第47話 結果
「それでは調べてみたいと思いますが……まあこれは調べるまでもないですね」
調べる前に先生がそう言った。
見るからに陣は赤く染まっているから、俺達の勝ちは調べる前から分かっているような感じだった。
「それでも一応調べないといけませんね……」
マスは全部で1000ある。
数えた結果、
「アルバレス912、ミルドレス59、ハルレーン29。アルバレスが1位、ミルドレス2位、ハルレーン3位です」
アルバレスの生徒達から大歓声が鳴り響く。
「それで最終の順位を発表します。アルバレス500点、ミルドレス420点、ハルレーン283点。1位アルバレス、2位ミルドレス、3位ハルレーンという結果となりました」
そう発表された瞬間、さらに大きな歓声がアルバレスの生徒達から鳴り響いた。
○
その日の夕食時、最終戦に参加したメンバー、特に俺が囲まれていた。
「いやーやべー」「まさか1位とな」「先生に聞いてみたけど、1位になったのは十年ぶりらしいぞ」「アルバレス黄金期の頃以来か」「俺達の代で黄金期くるんじゃね?」「まあ、黄金期っていうかだいたいルドのおかげなんだけど」「ベリルフォーランさんもやばかったぞ。何十人倒したんだ今回は」
とザワザワと勝利の余韻に浸っていた。俺としてはミナの元に報告に行きたいが中々抜け出せない。
「そういえば、個人賞としてルドが1位だったけどお金貰ってたよね」
順位が発表されたあと表彰式が行われた。
1位のアルバレスの学院の生徒にはそれぞれ、有用な魔道具が送られて、皆、喜んでいた。
最優秀選手に選ばれた俺は、金を貰った。結構大金で嬉しい。しかし、合宿の最優秀選手で金がもらえるとは、やっぱり中々注目度のある合宿なんだよな。
「お金なんに使うの?」
「貯める」
「堅実だなー」
そんな感じで会話をしていると、
「おい、ルド、何かミルドレスの女子生徒が用事があるってよ」
「そういえばルドってミルドレスにいたんだってな。友達か?」
ミナだ。
向こうから来てくれたんだ。
「うん、友達だ。ちょっと通して」
「ああ、分かった」
俺は囲んでいる生徒達をかきわけて、ミナの元に向かった。
「あ、ルド君」
「ミナ」
予想通りミナがいた。
「初めまして私、アリス・ベリルフォーランと言います。ルドの婚約者ですわ」
といきなり後ろからアリスの声が聞こえて、俺はびっくりして振り向く。
後ろには、綺麗な姿勢でお辞儀をするアリスの姿があった。
「こ、婚約者……」
ミナが衝撃を受けているようだ。
「ア、アリス? 婚約者って……」
「……あら、違いましたの?」
「い、いや。違わないです」
婚約の約束をした覚えはないけど、付き合っているということは、そういうことと思ったほうがいいのかもしれない。
「婚約者がいても……妾になれば……」
何かミナが恐ろしい事をボソッと呟いた気がする。うん、気のせいだな。たぶん気のせいだ。
「あ、その。私はミナ・ハーライトです。よろしくお願いします」
ミナも挨拶を返した。
「ハーライト? 男爵家ですか。貴族出身なのですね」
「はい。ベリルフォーランさんの家と比べると、格が数段落ちますけど」
「いえいえ、家柄で人間の価値は決まるわけではないですから」
アリスは嫌味で言っているわけではないが、人に嫌味と取られそうなセリフだな。
ミナは嫌味と取ったわけでは無いようなので、よかったけど。
「あの、ルド君。約束どおり勝ってくれてありがとう。何とか実家に行って、アルバレスに転入できるようお父さんを説得してくるね」
「うん」
「出来なかったらもう賢者になる夢を諦めるかもしれないけど、絶対に説得してくるから。待っててね」
そういうミナの目に、以前までのネガティブな感じはなかった。元々彼女は明るくいい子なのだ。その雰囲気が戻ったようだ。
「……あの。彼女はアルバレスに転入してきますの?」
「うまくいけばね」
「そ、そうですか」
先ほどまで毅然とした態度だったのに、転入してくると聞いてアリスは動揺し始めた。
そんなに不安なのかな。
「じゃあ私行くね。アルバレスに通えるようになったらよろしくね。ベリルフォーランさんもその時はよろしくお願いします」
そう言ってミナは去っていった。
あとは祈るだけだな。
そして、翌日、合宿は終わり、俺達は学院に帰った。
その一ヶ月ほどあと、
「ミルドレス魔法学院から転入してきたミナ・ハーライトです。よろしくお願いします」
ミナが転入してきて、俺達の教室でそう挨拶をした。
2章終了です。
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