制限時間
自称小説家を名乗りバイトで生計を立てる若者の家の
二十倍は軽く超える広さの部屋で百一人の生徒が詰められていた。
前後に一人ずつ教師を配置し、その二人の監視のもと、
生徒たちは真剣な面持ちでボールペンを走らせていた。
誰もが脳みそをフル回転させて記入していく中で
鬼気迫る様子で殴り書きをしている者がいた。
(まだだ。まだだろ。まだいけるまだいける)
名前を神野ユーシャ。
元は(三十前半の)(自称)勇者であり、
魔王を殺した(不法侵入及び強盗)ことで
全能なる(笑)神からその身には余りすぎる能力と
平々凡々より少し上の十代後半の体をもらい、
(エロ目的で)学生生活を送ることを許された存在である。
ほんの一部を除き生徒・教師共に女しかいない学園の中で
唯一の男子高校生として非常に珍しい立場にいる彼だが、
今は特にその存在は浮いていた。
「ぐっ」
ずきんと走る痛みに思いっきり声を上げてやりたいという気持ちを、
歯を食いしばって抑え込む。
額からにじみ出る汗が鼻の横を通り顎まで伝う。
手汗も通常の五倍くらいの量が出て、うっかりペンを
取りこぼしてしまうかもしれないと恐ろしいことを考えてしまう。
それでも、一心不乱にユーシャは書き続ける。
(もう少しもう少しもう少しもうすこ)
「はい、時間です。皆さん、ボールペンを置いて
後ろから答案用紙を回収してください」
「(あ゛あ゛ーっ!!)」
遠い席にまで聞こえるほど大きい声ではなかったが、
悔しさを一緒に吐き出す叫び声をあげた。
往生際が悪く、終了を宣言した教師の言葉を無視し、
用紙に書ききれなかった文字を増やそうとするが、
なぜかそれが紙面に写ることは無かった。
諦めずにガリガリとペンをこすり続けるうちに、
後ろから集められた用紙が回ってきて、
しぶしぶ自分の用紙をその上にのせて前の席に渡した。
各列の用紙を集め、枚数を確認した教師はそれを茶封筒に入れた。
「では、これで一学期期末試験を終わります。
HRがありますので、十分の休憩の後、席についてください」




