表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者は神様に頼んでギャルゲーの世界に転生しました  作者: 火村静
攻略ヒロイン二つ目 バカ後輩編(84057文字[空白・改行含む]
85/111

Q,秘策って何だ?A,小細工

【スキップ応用新技 効果終了】

「うん……ん~っ」

【スキップ】の能力を使い、ちょうど勉強時間の十分間だけ眠ったユーシャの目覚めは

とても心地よいものだった。

それもそのはず、彼の行った睡眠こそ累計二百数十時間の地獄を経験して

体得した【スキップ】の新しい使い方。

その名も『快適な眠りをあなたへ』と書いて『Brilliant Sleep for you』。

ノンレムだったかレムだったか睡眠によって全身の細胞を活性化か沈静化を促し、

疲労とか怪我とかを急速に治す。

ざっくりいえばわずかな睡眠で心身ともに回復させる技である。

「とまぁ、冗談は置いておいて」

ともかく最高のコンディションで目覚めたユーシャは

下に深いクマを作っていた目でまず周りを見渡した。

「だいぶ部屋の中が変わったなぁ」

主に変わったのはユーシャのすぐ後ろである。

壁あるいは用具を乗せた棚まで1メートルぐらいはあったはずが、

座っていた椅子の背もたれにぴったりとくっつく形で

巨大な布が接していた。

「これはあれだな。体育祭とかで使う旗を縫い合わせて作ったんだな」

その布は椅子の背もたれの面と並行して倉庫の四隅に留められていた。

何かその奥にあるのかと例のごとく都合よく身に着いた透視能力で

探ってみたが、何もおかしなものはなかった。

ただ、その空間にあった窓が全て板か何かで厳重にふさがれていて

布の向こうの空間は完全な闇となっていた。

「で、布のこっち側は」

と、自分の体から前の倉庫の中を見回した。

変わったことと言えばやたらと証明が集められて明るいことと、

巨大な布を留めている金属の杭の頭の輪っかを通る縄が

隅の方でまとめて置かれていることである。

「まぁ、いいよ」

エクスマの椅子の上に置きっぱなしの参考書を取った、

「それじゃ、始めるか」

「いいですよ」

部屋の改造を終えたエクスマが自信たっぷりの表情でユーシャの前に座った。

両者ともに自分の勝利を確信した状態で第4セットが始まった。


「じゃあ、第1問 P36 大問2 次の文を英訳した時、正しいのはどれか

行きましょう! ア、Let's us go!

        イ、Lets go!――」

「答えはエ」

「        ウ、Let has go!

        エ、Let us go!」

ユーシャが問題を読み上げたとき、

同時に椅子に座っていたエクスマが

足元に忍ばせていた縄を引っ張った。

地面に置かれていた縄もスルスルと杭の輪っかを移動していき、

やがてA3サイズの何かを引っ張り上げた。

「何だこりゃ。ガラス?」

それはこの倉庫にあったはずの窓ガラスで、

そういえばさっき透視した時に窓がふさがれているのを見たが

ガラスは確認してなかったなと思いだした。

「これがお前の、んん?

…………そうか。鏡か」

本物のようにはっきりとまではいかないが、

おぼろげに布を境に明るい方の風景が反射して映っている。

「そうですよ、先輩。

でも、別に構いませんよね。

不正行為は不正行為ですけど、別に先輩のを見るために

したわけじゃありません。

『何か答えを選ぶきっかけになるものを探していただけ』

なんですから。これがダメなら鉛筆を転がすのもダメってことになりますし」

「ハッ。小賢しいなぁ、オイ。まぁ、いいよ。

ルールは守ってる」

ユーシャは目を伏せ、エクスマの努力に

僅かながらに称賛した。

「ただ。それで取れるのか」

「取れますよ。先輩が寝ている間にある程度、

縄の扱い方を理解しましたし、

答えの場所もある程度、把握できてます」

「なら、手加減は要らねえよな?」

ユーシャはバラバラッと参考書のページをめくり、

本の真ん中あたりに記載された『最後のまとめ』と書かれた

問題集をエクスマに見せた。

「このページにある問題を一番最初から29問解け」

【※一番最初という言葉が間違っているのはユーシャの頭の悪さに免じてください】

その29問とは全て

『次の語群を□文になるように並び替えて○番目に来るものを答えよ』

という形式だった。

語群は一番少なくて9個、多くて26個。

中学生向けの参考書の中でも特に難しい部類の問題だった。

「難易度なんてこの際関係ないですよ。

答えを見れば済むだけですし」

「本当か? これがお前に解けるってのか。

じゃあ、やってみな。言っておくが、ここらの問題も

ポスターにほとんど乗ってるが、それでも一、二問は無い。

23以上取らなきゃいけねえのに、それがお前に出来るのかよ」

「ケース・バイ・ケースっていうことで、

その時はしっかり考えて答えますよ」

もうユーシャにこのセットで出来ることはない。

足を組みながら参考書のページをエクスマに見せ続けるだけだ。

エクスマはエクスマで非常に楽な作業をしている。

巧みに縄を使ってガラスの位置を変え、

微妙に見えにくい場所にある答えを盗み見て

答えていた。

ユーシャが言った通り三問ほど自力で考えなければならない問題にあたったが、

宣言通り、自分なりに一所懸命に考えて答えをだした。


結果 第4セット 攻撃:エクスマ 得点:30点中


           18           

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ