表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/59

第53話 呼び出し

 一年生の皆に無詠唱魔法を教え始めて、数日が過ぎた。


 全員がまだ使えるようになったわけではないが、何名かの生徒は使えるようになっていた。


 最初は全員が教わりに来たわけではなかったが、何やら凄い事を俺が教えているという話が流れ出すと、一年生の99パーセントは、無詠唱魔法を教わりに来た。


 生徒達が使い始めると、当然先生にもそれがバレる。


 俺はそれで、先生に呼び出しを食らった。


「君はあの無詠唱魔法を誰から教わったのかね」


 俺を呼び出した先生は、ウルベルトだった。

 編入試験を受けさせてくれた先生である。

 彼は仏頂面を崩さずに俺に問い詰めていた。


 誰から教わったといわれると、前世の自分から教わったという事になる。しかし、そう言っても信じてはもらえないだろう。

 自分で開発したというか。いや、それも信じてもらえるだろうか?

 ただ一生徒が、ここまで凄い魔法を開発したという話は、とんでもない話ではある。

 まあ、しかし、前世から知識を得たという話よりかは、少しは現実に起こりえそうな話ではあるだろう。


「自分で開発しました」


 俺はそう嘘を()いた。

 この時ばかりは、ウルベルトも驚いた様な表情を浮かべる。


「本当か? じゃあ、あれはここの学院の者しか知らぬ事なのか……ふむ……」


 ウルベルトは何やら深く考え込む。


「とんでもない事になったな。これは世界を揺るがす一大事件だ。だが、この学院にとっては、再興のまたとないチャンスである」


 再興か。 

 確かに俺が大魔法大会で、無詠唱魔法をこの学院の生徒が、習得しているということが知れ渡ったら、恐ろしい数の生徒が入学を志願してくるだろう。

 それこそ学院中の優秀な生徒は全て、アルバレスへの入学を希望するかもしれない。

 そうなると、一気にアルバレスは国内、いや世界で最高の魔法学園になるだろう。

 逆に、ミルドレスなどの人気のある学校は、滅びの一途を辿っていくと思われる。


「しかし、君が自分でそれほどの魔法を開発するような生徒だったとはな……なぜ君みたいな天才をミルドレスは手放したのか、理解に苦しむ」


 あくまでミルドレスにいた頃は、ただの劣等生に過ぎなかったからだ。

 少し気恥ずかしい気持ちになったが、結局前世から知識を得たという事は説明するのも難しいため、黙って聞くことにした。


「あの、それで俺はこのまま、教え続けていいのでしょうか?」

「ああ、構わんよ。どんどん教えてやってくれ。ただ、教師が生徒に教えを請うわけにはいかんから、そこは問題ではあるな」

「無詠唱魔法の使い方を知りたいんですか?」

「当然知りたいに決まっているだろう。まさに革命的なとんでもない魔法だ。魔法使いは全員知りたがるはずだ。……しかし、やはり教師が生徒に教えを請うというのはなぁ……君が卒業したあと教わるというのならいいかもしれないが」


 どうもかなり、俺が在学中に教わるということに、抵抗感を抱いているみたいだった。よく分からない感覚であるが、教師のプライドと言うやつだろうか。


「じゃあ、とにかくこの学院で知りたいという人には、全員教えるつもりです」

「そうか、君はほかの学院に行くつもりとかは無いのか?」

「ええ、この学院には感謝の気持ちがありますし、大事な人もいますので」


 ウルベルトは嬉しそうな表情で、それはよかったといった。


 とにかく俺としては邪魔をされないで、済んだので良かった。


 それから、一年生に教え続けて、ほとんどが無詠唱魔法を習得した。

 今度は二年生に教えはじめたいと思う。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ