ギャルゲー主人公は、普通ではなかった
唖然としていたユーシャをよそに
のほほんとソフィアが生徒たちに朝礼のあいさつを始める。
「はーい。皆さん、おはようございます。
今日から同じ教室で勉強する転校生を紹介します
では、お願いしますね」
「あ、あの~、自己紹介の前にちょっと質問良いですか?」
ソフィアにだけ聞こえるように耳元に近づいてささやいた。
「ここから見て左端に座っているあの耳のとんがった金髪の人は?」
「え? ああ、リースさんですね。彼女はハイエルフ。100年以上生きてますが
中身は純粋な女の子ですよ?」
ソフィアが軽くリースに手を振ると
天真爛漫な笑顔を見せてあちらも手を振り返してきた。
わあかわいらしい。って、それはともかく、
「へ、へ~。ハイエルフですか。じゃ、じゃあ……そこの隅の席に
座っている人は……何ですか? あっ! いや、すいません。
言い方悪かったっすね。えっとぉ……どういう人なんですか?
何というか……半透明というか、後ろの席の人が透けて見えるというか
影が薄いのかな? 存在感が全く感じられないんですが
(ダメだ。全く良い言い方が見つからない!)」
「小夜ちゃんですね。彼女はある理由でこの場所の地縛霊になってしまったんです。
でも、幽霊だからといって放っておくはできません。この学校にいる以上、
彼女も立派なうちの生徒。みなさんと一緒に勉強してもらっています」
「じゃあ、最後に一番後ろで体育座りをした……巨大ロボット?
何ですかあれ。宇宙戦争から帰ってきたんですか?」
「さすが魔王を倒しただけあって、洞察力もすごいですね。彼女は
銀河連邦第23小隊隊長。クロイツロードさん。現役の軍人さんです。
でも、とても恥ずかしがり屋さんだから、ああして専用機の中で授業を受けているの。
階級は少尉ですけど、ここではほかの生徒たちと同じ立場なので
仲良くしてくださいね」
「…………マジかよ」
とりあえず目のついた三人(?)を選んで聞いてみたが、
教室の中を見回していると彼女たちが特別というわけではなく
お姫様、猫耳、ダークエルフ、天使、悪魔、ゴスロリを着た死神.etc
結構な場数を踏んできたと自負していたが
恥ずかしくないのかと聞きたくなるブルマや
髪を傷めないかと心配したくなるようなピンク色が
むしろ当たり前に感じるような体験はこの時が初めてだった。
付け加えるなら、ただ一人だけ存在する『どこからどう見ても普通の女子高生』、
有り体にいうなら、モブキャラっぽいのが逆に特別な属性に感じられた。
(なんだよ、この教室。どいつもこいつも属性を持ってるしキャラが濃いぞ。
下手すりゃ、俺がモブキャラじゃねーか! こんなのっ)
「う˝っ!」
ユーシャは思わずその場でしゃがみこんでしまった。
「わわっ、どうしたんですか。おなかが痛むんですか?」
「い、いや。大丈夫。大丈夫です。ちょっと立ちくらみして」
ソフィアが心配して顔を覗き込んでくれるのは嬉しいが、
今だけはしてほしくなかった。
(ヤッッッッッベーっ! にやけ顔が治らねえ。
こんなおいしい状況、普通、感無量で顔面が崩壊するぞ!
ギャルゲーの主人公、この状況でよく無表情を通せたな。仏門にでも入ってたのか!?)
ユーシャは顔が元に戻るまで耐えるしかなかった。
逆の立場で考えれば、にやけ顔で挨拶する男なんか変態の一言で片づけられる。
この先、どういうルートでこの学校の女子たちを攻略していくにしても、それは致命的だ。
「ちょっといつまでそうしているつもり? さっさと挨拶してほしいんだけど」
不安と心配が混じった囁き声の中から一本、剣のように刺さるような声が飛んできた。
(このセリフ……)
ユーシャはむくりと体を起こし、声の出所を探した。
(忘れるはずがない。この声を俺は毎日思い返していた)
いきなりの事だったから聞こえてきた声の方向なんて分からない。
だが、声からどんな容姿なのかはだいたい分かるものだ。
そう思って探していると、一人の少女と目が合った
「どうせ、女の子がいっぱいで鼻の下でも伸ばしてたんでしょ」
(あいつだ!)
日の光のように輝く長い金髪。きゅっとしまった唇。
そして、気の強そうな赤い瞳。さっきの言葉は間違いなく彼女が言ったと確信した。
(会いたかった)
ユーシャはまるで離れ離れになった恋人に再会したように熱っぽく、
親の仇に向けるほど強く彼女を見つめた。
(この時を待ったぞ、『ツンデレ』!)




