シャルロットって何だ?
ユーシャの脳裏にはある女がうつっていた。
シャルロット。現在のユーシャの妻であり、一人目の攻略ヒロインである彼女とは
一度戦いあったことがある。
彼女は恐ろしいほど強かったが、その戦いをきっかけにユーシャは
【スキップ】の使い方を理解し、華々しい勝利を飾ったのであった。
だが、それは大きな間違いだった。
ラノベの主人公に憧れて得た勝利はその後、ある問題を引き起こし、
攻略し損ねそうになったのだった。
色々面倒な手順を踏むことで結果的に今の関係に落ち着いたわけだが、
二人の間に愛情が入る余地なんてなかった。
何かを得るため、もしくは何かを失くさないためにユーシャは頑張った気もしていたが、
特に嬉しくなるようなことも無く、ただ面倒だったことと
うるさい女が目の前から消えてくれなくなったことだけだ。
しかし、それでも強いて得たものがあるとするならば
それは『大雑把に【スキップ】で解決することをやめること』だ。
(【スキップ】はほぼ完全無欠な能力だ。
けど、そのせいでどんな無茶苦茶なことでも実現出来てしまうから
絶対に後から別の問題が出てくる上にだいたいそういうのは
単純な強さじゃ解決できない分野だ)
そういうことが起きないようにするには
細かい部分まで考えた上で実行することが必要なのだが
ユーシャの頭……性分ではそれが不可能であり、
何より本人がそのようなことを面倒と思っているのである。
その教訓をいつまでも忘れないようにするため、
シャルロットという目に見える失敗を残したのだろう。
と、ラヴがのちに話してくれることになるがそれはまだ先の話である。
「もしもし? もしもし? おーい、どうしたんだい?」
「っ」
いつの間にか目の前にラヴの顔があることにすら気づかないほど
ユーシャは自分の世界に入っていたらしい。
「何でも無え。とにかく今回はできるだけアレを使わないようにしたい」
「縛りプレイというやつかい?」
「そんなトコだ」
「う~ん」
ユーシャの言葉にどう思ったのかラヴは小さくうなり、
腕を組んで頭を傾けた。
「でも、そうなるとかなりキツいよ? 前回以上に」
「あん? どういうことだ」
「うん。さっき、この問題は誰かのせいだって言ったよね?
あれね。君の嫁」
「…………は?」
キミノヨメ? そいつはだれだ。
どこのクラスのどんな属性のどんな美少女だ?
目をぱちくりさせて口を紡ぐユーシャに
きっぱりと事実を告げる。
「シャルロット・ディ・神野。彼女こそ
みんなの学校を半壊させた張本人なんだよ」
「…………ふっふっふっふっ…………」
場をわきまえず、不気味に笑うユーシャ。
そんな彼に会議を進めていた教員たちも手を止め、
息を殺して状況を見極めようとしていた。
「あっはっはははははは、ふふふふ……
ぷっ! あははははは」
笑いはエスカレートしていき、途中で堪えるものの
すぐに吹きだして大きな声で笑ってしまう。
しかし、大爆笑はそこまで長く続かず
「はぁ」と笑いに疲れてため息を漏らし、
突然電源を切られたロボットのように。
その時の表情のまま固まった。
それもまた不気味でこの場にいる全員が
一言も言葉を口に出さなかった。
そして急にユーシャは座っていた椅子を倒す勢いで立ち上がった。
水を打つ椅子の音に数人の教師が体を震わせ、
その程度では動じなくなるほどの修羅場を乗り越えてきた
残りの他数人は目を細ませる程度だったが
明らかに警戒の意識が高くなっていることは素人目にも分かる。
しかし、そんなことに気を留めずユーシャは天井に向かって叫ぶ。
「何やってんだあいつぁっ!」
ユーシャは激怒した。




