証拠って何だ?
「また、あいつか! あのクソ女か!
どこまで俺の足を引っ張りゃ気が済むんだコラ!」
「おっ、落ち着こう、いったん冷静になるんだ」
椅子を蹴飛ばしたり、拾いに行ったそれで窓ガラスを割ったり。
少し離れて落ち着かせようとするラヴの努力を無駄に
ユーシャは怒りのまま破壊活動を続ける。
「っていうか何なんだよ! 今回はエクスマの回じゃなかったのかよ!
問題があるにしてもそっちだろ! 何で二回続けて同じ奴の面倒を見なきゃいけねえんだよ!
一巻ごとに別のヒロインを落とすのがラノベの常識だろ!
またなのか? 今回も実はあいつを攻略する結果になるのか?
新ヒロイン・エクスマじゃねえのか? 面倒くせえな、オイ!」
「落とすとか大きな声で言わないでくれる!?
事情を知らない人が聞いたら物騒に聞こえるから!」
事情を知っていたとしてもあまり褒められる発言ではない、という事はさておき
ラヴは背後から羽交い絞めにすることでようやくユーシャを落ち着かせた。
「ふんぬっぐ!」
「に゛ゃっ」
と、思いきやユーシャの頭突きが鼻に当たり、
軽々とユーシャは拘束が脱出した。
「だいたいおかしだろっ! あいつの性格考えてみろ。
あれが校舎をぶっ壊すようなタマか? 冗談も大概にしろ。
そこまでいうなら証拠出せ、証拠!」
「くしゅんっ! それはさっき、会議で言ってたじゃないか」
「うるせえっ! 聞いてねえよ! もう一回言えっ!」
「断る!」
そう返されユーシャの要求は却下された。
しかし、その言葉が来た方向はユーシャが認識していない場所からであった。
「黙って聞いていればさっきから何なのだ貴君は。自分勝手にもほどがある」
縁のない眼鏡の奥に凛とした細長い目をしたS系美人教師、ガロット。
さっちまで席を立って他の教員たちに説明をしていた彼女は
毅然とした態度でユーシャに注意する。
「貴君の勝手な振舞いが会議の進行を遅らせている。
それはシャルロット嬢や我々学校関係者の状況を
悪化させてしまうことにもつながっているのだ。
貴君一人のせいで多くの人間に迷惑をかけていることを自覚できないのかっ!」
「んだとコラ! 中身ぶっ壊れるまで○カすぞ!」
「ちょっと待ったぁっ!」
ラヴは火花がほとばしる視察戦の間を強引に割り込んで、
ガロットがユーシャに0プされる事態を阻止した。
「落ち着こう。落ち着こうよ、ね?
ちゃんと言うから。君でも分かるように説明するから」
「ラヴ様っ!? しかし、それでは会議が――」
「シャルロットさんが主要人物である以上、
夫(暫定)の彼に状況を分かってもらう必要があることは事実だよ。
確かに進行に差支えは出るけどさ、
ここは僕の顔に免じて許してくれないかな?」
「むぐぐ」
学校内における事務員と教師とでは
立場は一般的に後者の方が高いのだが、
ガロットは少しうなった後、しぶしぶ首を縦に振った。
それに会釈を返すラヴは空間にひびを入れ、
そこから大きなホワイトボードを取り出してユーシャの前に置いた。
「それじゃあ、今から検証した手順に沿ってシャルロットが
この事件の犯人であることを僕と彼女、ガロットが説明するよ」




