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勇者は神様に頼んでギャルゲーの世界に転生しました  作者: 火村静
攻略ヒロイン二つ目 バカ後輩編(84057文字[空白・改行含む]
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Q,恋心って何だ?A,虚像&実像

字面ではエクスマの体を気遣うように聞こえるが、

それ以外の全てがそれと丸っきり逆の意味で

話していると感じていた。

「元気ですよー。ほらっ、昨日、先輩に治してもらったおかげで

傷一つ残ってませんから」

「あ~。そういえばそうだっけ。悪ぃ、忘れてたわ。

お前と会ってから色々あってよ。

なんかスゲー久しぶりな感じがするんだよな」

「それって私に会いたがってたってことですかぁ~?」

「ハハ、そうかもな」

(嘘だ)

エクスマは瞬時にそれが分かった。

ユーシャの両目は下に深い隈を作っており、

かろうじて焦点をエクスマに合わせている状態とみた。

冷たくも虚ろなその視線から

心の中に溜まったエクスマへの強い憎しみを原動力に動き、

外部からの全てに対して

体が受け付けようとしないのだろうと察した。

「なぁ。もうそのしゃべり方止めていいぞ?」

「え?」

「どこの世界にそんなアホっぽいしゃべり方する高一がいんだよ。

天然系アイドルだってプライベートじゃ一般人と変わりねえぞ。

もしそうじゃないなら早く精神病院に行け。

まともな人生、生きてけねえからな」

嘲りと投げやりの気持ちが混じる言葉に

彼女の眉根がピクリと動いたが、

それでも彼女はユーシャが好みそうなキャラを演じた。

「そんな、アホっぽいとか言わないでくださいよぉ。

私、頭悪いこと、実はちょっと悩んでるんですよ?」

「いや。お前、頭悪くねえだろ。

少なくとも人の心の機微ってやつをお前は分かってる」

「え~? そうですかぁ?」

「だってそうだろ? 分かってたから謝罪文をネットに公表したんだ。

わざわざ学校の公式HPに上げたのは

自分は良い奴ってアピールして、

相対的にシャルロットが物凄く悪い奴だと

大勢の人間に思わせたかったからなんだろ?」

その質問にエクスマは言葉に詰まってしまった。

ユーシャが追究するその行動の真意は確かに謝罪ではなかった。

本当にそのつもりがあったとすれば、本人に手紙やメールを送っていた。

自分一人ではなくその他大勢にさせることをポイントとし、

シャルロットを破滅させるために企んだ紛れもない悪意であった。

しかし、それを彼女が自供するはずがない。

エクスマは話の論点をずらし、なんとかそれを有耶無耶にしようと思った。

「そんなつもりは――」

「信じらんねえっ!」

ひときわ大きな声で拒絶されたエクスマは

予想外に大きなダメージを負ってしまった。

ごまかすことに失敗したことを思ってではない。

話をする前に打ち切られてしまったことがここでは重要なのだ。

(もう向こうは私との意思疎通自体を拒絶してるんだ。

これじゃあ、説得も交渉も何の意味もない!)

話に納得してくれないならいざ知らず、

たかが相手が話し終えるまで待つ程度の事すら

拒絶する相手にこちらから出来ることはほぼない。

ユーシャの糾弾はまだ続く。

「信じられるわけがねえ。

分からずにやったならまだ許せるが、お前は十分どうなるか分かれたはずだ。

人の気持ちを読んだ上でどうすれば自分の都合のいいように動かせるか考えてたんだろ。

俺に取り入ること。一人目であるあいつを蹴落として自分が一番になること。

全部を叶えるためにお前は俺に嘘をついてたんだろ?

そう考えるとよ、もうお前の全部が信じられなくなっちまったんだわ」

エクスマはまともにユーシャと会話できるまで待つ――

つもりだった。

「お前が俺に言った好きってのも本当のところ嘘なんだろ?」

「え?」

突然、足元から地面がなくなってしまったような感覚がした。

「だってお前、俺の性格が好きっていうけどさ

どう好きになるんだよ。

俺のために他のものを捨てるっていう『他のもの』に

いつか自分が入れられるかもってことが、

考えられないお前じゃねえだろう

俺の彼女とか恋人とかになりたいってのは全部方便で、

実はその立場を利用して良い思いすることが

お前の本当の目的だったんじゃねえの。

そう考えりゃあいつを破滅させることにも納得できる。

俺を利用できる存在は自分一人で十分だもんな」

「そんなこと思ってない!」

たまらなくなってエクスマは声を張り上げた。

確かにいつか他の女に乗り換えられて

捨てられるかもしれないことを考えなかったわけではないし、

それを防ぐこともあってシャルロットを破滅させようとしたことは事実である。

けれど! エクスマは私は本当にユーシャの事が好きだった。

ユーシャとの出会いに運命を感じて胸をときめかせたこともあった。

それを否定されることだけは、どうしても耐えられなかった。

「ふんっ」

エクスマの悲痛な叫びにユーシャは鼻息一つ着くだけだった。

その態度に完全に見放されてしまった絶望を感じ、

同時にそれだけの事をしてしまった自覚があったために納得もしてしまった。

「まぁ。それが本当か嘘かはこの際、どうでも良いんだよ。

とりあえず俺はお前の言葉を信用できないってことだ。

話し合いじゃ信用できないから白黒はっきりつけられる方法で

お前との関係にケリをつけたい」

「っ!?」

ケリという言葉にエクスマの体が震えた。

ユーシャはもう自分との関係を終わらせようとしている。

自分はそれでも彼の事が好きなのに、

ユーシャは全くそれを信じようとはしてくれない。

二人の間に大きなすれ違いと溝があることをエクスマは実感した。

「今度はお前が俺の話に乗る番だ。

どうする? 乗るか?

乗らなくてもいいぞ?

そうしたら金輪際、お前とは口を聞かねえ」

ユーシャからの提案にエクスマは腹をくくった。

(話を聞いてくれないなら。

私の気持ちを信じてくれないなら。

力づくで教えてやる!)

「乗るわ!」

頭が緩そうでかわいらしいイメージを脱ぎ捨て、

ありのままのスタイルでその誘いに乗った。

自分のために行動できるユーシャが好みと彼女は語る。

けれど、その気持ちのルーツは憧れではない。

彼女もまた、自分の恋心(欲望)へ純粋に行動できる女だからだ。

そんなこと、ユーシャには全く知る由もないけれど、

恋に燃える乙女は思ったよりも強く、凛々しい姿なのであった。

「はっ。化けの皮が剥がれたか。

そんな顔もできるんじゃねえか。

良いぜ? それでこそ、潰し甲斐があるってもんだ」

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