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勇者は神様に頼んでギャルゲーの世界に転生しました  作者: 火村静
攻略ヒロイン二つ目 バカ後輩編(84057文字[空白・改行含む]
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Q,勝負の結果は?A,まだ説明中

ユーシャは掃除しなおされた補習室の壁際から

カバンを乗せた長机と椅子を2つ引っ張った。

「勝負は前にラヴに仕掛けた方法とだいたい似ているが、

色々変えた部分がある」

2つの椅子を向かい合わせに並べ、

カバンの中から厚めの参考書を5冊取り出した。

表紙に英語・数学・国語・理科・社会の文字が大きく書かれたそれらを

縦に並べ、その脇に数枚の白紙とペンと消しゴムが2個ずつ置かれた。、

「全体の流れから言ってやる。

まずプレイヤーは攻撃側と防御側に分かれる。

攻撃側は机に置いてある参考書から一冊を選んで中身を確認する。

少し経ったらその本を防御側に渡して勝負開始だ。

防御側は一問ずつ参考書内の記号問題を出す。

攻撃側は問題のページ数と番号、それと自分の解答を紙に書く。

それを三十回繰り返し、終わったら両方の見える場所で答え合わせをする。

そこで正解した問題の数だけ防御側に加点される。

今言った流れが1セット。2セット目からは攻撃・防御を入れ替えて同じをし、

それを6セットまでやる。つまり、一人につき三回まで点数を得ることが出来る。

最終的にこの点数が高い方が勝ちだ。

ここまでは分かったな?」

エクスマは頷く。

「次にこの勝負のルールだ。

まず一つ目『参考書を取るとき、3セット前までに使われた科目は選べない。』

 1セット目《国語》、2セット目《数学》、3セット目《英語》と来たら

 次に選べる科目は、《理科》、《社会》のどっちか一つだ。

二つ目『勉強時間中の制限』

 攻撃側が本を受け取っている間、この部屋に限り何をしてもかまわないが、

 ①相手を襲う。②問題の答えを何かに書き込む。

 ③参考書の中身を読めないように細工する。

 とかをすれば防御側に三十点追加し、次のセットに強制移行。

三つめ『さっきの事を除いた反則行為を見つけても中断することはできない。』

 ただし、見つけたやつは次の自分のセット、

 その反則行為を特別にやってもいいことにする。

それだけだ」

説明を終えたユーシャは持ってきた椅子に座り、

エクスマの前を空けた。

「勉強時間の長さと先攻後攻を決めるのは

勝負を仕掛けられたお前に譲ってやる。

その方がフェアってモンだからな」

ユーシャはまるで勝つことが分かっているかのように

ふてぶてしくそう言った。

しかし、その計らいは確かにこの勝負を公平にするのに十分ではあった。

話は変わるが『ボトルに入った水をメモリのついていないコップ一つで

公平に二人へ分けるにはどうするべきか』

という問題がある。

この問題の答えの一つに『一人が水を注ぎ分け、もう一人が分けられた水の

どちらかを選ぶ』がある。

つまりどういうことかというと秤が無ければ均等に分けられない水ではなく、

提供する権利と選択する権利をそれぞれに与えることで

互いの立場を均等にしたという論理問題なのだ。

話を元に戻すとこれもそうである。

自作の勝負方法を持ちかけるという事は

すでにこの勝負の攻略法を知っていることとほぼ同義だ。

この時点でユーシャの方が優位ではある。

だが、ここでプレイヤーが得られる権利を全てエクスマに譲渡した。

もしこの勝負に攻略法があったとしても

この場のエクスマの選択次第でユーシャが自滅を起こすことだって

十分にあり得る話なのだ。

どちらも勝負を良い方向へ持っていくだけのチャンスはあり、

フェアといっても良いくらいには互いの採算はあっている。

(だから、ありえない)

ユーシャが手段や方法より結果を優先するタイプの人間であることを

エクスマは理解していた。

よって、これはフェアな勝負ではない、はずである。

(性格と頭の出来から考えて難しいことを企んでるとは思えない。

けど、じゃあ一体それは何なんだろう?)

エクスマは頭を捻って十数個ほど、勝つためのズルを思いつくけれど、

そのどれもがしっくり来なかった。

「とりあえずその参考書と紙とペン。

あと、ボディチェックと外回りを調べてもいいですか?」

「おお、良いよ。思う存分調べて来いよ」

この反応に元の八割ほどやる気を失くしたけれど、

念のため言った通り調べることにした。

(参考書。紙。ペン。どこにも術式や回路は

施されてはいないみたい)

問題を見た瞬間、答えが頭の中にインプットされるような魔法や、

適切な回答を自動で書く仕組みがペンに仕込まれている、

といった可能性は消滅した。

次にユーシャの全身をくまなく調べてみた。

(通信手段は無し)

ポケットの中身まで見て知りたかったことは

勝負中にユーシャが誰かと通信を出来る手段があるかという事だった。

そしてそれもなく、もちろん腕の裏に小さく答えが書き込まれていた

といった下らない真似をしていないことも確認できた。

最後に部屋の外に出たエクスマは元は体育倉庫だったこの建物の表面に

目視できないほど薄い膜上の魔術結界を付加した。

この結界自体に効果はない。言ってみればこれの役目は鳴子である。

これのおかげで外部から何かの接触があった場合、

その瞬間に膜が破れて異常をエクスマに伝えるようになっている。

(ここまで調べても何もなかった)

まだ腑に落ちない部分はあるけれど

現時点ではそれらしいいかさまがないことが確認できた。

もっとも、エクスマが気付かないほど高度な術式や科学が

仕掛けられているという可能性はなくもないが、

わざわざそんなものを使うくらいなら

こんな勝負を持ち掛けてくるわけがない、とエクスマは判断した。

「OKです。始めましょうか」

「ん。で、先攻? 後攻?」

どういう腹積もりか読めないユーシャは余裕の姿勢を崩さず、

エクスマに順番を決めさせた。

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