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第22話 アリスの悩み

 ◯ アリス視点



「はぁ〜」


 教室の中。

 私は右側の席を見ながら、ため息をつきました。


 ルドの席です。

 いつも遅刻ギリギリくらいに教室に入って来るので、今は空席なのですが、もうすぐ来るでしょう。


 あ、来ましたわ。

 見慣れた黒髪の少年が、クラスメイト達に挨拶をしながら教室に入って来て、自分の席に着きました。


「おはよう、アリス」


 ルドは、少し微笑みながら私に挨拶してきました。


「お、おはようございます。ルド」


 私はルドの笑顔を見た瞬間、胸の高鳴りとを感じて、動揺しながら挨拶を返しました。

 ルドはそんな私の様子を不自然に感じたみたいで、


「どうしたの? 顔赤いけど」


 顔を近づけてそう言って来ました。

 ルドの顔が近くに来ると、私は胸の高鳴りは、さらり大きくなり、


「ななな何でもありませんわ!」


 と物凄く動揺しながらそう言いました。

 ルドは「そ、そう」と言いながら近づけた顔を離して行きました。


 うー……絶対変だと思われましたわ。


 最近の私には悩みがありますの。

 何だかルドを見ていると、顔が熱くなって、胸が高鳴って来るのです。

 さらに、ルドがいない所でも、常にルドの事を考えてしまいますわ。


 この前ルドが、ハロルド兄様を決闘で倒した時くらいから、こうなっております。


 原因は分かりません。謎ですわ……

 もっとルドとは普通に接したいですのに。


 悩んでいると教室にミス・ミローネが来ましたわ。

 座学が始まりましたが、私はほとんど集中出来ませんでした。


 授業はちゃんと集中してやらないといけないのに、どうもルドの事が気になって……


 ちらりとルドの方を見てみると、何だか退屈そうに授業を聞いているように見えます。

 ルドにはこの学院の座学が物足らないのでしょうか?

 あれだけ色んな知識を知っているから、当然ですか。


 座学が終わりお昼の時間が近づいて来ます。


 その時間になると、クラスの生徒達がルドをお昼ご飯に誘いに来ます。

 決闘に勝ってから、ルドは人気者になったのか、ずっと周りからチヤホヤされています。

 チヤホヤされるだけなら良いのですが……


「アーネスト君! 今日はあたしとお昼食べよう!」

「駄目! 今日は私と食べるんだから!」


 女生徒達がルドを取り合うように言い合っています。

 言い合うだけでなく、ルドの手を引き合ったりもしております。


 何だかその様子を見ていると、胸の奥がもやもやとして来ますの。


「みんなで食べようよ、クルツも一緒にさ。あ」


 ルドは私を見て、


「アリスも一緒に食べに行かない?」


 そう言って来ましたわ。

 本来なら行くと即答すべき所なのですが、胸の奥のもやもやが邪魔をして、


「結構ですわ」


 と少し厳しめの態度で言って、私は教室を出て行きました。


「なにあれー」「感じわるーい」


 と去り際に女生徒達が言っているのが、聞こえました。


 確かにその通りですわ……今のは無礼な態度でした。

 何故あんな態度を……

 私は頭を抱えながら考えますが、よくわかりません。

 胸のもやもやがそうさせたとしか……


 今から謝りに行きますか……しかし、胸のもやもやは、まだ晴れません。このままの状態でちゃんと謝れる自信はありませんわ。


 はぁ〜何なんでしょうこれは……


 誰かに相談したいですわ。


 私には友人がおりません。

 この事が相談出来そうな人物は、1人しかおりませんわ。


 今度相談してみましょう。



 ◯




 実技の授業が終わり、私は寮に帰りました。

 私が住んでいる寮は、普通の方々と違う寮です。


 1部屋1部屋が大きく、設備も充実している、身分の高い者だけが入れる寮に住んでいますの。


 私は普通の寮でいいと言ったのですが、「お前もベリルフォーラン家の端くれだ。平民や下級貴族と同じ寮には住まわせられん」と言って、この寮に入れられました。


 私は寮の中に入って、自分の部屋に帰りました。


 部屋の扉を開けた瞬間、


「お帰りなさいませお嬢様」


 と、メイドのヘレンが綺麗な姿勢で、お辞儀をしながらそう言いました。


 ヘレンは幼い頃から私のお世話をしているメイドで、この学院に来る時もついて来ましたの


 何でも出来る優秀なメイドですわ。


 色々知っていますし、今まで何度も相談に乗ってくれました。

 ヘレンが私が悩みを相談出来そうな唯一の人物ですわ。


「ヘレン。少し相談したい事があるのですが、よろしくて?」

「ご相談ですか。お嬢様のお力になれるなら、どんなご相談にも乗りますよ」

「ありがとうヘレン。実は……」


 私はヘレンに悩みを打ち明けました。


 ヘレンはそれを聞いて、僅かに微笑みながら、


「お嬢様、それは恋でございますよ。お嬢様はアーネスト様をお好きになられたのです」

「そう……恋ね……恋!?」


 私はヘレンの言葉を聞いて仰天しましたわ。


「恋って、あの恋ですの!? わ、私がルドを好きに!? そ、そんな事って……」

「話を聞く限りそうとしか思えません。お嬢様は魔法に夢中であらせられたので、色恋には無縁でありましたので、ようやく初恋をなされたのです。私、感無量でございます」


 ヘレンは感極まったようにそう言いました。


 恋ですか……この私が……

 確かにルドには助けられましたし……

 ルドを見てると、胸が高鳴るのも、他の女性と一緒にいると胸がもやもやするのも、全て


「ルドに恋をしていたからだったのですね……」

「ええ、そうでございます」

「恋をしたら……その、どうすればいいんですの?」


 全く恋愛の経験などないので、私は戸惑っております。


「それは、相手にアプローチして、好きなので男女交際をしたいと告白すればいいのです。まあお嬢様は誰よりもお美しくあらせられるので、お嬢様に言い寄られて断る男性などおりません。なので、すぐにでもお気持ちを伝えるのがよろしいかと」

「え!? そ、それは……断られないって言ったけど、ほ、本当なのですか?」

「ええ、仮に断ったら、私がアーネスト様の目を覚まさせてあげます」

「な、何をする気なのですか!?」


 ヘレンが物騒な事を言っております。


 ……でも、そうですわね。

 ルドは私の事どう思っているのかしら。

 嫌われてはいないとは思いますが、女性として好かれているのでしょうか?

 私は他の女性のように愛想良くも出来ませんし、今日みたいにルドに冷たく当たる事もございますわ。


 ……好かれてなんていないのではないでしょうか?


 何だかそう考えると落ち込んできましたわ。


「私は多分ルドには、女性として好かれておりませんわ……告白しても恐らく断られます」

「そんな事、絶対にありえないと思うのですが、何故お嬢様は好かれていないと?」


 私は自分がルドにとってきた態度を話しました。


「なるほど……確かにお嬢様は少し愛想が悪くはありますね。しかし、今からでも遅くはございません。元々愛想が悪い人の時折見せる笑顔は、破壊力が100倍にも増すのです」

「は、はあ〜」

「お嬢様、私が秘策を授けます。まず今度の休日、アーネスト様を誘って、どこかに行くのです」

「ル、ルドを誘うって!? どうやって誘えば……どこかとは何処ですか?」

「誘い方は何か適当な口実を考えるのです。誘う場所は近くの町を歩き周るとかで、いいでしょう」


 適当な口実ですか……

 そうだ。この前お礼をすると言いましたが、まだ出来ていませんでしたわ。

 お礼をすると言って誘いましょう。

 そうなると、お礼として何をするかも考える必要がありますが。


「そして、肝心の秘策ですが……」


 その後、私はヘレンから秘策を教えてもらいました。

















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