第3話 前世の知識
時刻は夜。
宿に行き考えをまとめていたが、うまく纏まらなかった。
レベルの低い学園に行くにも、冒険者で魔法使いの1人としてパーティーに入るのも、俺のやりたい事では無かった。
俺が今まで魔法を勉強して来たのは全て、賢者になるためだ。
賢者はこの国、レーノルド王国ではもっとも名誉ある存在。
彼らの華々しい活躍を聞くたび、胸を躍らせていた。
いつしかなりたいと思った。いつだったかは覚えてすらいないほど昔の話だ。
賢者になれないなら、魔法を勉強する意味なんてもう……
でも、俺には魔法しか取り柄がない。
学院では落ちこぼれ扱いされるような、魔法以外に俺は何の取り柄も無いのだ。
はぁ~……と俺は大きなため息を吐く。
結局いい考えなんか出ない。
夜も更けて来たし、今日はもう寝よう。
俺はベットに入り眠りにつこうとした。
すると突然。
強烈な頭痛が襲って来た。
「っ!?」
まともに声も上げられないほどの、強烈な頭痛。
俺は頭を抑えベットから転げ落ちた。
何だ何だ!? 何だこの頭痛は!?
ここまで強烈な頭痛は生まれて初めてで、軽くパニックになる。
頭痛は一向に治まらず、痛みはさらに増してくる。
そのまま俺は痛みで気を失った。
◯
気付いたら朝になっていた。
床に倒れて寝ていたため、体の節々が痛い。
何だったっけ昨日は……
そうだ。強烈な頭痛が襲ってきて……そのまま気を失ったのか。
もう頭痛はしない。
何だったんだあれは。
俺は体をゆっくりと起こして、立ち上がる。
少しずつ頭が覚醒してくる。
……あれ?
何だ違和感がある。
うまく言葉で言い表せないが……
何だろうか、 今まで知らない事が頭にあるというか。
どういう事だ?
転生? 術式? クラウド・レーブン? 無詠唱魔法? 優秀な属性?
何だか知らない聞いた事の無い言葉逹が、頭の中をぐるぐるぐるぐると回り出す。
パニックになりそうになる俺だが、1度深呼吸。
冷静に、慎重に、自分の頭の中にある記憶を探り出していった。
数分後。
俺は全てを理解した。
俺は前世で得た知識を思い出したらしい。
順に説明しよう。
俺の前世は魔法使いのクラウド・レーブンという男だったらしい。
クラウドは魔法を研究し、魔法の為に生きたような男だった。
ただし、最後の魔法に研究を終える前に、不治の病にかかってしまう。
クラウドはもし寿命のうちに研究が終わりそうになかったらと、事前に転生の魔法を開発していた。
転生し来世に生まれ変わるという術だ。
クラウドはそれを使ったのだが、その魔法はおそらく失敗した。
本来は人格から何からまで思い出していたはずだが、俺が思い出したのは知識だけ。
クラウドからしたら残念だろうが、俺としては人格が奪われなくてよかった。
それでここからが大事な所なんだが。
どうやら、クラウドがいた時代は今の時代より、もの凄く前らしく。
それこそどれくらい前かもわからないほど、前っぽいんだが……
どうやらその時代の魔法技術は、今より遥かに進んでいたようなんだ。