第4話 魔法の知識
前世の知識から、現代の魔法技術はものすごく遅れているということが判明した。
どう遅れているのかというと、現代は絶対的に魔法の数が少ない。
修行法などが正しくない。
魔法は呪文を詠唱しなければ使えないとされているが、実際は無詠唱でも使うことが出来る。
そして、黒髪は決して劣等ではないらしい。
それどころか、どちらかと言えば優秀らしいのだ。
黒髪が劣等とされていたのは、魔力の質が悪いからというのが定説だが、これは間違っている。
そもそも魔力に質なんてものはない。あるのは種類だ。
魔力は種類によって、どんな使い方をすればうまく使えるのかが決まっている。
例えばこの時代、優秀とされている、白や青の髪色を持つ者達は、呪文を詠唱して魔法を使うことに向いている。
黒髪は無詠唱で魔法を使う事に向いている。
現代では詠唱しなければ、魔法は使えないと思われている。無詠唱で魔法を唱えるという概念は無い。
黒髪は詠唱して魔法を唱えると、逆に威力が落ちてしまう。
そのせいで、黒髪は現代では劣等として、扱われているのだ。
この無詠唱魔法が得意と言うのは、本来かなり優秀な特性なのだ。
実際、戦闘においては、黒髪の者達以外、ほとんどいなかったっぽい。
わざわざ詠唱して魔法を使うより、無詠唱で使ったほうが素早くて、強いと言うのは言うまでもないか。
しかし、前世の時代に比べると、現代の魔法技術は物凄く衰退してしまっているな。
多分だが、俺の予想だと200年くらい遅れてる。
なんでこんなに遅れることになってしまったのかは、分からないが……
何だろうか、この知識を得てしまったら、学院を退学させられたとか、なんかどうでも良くなってきた。
あー色々考えてたら、頭がまた痛くなって来た。
顔洗って飯食ってそれから考えよう。
俺を洗った後、宿にある食堂で飯を食った。
◯
さて飯を食ったら、だいぶ落ち着いたか。
あーそもそも俺は魔法学院を退学になって、賢者になれなくなったって、絶望してたんだよな。
でも正直よく考えたら、この知識があれば夢である賢者には普通になれそうな気がする。
と言うのも、魔法の使い方まで分かるし、効率的な魔力の上げ方とか、いろいろ知ってるし。
そう考えると、今の状況はめちゃくちゃいいのでは?
前世のクラウドには感謝しないといけないな。
ただ賢者になるには、魔法学院を出ているのが必須だ。
国に仕えている魔法使いの中から、大きな功績を残した者が、国王から賢者の称号を与えられる。
国に仕えるには魔法学院を卒業しないと、難しいだろう。
今は入学の時期ではないし、編入となると、難易度が上がるが、試験を受けさせてもらえば、受かる自信はある。
ほとんどの学院は黒髪と言うだけで、実力を試されるまでもなく、門前払いされるだろうけどな。
でも一応行ってみるか。
それと、この魔法技術の知識のこれからの扱いだ。
前世の知識の中にあった魔法技術には、知られたら大きな魔法革命が起こるかもしれないほど、革新的な物がある。
無詠唱で魔法を使える、というものそうだ。
知られたら、根本から現代魔法の常識を覆す事になりかねない。
どんな影響はあるかは分からないが、下手したら大きな戦争が起きて、大勢の人が死ぬかもしれない。
確かにこの技術を世間に知らしめて、ちやほやされたい気持ちもないわけではないが、さすがに俺の持っている知識のせいで、人がたくさん死んでしまうというのは嫌だ。
なるべく隠しながら、賢者になりたい思うが……
でも、そうなると、無詠唱で魔法が使えなくなるのか。
あ、いや、そうでもないか、いい方法を思いついた。
この方法なら、バレないな。
よし、世界を変えるレベルの、革新的な魔法技術は隠した状態で、賢者を目指そう。
賢者を目指すというのなら、やる事は1つ。
どっかの魔法学院に入ろうじゃないか。
あ、でも金がないや。返してもらった入学金あるけど、あれじゃあ足りない。
知識の中に、石を金に変える魔法があった。これを使えばある程度、金は稼げそうだな。
現在の魔力量では、たいした量は作れんけど、入学金くらいなら何とかなる。
……後この魔法が知られたら、金貨の価値が変わって大変な事になりそうなので、よっぽど金が欲しいとき以外は使わないようにしよう……
そう心に誓い、その辺に落ちている石を拾って、魔法を使いそれを金に変えた。
その金を近くにある店で換金した。