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第23話 お礼

「ルド! 明日は休日ですわね! この前のお礼をしたいので、お時間頂けませんか!?」


 座学が終わった瞬間。

 アリスは、だいぶ気合の入った表情で、そう言ってきた。

 お礼をしたいとは前から言われていたので、それはいいのだが、妙に迫力のある誘い方に、俺は少し戸惑う。


「お、お礼か。何をしてくれるんだ?」

「それは当日に話しますわ」

「あ、そう」

「明日の朝、学院の門付近に来てください。1人で来てくださいまし。絶対、必ず、1人で来るのですよ?」

「わ、分かった、分かった。1人で行くから」


 1人で来いと念を押された。


 学院の門に来いってことは、町に行ったりするのかな。

 2人きりで出かけるのか…………

 な、何だか緊張して来たな。


 今までも2人きりになった事は何度かあるが、魔法を教えたり、ポーションを一緒に飲む為だった。


 お礼をするって事だけど、外に2人きりで遊びに行くようなものだよなぁ。

 それってもしかして、デートって奴なのでは?

 いやいや、俺とアリスは付き合ってるって訳じゃないし……


「じゃあ、よろしくお願いしますわ」

「う、うん」


 そう言って、アリスは立ち去って行った。


 俺は明日の事が気になりすぎて、そわそわしながら、1日を過ごした。


 そして、翌日。


 朝、門の辺りに行くと先にアリスが来ていた。

 キョロキョロしながら、落ち着かない様子だった。


「おはよう、アリス。ごめんね待たせちゃって」

「ル、ルド! おはようございます! さっき来たばかりなので、待ってなどおりませんわ」


 いや、さっきキョロキョロしてたから、だいぶ待ってたんだろう。

 気を使わせてしまったようだ。


「今日はどこに行くの?」

「町の方に行きますわ」


 俺とアリスは一緒に近くにある町に向かって、歩き出した。




 ◯




「ルドは編入して来て1ヶ月ほどになりますが、この町にはどのくらい行きましたの?」

「ポーションの材料買うためにたまに行ってたけど、町を練り歩いた事はないね」

「そうなのですか! では、私が案内して差し上げますわ!」


 そう言って、アリスは俺をオススメの店や、面白い物が売っている場所などに案内してくれた。


 アリスは張り切って案内してくれるのだが、俺は気になって仕方がないことがあった。


 メイドが、


 メイドが俺達の後を付けて来ているのである。


 そのメイドは鋭い目つきで、俺をじっとにらんできている。

 アリスは気付いていないみたいだ。


 あのメイド、おそらくアリスのメイドだと思う。

 主人が心配になって付いてきたのか。


 ああやってずっと睨まれると、何かまずい事でもしてしまっているのか、このままで大丈夫なのか? と気になっていしまい、俺は集中できないでいた。


 俺悪いことしてないよな? いや、確かに少し喋りが詰まらないかも……一緒にいて退屈させているのかも。

 いや、これはお礼なんだし俺が頑張らなくても……

 でもなぁ……


「あの、ルド……私と一緒にいてつまらないですか?」


 アリスがそんな事を不安げな表情になりながら言って来た。


「え!? いや、そんな事ないよ! 楽しいよ!」


 慌てて俺は否定する。


「でも、何だかつまらなそうな表情ですわ……」

「そんな事ないって! 楽しいよ! ははは!」


 楽しげに笑ってみせる。

 アリスは表情は晴れなかったが、「次は楽しませてみせますわ」と気合を入れ直していた。


 いかん、俺とした事が、余計な事を考えていたばかりに。

 いやでも、俺のせいじゃないし、あのメイドが……


 と思って俺はメイドの方をチラリと見る。

 すると、先程よりも表情を険しくしていた。恐らく俺がアリスに、つまらなそうにしていると思われたことを怒っているのだろう。


 いや! あんたのせいだからな! 怒るならそっとしておいてくれよ! 付いてくるなよ!


 そう思ったが、迫力のある目つきに負けて何も言えず。

 なんとか気にしないようにしようと心に決めて、歩き出した。


「ここは色んな魔法具が売っている店ですわ。何か気にいるものがあるかもしれません。今日はお礼なので私が買ってあげますわ」


 少し怪しげな雰囲気な店に着いた。

 アリスの言う通り、色んな魔道具が置いてある。


 こんな店があったのか。


 アリスは買ってあげると言っているが、少し申し訳ないな。

 まあでも、安めの物だったらいいかな。


 俺はアリスの一緒に店内を見て回る。


 お、これは。


 気になる物を発見。

 虹色石だ。虹色に輝く石で、綺麗に形が整わされている。


 虹色石は、持っている者の魔法への耐性を、僅かにあげるという効果がある。

 本当に僅かなので、魔法具としてより、宝石として価値がある。


 だが、俺の前世の時代では、非常に便利な魔法具を作る為の材料となるので、かなり価値が高かった。

 町の店に置いてあるような品物ではなかった。


 その魔法具はすぐにでも作りたい物だ。

 まあ、虹色石があればそれだけで作れるというわけではないが、ないと絶対に作れない。

 買えるなら買っておきたい。


 俺は値段を確認してみる。


「高っ」


 思わず声が出た。

 前世の時代ほどの値段ではないが、それなりに珍しい石である為、普通に高い。

 1ヶ月分の食費くらいの値段がする。


 これを買って貰うのは、流石に高すぎる。

 後で金稼いで買おう。


「ルドはこれが欲しいですの?」

「え? や、まあ。でも高すぎるし」


 アリスが値段を確認する。


「何だ。安いではありませんの。 買って差し上げますわ」

「え!? いや高いでしょ!」

「全然問題ありませんわこのくらい」

「いやいや!」


 俺は買わなくていいと主張したが、アリスはお構いなしに虹色石を買った。


「はい」

「あ、うん、ありがと」


 虹色石を俺は受け取る。

 なんか嬉しさより申し訳なさが大きい。


「正直これだけで十分お礼してもらったと思うんだけど」

「何言ってますの! これからが本当のお礼ですわ!」


 アリスはそう言った。本当のお礼って何だろうか。


「ルドもうすぐ昼ですし、お腹空きましたよね」

「え? うーん、そうだなぁ……」

「空きましたよね!」

「あ、うん。空いた空いた」

「では一旦学院に帰って、お昼を食べましょう」

「え? 帰るの?」


 休日に食堂はやってない。

 昼は寮食が出るのだが、俺は外出するからいらないと言って出てきたのだが。


 どうする気なのか分からないが、俺はとりあえずアリスと一緒に学院に帰った。


「私の寮まで行くので付いてきてくださいまし」

「へ? 寮? 女子寮だよね。男子は入れなくないか?」

「許可を貰ってきたので平気ですわ」


 アリスがそう言うので、俺は付いて行く。

 普通の女子寮とは違う場所にあり、かなり大きな建物だった。

 アリスによると、身分の高い貴族のみが住んでおり、大きな建物なのに4人しか住んでいないらしい。

 基本一般人には入れないが、許可を取れば入っていいらしい。


 俺はアリスの住んでいる部屋に通された。


 どんな部屋だろうとだいぶ緊張して入ったが、魔道具やら何やらが置いてある。女の子っぽい感じの部屋ではなかった。

 まあ、それでもアリスの部屋って事で、やはり緊張はしているのだが。


 所で本当のお礼と言ってたが、この寮で豪華な食事でもご馳走してくれるのかな?

 と俺は思っていたら、


「私が今からルドに料理を作ってあげますわ!」


 とアリスは力強く宣言した。


「アリスって料理できたの」

「ええ。一応習わされていたので」


 へー。

 でも料理作ってくれるのか。

 女の子手料理食べられるなんて……正直初めてだな。


「今から寮の厨房に行って作って参りますので、適当に寛いで置いてくださいまし」

「うん」


 アリスが部屋から出て行く。

 うん、と言ったものの、アリスの部屋で1人きりにさせられるとは。


 俺は部屋を見回す。


 この部屋でアリスは生活してるんだなぁ……

 俺の座ってる椅子も、アリスがいつも座ってるんだろうか。などと考えてしまう。


 ……この部屋のどこかにアリスの……


「お嬢様の下着ならあちらのタンスにございますよ」

「のわっ!」


 後ろからいきなり女性の声が聞こえてきた。

 俺は慌てて振り返る。


 先程町で俺達を監視していた、メイドだった。


「さ、さっきの!? いつの間に!?」

「先程気付かれないよう入りました」


 気付かれないようって、さっき町では俺にはバレバレだったじゃん!

 

 メイドは表情で俺が何を言いたいのか察したみたいで、


「ああ、町ではわざと気付かせていたのです」

 

 と言ってきた。

 そうだったのかー……いや何だその技術は。

 このメイド何者だ。


「私、アリスお嬢様のメイドのヘレンと申します」

「ル、ルド・アーネストです……」

「先程も言いましたが、アリスお嬢様の下着の入ったタンスはあちらにありますよ」

「い、いや何言ってるんですか!? 聞いてないでしょそんな事!」

「しかし、気になっているという表情をなさっていたので」

「い、いや気になって……は……うん」


 正直、多少頭の隅をかすめていました。


「ああ見えて、アリスお嬢様はすごい下着を履いていますよ?」

「す、すごい下着!?」


 や、やばいちょっと妄想してしまった。

 すごい下着ってどんなだ……


 いやいや駄目だ!

 俺は首を全力でふる。


 アリスは俺の為に料理を作っているんだ。

 ここで見るのは裏切りだ。


「見ません。何と言おうと見ませんよ!」

「興味が無いのですか?」

「興味は……無くは無いです。でも見ません!」

「……なるほど。それなりに信用できる人物みたいですね」


 ヘレンがそんな事を言ってきた。


「試したのですか?」

「ええ、お嬢様のお相手に相応しい人物かどうか」


 お、お相手って、何か勘違いしてないかこの人。

 まあでも、主人と一緒にいる人物がどんな人か気になった、てことだろうな。


「ちなみにお嬢様の下着は凄くないです。無地です。ちなみに私の下着は凄いです」

「その情報はいらなかったです!」

「先程お嬢様の下着が入っていると言ったタンス。あちらには私の下着が入っております。こちらは見たいなら見ていいので、よければどうぞ」

「いや、見ませんからね!」

「では、私はお嬢様の料理のお手伝いをしてきます。手伝うだけで、作るのはお嬢様なのでご安心を」


 そう言ってヘレンは部屋を出て行った。

 変わった人だったなぁ。

 結構綺麗な人でもあったけど。


 タンスには彼女の凄い下着が……


 ……いや、見ませんよ?





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