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青春狂想曲  作者: サイレス
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第一章 -少年期 葛藤編-

僕は放心状態で帰路を歩いていた。


たけしに見せられた映像が僕の頭の中で巻き戻しと再生を繰り返していた。


僕は家の前で立ち止まった。


このまま家に帰って何もなかったように一日を終えていいのだろうか?


疑問は確信へと変わり、僕は自分の部屋に置いてある財布を手に


再び外に飛び出した。


母は僕に「ごはんもう出来るよ」と言っている声が遠のき、近くのBOOK-ONに向かう。


BOOK-ONとは、ゲーム、CD、DVD、漫画、単行本、文庫本を扱う大手中古チェーン店である。


僕はここへはよく中古ゲームソフトを買いに来るが、CDコーナーは初めてだった。


洋楽コーナーはアルファベット順で並べられており、


「L」を目指し、早足になる。


漆黒の黒にゴシック体で「London Knights」と文字を見つけ、急いで手に持った。


1950円と書いてあり、財布を確認したら2016円あったのでレジに向かった。


会計を済ませ急いで家に向かった。


帰路の間、まるで背中に翼が生えたように足が軽かった。


自分の部屋のゲーム機でさっそく再生してみた。


しかし、音楽を聴いて唖然とした。


これが「London Knights」なのか? 間違ったのかな? いや、間違ってない!


僕はベッドに買ったCDを放り投げ、近くの携帯ゲームを手に取り電源スイッチを入れた。


コレモンの世界に戻ることにした。



僕は近所のカトーヨーカドーの応接室でスーツのおじさんの二人の前で緊張状態でソファに座っていた。


右のスーツのおじさんが「佐藤君はバイトは初めてなの?」と言ったので


「はい!」「佐藤はバイト初めてであります!」と言ってしまった。


おじさんは苦笑いで手元の履歴書を眺めていた。


同級生世代以外の人と話すのは緊張する。


左のスーツのおじさんは、「まあ、いいんじゃない」を相槌のように何度も言っていた。


一週間後、どうやら合格したようだ!


僕の夏休みに少し刺激が増えた気がした。


仕事内容は、商品の陳列、レジ応援などである。


ただひたすら8月は働いた。9月の給料日が楽しみだ。


夏休み明けの登校日が苦痛でたまらなかった。


クラスの同級生が焼けた肌をし、ピカピカの笑顔を振りまく姿を横目に自分の焼けてない肌を見て


溜息をつくのは目にみえていた。


重い足を必死に前に動かし登校していた時、後ろから肩を叩かれた。


早川たけし「ウッス、そう」

佐藤そう「ウッス」

早川たけし「バンドの準備出来てるか?」


バンドの準備?


早川たけし「俺はもうバイトはじめたぜ!おまえは?」

佐藤そう「・・・俺もはじめたぜ」


まさか、たけしが本気でバンドの話をしていたとは思っていなかったそうは困惑している表情を隠しきれなかった。


早川たけし「おい、そうなんだよ、しけた顔してんなー」っと僕より焼けた肌をちらつかせていた。


僕がバイトを始めた理由はたけしとは違っていたが、少しホッとしていた。


佐藤そう「楽器を買うのも大事だが、メンバー集めも大事な」と少し強気で言った。


早川たけし「わーーってるよ!メンバー集まったあとに担当楽器決めような」


そうはたけしの性格上、バンド結成はすぐに飽きると思っていたので、


まさか、夏休み明けに「バンド」という単語をたけしから聞けるとは思わなかった。


僕たちは対照的な表情で学校へと向かった。


教室からはいつものガヤガヤ声が漏れていて少し安心した。


たけしとはクラスが違うので別々のドアを同時に開いてそれぞれ挨拶をした。


たけしは友達が多いので挨拶がたくさん返ってきたことだろうと思いながら、


僕はいつもの二人の所に向かった。


佐藤そう「おはよう」


内藤たかしと大木たくま「おはよう」とファミ通を回し読みしながら言った。


いつもの二人の肌の色もいつも通りだった。


大木たくま「おい、そう、お前SS(シルバーストーリーの新作買った?」


佐藤そう 「まだ、買ってない」


内藤たかし「おい、まじかよ」こいつの口癖。


大木たくま「はよ、買えや! 俺もう3回全クリしたぜ!」


そうは心の中で浅い溜息をついた。


HRの間、僕が密かに想いを寄せている。鶴井結子(つるいゆいこ)の後ろ姿を眺めていた。


あとの学校の出来事はしょうもないことなので省略させていただこう。


HR終了後、クラスの前の廊下で早川たけしがニコニコして立っていた。


早川たけし「よう、そう一緒に帰ろう!」


佐藤そう「おう」


たけしとの帰り道、話は再びバンド関係の話になった。


早川たけし「俺あれからいろいろ聴き始めたんだ!ビートルズでしょセックスピストルズでしょ」


ビートルズはカトーヨーカドーのBGMで流れているので知っているがセックスピストルズって


なんて!名前だ!


そうの中で衝撃が走る!


セックスってなんて大胆な!


しばらく、たけしが隣で話ていることが聞こえなかったが、


早川たけし「おい、聞いてるか?」という声で我に返った。


佐藤そう「おう、ピストルズな」


たけしのセックスピストルズの発音を出来るだけ似せ、そうお得意の知ったかぶりを披露した。


早川たけし「そう、おまえ洋楽詳しいんだなぁ」と感心していた。


そうは隣で歩いているたけしを遠い存在に感じていた。



そして、給料日!


ぼくは学校から直帰して近くの銀行に走って向かった。


初めてのATM操作を終え、手元には生温かい10万円があった。


よし、まずSSの新作を買って、そのあとセックスピストルズのCDを買いに行こう!


早速札束をもって、近所のBOOK-ONに向かう。


堂々と店内の自動ドアをくぐりゲームコーナーへ


ゲームコーナーで残り1個のSS(シルバーストーリー)の新作が待っていた。


手に取り、ふと思う。


待てよ、ここでまたゲームを買ってしまっていいものだろうか?


そんな些細な疑問が僕を立ち止まらせる。




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