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9話:騎士団

「おはようございます」


 鈴のようなきれいな声によって僕は目を覚ました。

 ベッドが並び柔らかな光に包まれている部屋。

 ここは……、治療室か。


 そうか、ロッティが魔族を倒した後、騎士のような人達が騒ぎを聞きつけてやってきて。

 魔族の少女。その少女と抱き合っている男。息絶えている魔族の男。

 そんな状況に戸惑いながら僕の必死の訴えもあってかロッティがその場で殺されるようなことはなかった。

 僕の傷もひどく一旦騎士団の治療室に運ばれることになったんだった。


「ロッティは……、ロッティは無事なんですよね?」


 僕は震える声で起こしてくれた女騎士さんに問いかける。


「そのことで騎士団長からお話を聞かせてほしい、とのことです」

「わかりました。僕はいつでもいいので早めに話させてください」


 体が痛むが気にしてられない。


「騎士団長の予定を聞いてまいります」


 女騎士さんはそう言い残して部屋を出て行った。



 10分ぐらいたった頃だろうか。

 ノックと共に漆黒の鎧に青いマントをなびかせて3m以上あるのではないかと錯覚するほどの大男が部屋に入ってきた。


「体調は大丈夫かね、ユウト君」

「体のあちこちが痛みますが大丈夫です。それでロッティは――」

「まあそんなに急がないでくれ。私が騎士団長のジークムント・オーガストだ」

「……ユウト・スギモトです」


 ロッティの事が一刻も早く知りたいが一旦落ち着こう。

 口ぶりからすると無事なはずだ。


「さて、シャルロットという少女と昨日の魔族の男との事を聞きたいんだが?」

「はい、ロッティと出会ったのは――――」



 ロッティとの出会いから魔族を倒すまでの事を話した。

 ロッティが魔王の娘だということも、無属性魔法のようなものを使ったことも包み隠さずに。

 本当は隠したほうがよかったのかもしれない、魔王が殺されたことは伝わっていないし信じてもらえないかもしれない。

 でもとっさに嘘は思い浮かばなかったし騎士団長さんに嘘が通じる気もしなかった。

 全て話し終えた後騎士団長さんは唸って数秒をおいてから言った。



「実はな、魔王が死んだという情報は伝わっている」


 ロッティは魔族内でも知っている人は少ないと話していたが伝わっているのか。


「戦闘の跡や死体の状況から言って6属性のどれにも属してない魔法を使った、ということも分かっている。君の証言を信じよう」

「な、なら!」


 希望に声がうわずる。


「だが、魔族の娘を解放するわけにはいかない」

「な、なんでですか!」


 頭にかっと血が上った、だが次の瞬間、騎士団長さんは表情をを緩めて言った。


「分かってくれ。『ただ』で解放するわけにはいかない」


 ただで?ってことは……。


「条件が2つある」

「なんですか、何でもやります」


「1つ、シャルロットさんを君の『奴隷』にする」

「ど、奴隷だって!? ふざけないでください!」


 今度こそ怒りに任せて殴りかかったが赤子を扱うように柔らかく受け止められた。全力で殴ったのにだ。


「話は最後まで聞いてくれ、奴隷にする理由は隷属の誓約によって主人に嘘をついたり逆らったりできないようにして魔族の潜入員だという疑いをなくす。それに奴隷なら魔族だってばれても外を歩けるし突然捕まることもない」

「だけどっ!ロッティがそんな……」

「彼女はそれで君といられるなら、と言っていたがな」


 頭が殴られたような気がした。

 僕と居れるなら奴隷になってもいい、そこまで……。


「2つ目は何ですか?」

「いい表情になったな、2つ目は我が騎士団から1人監視をつける」

「監視……ですか」

「そう構えないでくれ、君らの護衛も兼ねているんだ」

「護衛?」

「無属性魔法は強力だが、そうやすやすと使っていいものではない。君は勇者だが弱い」


 そう、僕は弱い――。


「別に弱さを責めているわけじゃない。それで君達2人に監視と護衛をつけさせてほしい、ってことだ」

「……わかりました」

「よし、ならばお姫様を呼ばなくてはな」


 そして騎士団長は突然大きな声で入ってきてくれ、と叫んだ。



 そこには。




 彼女がいた。

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