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第48話 どうするか

 合同合宿が終わり、ミナがアルバレス魔法学院に転入してきた数日後。


 時刻は夜、自室のベッドにて俺、ルド・アーネストは考え事に耽っていた。


 考え事の内容は自分の知識についてだ。

 

 前世から、高度な魔法の知識を手に入れている俺。

 この知識はなるべく人に伝えないようにと、決めていたが、果たしてそれでいいのだろうかと悩んでいた。


 理由はミナがミルドレスで受けていたいじめだ。

 黒髪は、今の時代では劣等であると言われているが、前世の時代ではもっとも優れている髪の色だと言われていた。


 俺やミナ以外にも、黒髪の者は大勢いるが、今もどこかで黒髪の者たちがミナと同じように、いじめを受けているかもしれないと思うと、何だか怒りがこみ上げてくるのだ。


 仮に俺が無詠唱魔法などを広めていけば、黒髪の評価は上昇して、いじめになど遭わなくなるだろう。


 しかしそうすると、世界は大きく変革してしまう。

 まさに魔法革命、と言ってもいい事態が起こるかもしれない。

 それが原因で、下手すれば大勢の人間が死ぬかもしれない。


 それを考えると、広める勇気が持てないでいた。


 俺のやっていることって、正しいのか?


 進んだ知識を自分だけで、使ってそれで……。


 頭の中で何度問おうと答えるものなどどこにもいないのに、俺は問いかけ続け、いつのまにか眠りについた。



 ○



「ルド、寝不足ですの?」


 座学が終わり、昼。

 アリスにそう尋ねられた。


 昨日ほとんど寝れなかったので、朦朧とした意識で授業を受けていたのだが、アリスには気づかれていたみたいだ。


「うん。昨日寝れなかったんだ」

「そうですか。もうちょっとちゃんと寝ないといけませんよ」


 アリスに叱られた。

 まあ、昨日はちょっと考えすぎた。

 最近、自分の知識をどうするかばかりを考えてしまっている。

 結局、結論は現状維持になるんだが、それでも何回も考えて考えてしまう。

 馬鹿みたいだが、どうしても何か間違っているような、そんな気がしてならないのだ。


「あの、その、それでルド。実はお弁当を作ってきたんですけど……一緒に食べません?」

「お、お弁当!? 食べる食べる!」


 アリスの魅力的な提案に、一気に目が覚めた。

 俺も彼女にお弁当を作ってきてもらえるようになったのか、生きててよかった。


「ルド君ー」


 背後から声をかけられた。

 ミナの声である。


 振り向くと、ミナが。

 合宿中は暗かった彼女も、転入してきてだいぶ明るくなった。

 髪も少し伸びた。もっと伸ばすと本人は言っている。


「お弁当作ってきたんだー。一緒に食べない?」

「な、何ですと!?」


 ミナの爆弾発言を聞き逃せなかったアリスが、


「ルドは私のお弁当を食べるのです! あなたは別の人と食べてください!」

「うーん。でもルド君のために頑張って作ったから」

「そ、それは私も同じです! ほかの人に食べさせたくないのなら、自分で食べなさい!」


 と言い争い始めた。まあ、争っている感じなのはアリスだけで、ミナはニコニコしているが。


 しかし男子の視線が痛い。

 普段は温和なクルツが、まるで激怒したゴブリンのような表情でこちらを睨んでいる。

 涙を流して睨んできている者もいる。

 このまま、こいつらの前でこのやりとりを続けさせたら、いずれ暗殺者に俺の暗殺を依頼するものが出てしまうかもしれない。

 それは怖かったので、


「どっちとも食べるから。ミナもせっかく作ってくれたのに、食べないのは申し訳ないし」

「……ルドは優しいですわね」


 アリスは、少し怒りながらそう言ったが、それ以上文句を言ってこなかった。


「うんうん、食べて!」


 俺は結局二人の作った弁当を食べることになる。

 ものすごく美味かったが、あまり量を食べる方ではない俺には少し多すぎた。

 残すわけにもいかないので、気合いと根性で、平らげた。





次回更新日は今月十三日です。

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