ヤバイヤバイ」
驚き過ぎて語彙力が下がり過ぎているみたいだ。
「これあたしたちも使えるようになるの?」
「えーと、はい、練習すれば必ず」
「これ使えたら、模擬戦じゃ負け知らずになれるじゃん。教えて教えて!」
必死にお願いしてきた。
「じゃあ、学院終わりくらいに、学舎裏にある練習場まで来てください。あ、そうだ。それと、出来ればこの事、ほかの仲の良い人にも教えてくれませんかね」
「えー、これ私たちだけに教えてくれるんじゃないの?」
「俺は学院全体に広めたいと思っているんです」
「はー」
「それ面白そうだね」
二年の女子生徒たちは頷いて、ほかの同学年の人にも教えると約束した。
こうすれば、そのうち多くの人が教わりにくるはずだ。最初は少ないが、誰かが無詠唱魔法を実際に習得したタイミングで、教わりにくるものが増加するはず。
約束をした俺は二階から降りて、一年の教室に戻った。
【読書の皆様へのお願い】
下にスクロールすると、ポイント評価を付ける項目があります。
PC、iPad等でお読みの方は、黄色い枠で囲まれたところから、スマホでお読みの方は『ポイント評価』の項目をタップして評価に進めるようになっております。
作品を見て面白いと思われた方、続きが気になると思われた方、大変お手数をおかけしますが、評価をぜひよろしくお願いします。
次回更新は今月二十五日です。