第50話 事情説明
無詠唱魔法を二人に教えて、数日後。
「出来ましたわ!」
アリスが無詠唱魔法を使えるようになった。
ミナはそれより早く習得していた。黒髪だから習得速度も早かったのだ。
「うーん。出来ましたけど、何だか威力があまり良くないですわ」
「そうだね。私は普通の魔法を使う時より、威力が少しだけ上がったのに、どうしてだろう」
二人は不思議がっている。
「それは、髪色の違いだな。黒髪のミナは詠唱魔法の威力は下がるけど、無詠唱魔法の威力は上がって、逆に青髪のアリスは、詠唱魔法の威力は上がるけど、無詠唱魔法の威力は下がるんだよ」
「そ、そうだったの? それって黒髪は一方的に悪い髪色だと思われてたけど、違うってことだよね」
「うん、そうなんだよ」
「それよりも無詠唱魔法の方が無駄に呪文を唱えなくて済む分、優秀ですし、それが強いということは青髪より優秀ではないですか」
「まあ、無詠唱魔法だと呪文を唱えるより少し威力は落ちるからそうともいいきれないけど」
一応アリスには気を使う。戦闘で活躍していたのは、黒髪だけであるという事実をここは隠しておいた。
「そうですか。しかし威力が落ちても、やはり無詠唱の方が有用であると思いますわ。向いていないとしても、無詠唱呪文は鍛えておいた方がいいと思いますわね」
アリスは別にショックを受けるわけでなく、練習すれば多少向いてなくても強くなれると思っているみたいだった。
俺はアリスほどの努力家なら、体質の壁など乗り越えてしまうかもしれないと思った。
「あのルド君、やっぱりどうしても気になるから聞くけど、何でそんなに知識を持っているのかな? ミルドレスにいた頃は、教えてはくれなかったけど、その頃から知っていたの?」
ミナが我慢できないという感じで、質問してきた。聞きたくなるのは当然だろう。俺だって逆の立場なら質問している。
「いや、ミルドレスの頃は知らなかった」
「じゃあ、いつなの?」
「えーと、退学になったすぐあとかな……」
「あんまり長い期間じゃないよね。どうやったの?」
「…………」
「ごめんなさい話しにくいことならいいの。ルド君にも隠し事をする権利はあるから」
俺はどうするか、悩む。
話しても信じてもらえない可能性が高い。
だが、黙ってい続けていいのだろうか。これは隠し事にし続けておいていいことなのだろうか。
なによりも俺が知っていて欲しかった。アリスとミナの二人には。
もしかして信じてもらえないかもしれないけど、ここは話してみよう。
「分かった話そう」
「本当?」
「え? 話すんですの?」
「ああ、やっぱり秘密にしたままじゃ、俺も二人もモヤモヤするだろ? 信じられない話かもしれないけど、本当の話だ。聞いてくれ」
俺は前世から知識を得たという事を全て二人に話した。
「前世から ……知識」
「そのくらいの事がないとルドのとんでも知識は説明できませんわよね」
「それは、そうだね……」
「でも、普通、時間が経つと技術は進歩するものだと思うのですが、何で退化したのでしょう」
「それは俺もわからない。ていうか二人とも信じたのか?」
なんか普通に受け入れられていたので、俺は困惑する。想像していた反応と違った。
「嘘でしたの?」
「違うよ。でも信じられないような話でしょ?」
「確かに普通じゃありえないような話ですが、ルドの話なら本当でしょう」
「うん、私もルド君の言うことなら信じるよ」
「……そ、そうか」
若干俺は照れた。こんなに信用してもらているなんてな。
とにかくモヤモヤも晴れた。
もっと早く話していればよかったな。