筆記事項
「よう、こらクソ天使! 大事な――」
「大丈夫! 君も問題なく校外学習に連れて行ってあげるから!」
「――話があるからちょっとつら貸せや、って何?
今、何て言った?」
特大火炎放射器を両手に険しい顔で乗り込んできたが、
そもそもの乗り込む要件が先に解消されて眉間のしわが取れた。
ただ引き金にかかった指はそれに反応しきれず、
「あ」と漏らした声とともに狭い事務室の中で火を噴いた。
吹きだした火炎はすぐには止まらず、
部屋内の備品を燃やし尽くすとガス臭さを残して治まった。
「やられる前に誤解を解こうと思ったんだけど、
失敗しちゃったな」
どういう構造をしているのか木材でできているはずのちゃぶ台を盾に
ラヴはけろりとした表情で火災現場から顔を出した。
「おい、俺も校外学習に行けるってのはマジなんだよな」
「うん。マジマジ。大マジだよ」
ススだらけの備品を放置して、
ラヴはちゃぶ台の上に緑茶とお茶菓子を用意した。
「なんで俺のトコにしおりが来なかったんだ」
「ごめん、手違い <(o ̄ω ̄o)ゞ」
「テメエ」
悪いびれもなく答えたラヴに再び火炎放射器の口を向けると
慌てて両の平手を出した。
「冗談冗談、わざとだよ」
「ったく。って、わざとならなお悪いじゃねえか!?」
「待ちなさいよ。これにはちゃんとした理由があるんだから」
「理由だと?」
「これだよ」
そういって新しく卓上に置いたものは数枚の書類だった。
「実はあまり自覚してないだろうけど、
今の君って色んな意味でかなり特殊だからすごく微妙な立ち位置にいるんだよね。
この書類はそういうものをこの校外学習中に限り、
ある場所のところに固定するためのもの。
中には僕みたいな最上級天使や神様しか知っちゃいけない契約もあるからね、
他の人が来ないここに君を呼んだんだよ」
「え~、めんどくせえな~。
だいたい、そんなもん俺がチャチャーッと一人で書くだけで良くね?
一瞬、イベントを逃したかと思ってビビっちまったじゃねえか」
「それはしょうがないよ。
だってそうでもしないとそのまま放置しちゃうでしょ、君。
一緒に住んでるシャルロットのしおりと同じものを
渡されて読んでみようって気になれるかい?」
そう聞かれながら差し出された書類の一枚を見れば、
細かな字でびっしりと紙面を埋め尽くされていた。
まるでアリの大群をスキャナーの上にのせて、
そのまま印刷したような紙切れに吐き気を感じながら、
ラヴに返却した。
「まぁ、君はこっちの質問に答えてくれるだけで良い。
とりあえず『はい』だけ言ってれば問題なし。
大事なのは君が直接質問を聞いて答えるっていう事実だからね」
「わーったよ。その代わり、変な質問とかするなよ?」
「君の言う変が一般的な変とも違うというのは置いといて、
その辺りも考えなくていいよ」
こうしてラヴと神野ユーシャの二人による口頭の契約が行われた。




