第41話 対フォルス
フォルス戦が始まった。
「君はかなり強いみたいだからね。ここでは出し惜しみせずに使わせてもらうよ」
出し惜しみ? どういうことだ?
フォルスは呪文を唱える。
この呪文は……上級魔法!
こいつ上級魔法使えるのか。そうか。
俺は今回上級魔法は使っていない。本気で戦うといったが、上級魔法を使うのはさすがに反則に近いと思っていたからだ。魔法学院の1年生は中級魔法しか習わない。
それなのに俺だけ上級魔法を使って、勝つのはさすがに卑怯な気がして、気が咎めたのだ。
しかし、相手が使えるのなら話は別だ。
気兼ねなく上級魔法を使うことが出来る。
「ジャッジメント・サンダー!」
フォルスが使った魔法は雷属性の上級魔法、ジャッジメントサンダーだ。
俺は魔法の発動に合わせて、上級魔法の魔法障壁、サンダーガードを球の前に張り攻撃を防ぐ。
「何!?」
あっさりと自分の放った上級魔法が防がれて、フォルスは驚愕する。
「君も上級魔法を!? 馬鹿な!」
「使おうと思えば使えるよ。じゃ、今度は俺の攻撃だな」
フォルスは上級魔法は使えるといっても、まだ完全に使い慣れていないみたいだ。その証拠に呪文も遅いし、魔法の威力も上級魔法にしたらあまり強くない。
まあ、上級魔法を使えるだけでも大したものだと思うのだが、残念ながら俺には勝てない。
俺は素早く正確に上級魔法を使う。使った魔法はギガントアーム。ハロルド戦の時に使った土属性の上級魔法だ。
フォルスは防御に上級魔法を使う事は出来ないようだった。
そのため、俺のギガントアームを防御しきれない。
フォルスの後ろの球に、直撃する。球の色が一気に、赤に近づく。だが、まだ完全な赤色にはなっていない。
「馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿な! 馬鹿な!」
フォルスは俺が上級魔法を使えるという事を、受け入れきれていないようだった。
もはや戦えるような状態でないくらい、動揺していた。
これはもう楽勝だと思った俺は、適当な中級魔法をフォルスの後ろの球めがけて撃った。
あっさりと魔法は球に直撃して、フォルスの球は赤色に染まった。
「勝者、アルバレス魔法学院のルド・アーネスト!」
そう審判をしていた先生が宣言した時、アルバレス魔法学院の生徒たちから大歓声が上がった。
○
「いやー決闘でも1位になれるなんて。ルドはやっぱりすごすぎる」
「今、全学院の中でも一番すごいんじゃないのかルドが」
勝利のあと俺はアルバレスの生徒たちに囲まれていた。勝った後すぐ約束通り、ミナの事情を訊きに行こうとしたが、俺は取り囲まれるし、フォルスは負けたショックで何やら俯いて震えているし、訊きに行けるような状態ではなかった。まあ、夕食のとき聞けばいいか。
「ルド」
「あ、アリス。勝ったよ」
「あの……私との決闘のとき、ルドは上級魔法使いませんでしたわよね……? 本気で来ると言ってましたのに」
何やらアリスは怒っているようだ。
「いや、あれはさ。ほら、皆、まだ上級魔法習ってないのに、俺だけ使うのは反則技みたいなものかな? って思ったんだけど……学院で習った魔法の範囲の中で本気を出すって意味だったんだけど」
「はぁー。ルドと私の本気の定義が大きく違ったようですわね。まあでも、あれを私との決闘で使われてたら一瞬で負けてたと思いますので、よかったと言えばよかったですか……釈然とはしませんけど」
少し怒ってはいるようだったが、許してはくれそうだ。
その後、結果発表が行われた。
1位、アルバレスの俺、2位ミルドレスのフォルス、3位アルバレスのアリス、4位ハルレーンのレミウス、5位ミルドレスの生徒、6位ミルドレスの生徒、7位ハルレーンの生徒、8位アルバレスのミョーリーン、という結果になった。
これでアルバレスに入るポイントは200、ミルドレスに入るポイントは140、ハルレーンに入るポイントは65ポイントとなった。
結果1位アルバレス300点、2位ミルドレス270点、3位ハルレーン183点となった。
「アルバレス1位になったじゃん!」
「すげーなこんなことあるのか」
「ハルレーン全然低いな」
「あいつら俺たち馬鹿にしてきてたのに、大したことないでやんの」
1位になりアルバレスの生徒たちが嬉しそうな表情でそう言った。
ほかの学院の生徒は悔しそうな表情で俺たちを睨んできている。
「だいたいルドのおかげだけどねー」
クルツがそう言ってきた。
「今回はアリスもミョーちゃんも頑張ったよ。俺だけいい結果残しても、残りの二つには勝てないからな」
「だねー。僕もいい結果出せればいいんだけどねー」
クルツは少し申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「えー、それでは今日は解散するまえに、今合宿で行う、最終競技の説明をいたします。最終競技は全員でやるわけでなく、選抜して行うので、今日そのメンバーを話し合って決めてください」
最終競技は選抜なのか。何をするんだろう。
「最終競技は学院対抗での陣取りです」