第46話 競技開始
その後、俺達は作戦を立てる。
まず、1番強い俺とそれから何名かの生徒で高所を取る。高所を取れば、高い位置から敵を狙撃する事も出来るため、魔法を撃つ速度よりも命中率が高い生徒を高所を取るメンバーに選んだ。
そして高所を取った後、高所の守備を固める役。ひたすら陣を魔法で取っていく役。相手を行動不可能にする役に分ける。
相手を行動不能にしていく役に、俺がフィジカルアップの魔法をかける10人を選んだ。
陣を取るのも大事だが、やはり相手を動けなくするのが非常に重要だ。フィジカルアップをかければ、かなり対人戦では有利に立てる。
競技前に球が配られてそれを胸の辺りに取り付けた。これに魔法を当てられると行動不能になるらしい。
そして競技開始十分前、俺はフィジカルアップをかけると決めた10人を少し遠くの方に呼び出して、フィジカルアップをかけた。
そして競技開始五分前
「事前にマジックアップ等の魔法をかけるのは、当然反則ですので、チェックしていきます」
といい、チェックされる事になった。
まずはハルレーンからチェックが行われ、その後、ミルドレスとチェックをしていき、最終的にアルバレスをチェックする。
「……よし、問題ないようですね」
俺の予想通りチェックに引っかかる事はなかった。たぶん引っかからないだろうと思っていたけど、やはり緊張はしたな。でも問題ないようで安心した。
そして、競技が開始される時間になった。
まずフィールドに入ったあと、真ん中にある高所に代表者が行き、握手をして挨拶などをしてから、各自初期位置に戻って開始されるらしい。
ハルレーンからレミエス、ミルドレスからフォルス、アルバレスから俺が代表者として行った。
「よろしく。まあ個人戦では君に敗北したけど、学院対抗では確実に勝つだろう。結局一位はミルドレスだということを覚えておきたまえよ」
フォルスがそう言って握手を求めてきた。昨日はかなりショックを受けていた様子だったが、持ち前の傲慢さが戻っている。
「よろしく。そうだね。アルバレスは全体的にそこまでレベルは高くないからな」
俺はそう言って握手を返した。ここは油断させておいたほうがいい。わざわざ自分達の強さを宣伝する必要は無い。1対1の戦いではなく学院対抗になるわけだから、ハルレーンに注意を向けてくれるかもしれない。
「っち。俺を無視しやがって」
レミエスが俺とフォルスを睨みながらそう言った。
「だってハルレーンが1位になる事はもう点数的に無理だからなぁ」
ハルレーンとアルバレスの点差は100以上ある。最終競技で得られるポイントは1位200、2位150、3位100なので、ひっくり返すのは不可能だ。
「言っておくがてめーらを潰せば二位にはなれるんだからな」
「そのためにはハルレーンが1位で、アルバレスが3位になる必要があるね。あっはっはっは。中々厳しいんじゃないの? 君達が1位になるのもミルドレスが2位になるのも、難しそうだ」
「っち、ぶっ殺してやるよ」
その後、レミウスとも握手をして俺達は自分の学校のスタート地点に戻った。
そして、
「それでは、最終競技陣取りを開始します」
先生が合図の音魔法を使い、競技が開始された。
俺は合図と共に、一気に真ん中のタワーを目指す。陣を取るための魔法は一切使わない。
全力で走ると物凄いスピードが出る。
観客としてみている生徒達が、「なんだあいつはえー」「あの黒髪、魔法だけじゃなく身体能力もやばいのかよ」と感嘆の声を上げる。
その後、俺がフィジカルアップをかけた生徒達もその身体能力を観客に見せ付ける。
「ちょ! 早すぎねぇ!?」「何だあいつら!?」「やべー!」
と観客がざわめき出した。
俺はタワーに到着。
タワーには鉄の梯子が取り付けられている。これを伝って登ればいい。
俺は梯子をするすると登り、タワーの頂点へ。
まだ誰もいない。
タワーを取る役は何処も実力者みたいで、レミエスとフォルスが来るのが見える。
とりあえず狙いはミルドレスだ。ハルレーンはこの際、後回しにしてもいい。
どうせこの競技で2位になろうともハルレーンが俺達の順位を上回る事はない。
俺はフォルスに狙いを定め執拗に魔法を放つ。
さすがに魔法の使い方が上手く、上手い事防御魔法を張って防いでいる。俺に下から反撃してくるが、すべての攻撃を俺は避ける。
最終的に防御魔法で防ぐのが遅れて、胸の球に魔法が命中。
フォルスはこれから5分ほど動けなくなる。
その後、レミエスも足止めをしながら、回りの様子を確認する。
見てみるとフィジカルアップ組が猛威を振るっていた。ものすごいスピードで動いて、敵を翻弄し魔法を撃って、次々に動きを止めていっている。
中でもアリスがやばい。
彼女は元々凄い精度で魔法を使えた上に、フィジカルアップを使っているので、まさに鬼に金棒。完全に無双状態で次々に敵を無力化していく。
そして、敵が完全に混乱しているうちに、俺以外の高所から攻撃するメンバー6人がタワーに登って来た。
魔法を高所から乱れ撃ちにする。隙を作っている者を見つけては正確に魔法を放ち、行動不能にする。
そして、動ける人間が少なくなっているあいだに、陣を取る役目の生徒達が着実に陣を取っていく。
上から見ていると分かるが完全に押していた。
競技開始から20分ほど経過して、8割くらいの陣が、俺達の色である赤に染まっていた。
高所から見ていて、ミルドレスの生徒達が隅に集まっているのが見える。
この高所を取る事はこういうメリットもある。敵の動きが筒抜けになるのだ。
「ミルドレスの生徒達が右上隅でなんかやってるぞ! 潰せ!」
俺は高所から命令を出す。フィジカルアップをかけた者たちが、一斉に動いてミルドレスの生徒達を潰しにかかる。
作戦を遂行する前に行動を潰され、ミルドレスの生徒達はなすすべもないようだ。
その後も一方的な展開で進んでいった。
そして、
「二時間経過しました! 終了です!」
と競技の終わりを先生が告げた。