第25話 合同合宿
アリスと付き合い始めて二週間ほど経った……が。
この二週間付き合ってから二人で何かしたという事は無かった。
というより、前よりも何だかギクシャクするようになったというか。
何だか付き合っているという意識をしてしまうと、どうにも喋りづらくなってしまって……
あいさつや、簡単な会話程度はするんだけど、何か恋人らしい事をしたかというと、皆無だった。
さすがにこのままじゃいけないと思い、夕食を食べているとき、クルツにその事について相談してみた。
すると、
「ルドって結構へたれだよね」
と、返された。
「へ、へたれってどういうことだよ!」
「そのままの意味だよー。恋人同士になっているのにどうして遠慮する必要があるのさ。好きに声をかけて好きにどこぞで楽しくやってればいいじゃないか」
クルツは何だかむすっとしながらそう言った。
基本ニコニコしている人のいいクルツだが、何故こんなにも不機嫌そうな表情をしているんだ?
「何でそんなに機嫌悪そうなんだよ」
「あのね……正直、贅沢すぎる悩みにしか聞こえないから」
「な、何だって?」
「ぎくしゃくしてるとか言ってるけど、いつも教室で名前を呼び合った後、10秒くらい見つめ合っては、顔を赤らめて目をそらす所とか見てると、僕みたいなモテない男は、ふざけんなよ、としか思えないんだけど」
「う……」
クルツから恨みのこもった目でそう言われた。
まあ確かに恋人のいない人から見たら、ムカつくかもしれないけど……
「クルツってモテないの?」
「全然モテない」
「女子と話してる所、良く見るけど」
「友達だから、恋人じゃない」
「友達から恋人になれない?」
「無理。僕の事、男としてみてないっぽい」
あー何となく分かる気がする。
何か優等生な感じは出てるけど、男って感じが無いからなぁ。
「そうかー」
「ど、どうやったらモテるようになれると思う?」
そんな事、聞いてきた。
いや、そんな事、俺に聞かれても困るんだがなぁ……
「……うーんそうだなぁ……筋トレするとか?」
「ま、魔法使いなのに筋トレ!? いや、どうだろうか……うーん……しかし、筋肉があれば男としてみてもらえるかもしれないし……」
ぶっちゃけ適当に言ったが真剣に悩んでいる。
ムキムキなクルツを想像して思わず笑ってしまう。たぶんこれはモテない。やっぱ違う気がすると言って訂正しておいた。
その後も、聞かれ続けて結局、俺の相談のはずが、クルツの相談になってしまった。
○
翌日。
俺は教室に向かっていた。
昨日あれこれ考えたが、まあ、結局答えは分かっている。
俺が勇気を出してデートかなんかに誘うしかないのだ。
今日誘う。絶対誘う。何があっても誘うぞ。
そう決心して俺は教室に入る。
教室に入り自分の席へ、いつも通り隣にはアリスが座っていた。
「お、おはようアリス」
「おはようございます。ルド」
さて、いつ誘うか……今誘うか……
いや……ちょっと待て、誘うって何に誘うんだ?
しまったぁ! 何かに誘おうとだけ考えて肝心の何に誘うかを全く考えていなかったぁ!
不覚! いや、馬鹿か俺は!
うーん……何がいいんだろう……何に誘えば……お花畑とか……?
「どうしたんですのルド」
「な、何でもないよ!」
「そうですか」
心配そうな顔をしてアリスが話しかけてきたので、慌てて何でもないと言った。
うーん、どうしようか……
僕が悩んでいると、教室のドアが開き、ミローネが入ってきた。
「皆さん、おはようございまーす」
元気良くミローネが挨拶をした。生徒達も挨拶を返す。
「今日はお勉強の前にー、一週間後に行われる学院合同合宿の説明をしまーす」