第一章 -少年期 黎明編-
高校一年生の夏、この主人公である僕は自分の部屋のベッドの上でゲームをしていた。
やっているゲームは僕が小学生の頃に流行った「コレモン」である。
「コレモン」とはコレクターモンスターの略である。
要はモンスターを戦わせたり、集めたり、交換したりしながら冒険するゲームである。
僕は特にやることもなく、夏休みの時間を無駄に消化していた。
「ああ、何かやらなくちゃ」とゲームをしながら不意に思いながら
だらだらゲームのストーリーを進めていた。
遠くから電話の呼び鈴がなる。
3コール目に誰かの「もしもし、佐藤です。」が聞こえる。
そして、どたどたとかかとを重心にした足音が近くになり
部屋のドアがノックもせずに開く
「おい、ノックしろって言ってんだろう」と佐藤そうが扉の前の妹に怒鳴る。
妹は不機嫌な顔で「そう、早川たけしさんから電話!(怒)」と言った。
妹に返事もぜずに立ち上がり、妹を横切り電話に向かった。
佐藤そう「はい、もしもしたけしか」
早川たけし「もしもし、そう今何してた?」
佐藤そう「夏休みの宿題してた」
早川たけし「えっ、そう宿題してんの。すげーじゃん」
早川たけし「とりあえず、今からうち来ない?」
佐藤そう「まあ、宿題もだいぶ進んだし今から行くよ」
っとまったくやってもいない宿題の話をして遊ぶ約束をした。
とりあえず3分で着く距離なので何も持たずにたけしの家に向かった。
向かっている途中、日焼けした男女が向うから来た。
僕は直観からくる何かによって物陰(止まっている車)に身を潜めた。
すると僕のクラスの豊川みう(とよかわみう)と江田輝雄だった。
二人は焼けた肌に楽しそうな会話をしながら通り過ぎていった。
僕は自分の中の気持ちのモヤモヤを感じながら、たけしの家に向かった。
ドアの呼び鈴を鳴らし出てきたたけしも肌が焼けていた。
早川たけし「おう、いらっしゃい。入って入って」
佐藤そう「お、お、お邪魔します。」と顔を下に向けながら家の誰かに向かって言った。
玄関の前にすぐある階段をどたどたと二人で駆け上っていった。
たけしの部屋に着くと珍しくたけしの兄貴もいた。
たけしの部屋は二人いる兄貴の真ん中の兄貴と同じ部屋を使っている。
「お邪魔します」とヘッドホンに手をあて音楽に浸っているたけしの兄貴に軽いお辞儀をして言った。
残念なことにたけしの兄貴は音楽に浸るため目も閉じていたため無視される形となった。
たけしの部屋の机にあからさまに一枚のCDが置いてあったので当然のようにたけしに聞いた。
佐藤そう「たけしこのCD何?」
早川たけし「おっ、このCDのためにそうを呼んだんよ!」と何度も頷きながら微笑んだ。
佐藤そう「なんだよ、おれはてっきりSS(シルバーストーリーという大人気のシリーズのRPGゲーム)
の新作を買ったからやらせてくれるかと思ったよ~」
早川たけし「そう、それよりこのCDを聴くんだ。本当すげ~んだって」
僕はたけしが手に持ったCDを眺めた。
真っ黒なジャケットに「London Knights」とど真ん中に白いゴシック体で書いてあった。
うわ~、ロンドンって国だっけ、てかケナイツってなんだよ(笑)
いまいち把握できていない英語が出てきたためあやふやにたけしに聞くことにした。
佐藤そう「たけし、これは?」
早川たけし「これはロンドンナイツのセカンドアルバムだよ」
「ロンドンナイツ?」己の英語力を呪った。
早川たけし「イギリスのロックバンドだよ。そうは洋楽とか聴かんの?」
ってか、おまえと音楽の話一切したことないだろうが」と思いつつ顔をひきつる。
佐藤そう「へぇ~、たけし洋楽聴くんだ。じつは俺も聴くんだ!」
おいー、おれ何言ってるんだ。
早川たけし「おーまじかよー!じゃあロンドンナイツ知ってんのかよー」
っとたけしはとてもがっかりしたようなアクションをしながら悔しがっていた。
佐藤そう「あーロンドンナイツね!イギリスで超人気のロックバンドだろ」っと
出来る限りたけしのロンドンナイツの発音を意識して言った。
早川たけし「知ってるんだったら話は早いな!バンドやらないか!」
バンド?バンドってギターとかドラムとかのバンドか
硬直したそうの顔を眺めながら、落ち着いた表情でたけしは話を続けた。
早川たけし「そう、俺たちの青春って何だと思う?」
佐藤そう「青春?」
青春という言葉を忘れた日は一日もなかった。しかし、リアルで耳にするとなんとも嘘くさい言葉なのだろうと思ってしまった。
たけしは徐々にテンションを上げてしゃべり続けた。
早川たけし「俺の青春は女の子にモテる、歌う、楽器を弾く、音に埋もれることだろ」
モテるとか歌うとかはまだ分かるが、埋もれるってなんだよ
たけしはテレビに接続しているゲーム機にCDのもう一枚のディスクを差し込んで
電源スイッチを押した。
暗い映像とともステージらしき場所に向けられた歓声が響く。
その歓声がステージ上に現れた4人組の影が現れた途端に大きくなる。
そして、ノイズやらアンプの音が聞こえ英語が聞こえる。
おそらく挨拶しているのだろう。
隣で映像を見て微笑むたけしの横顔をみている時にドラムの音がなり響く。
そして・・・。