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勇者は神様に頼んでギャルゲーの世界に転生しました  作者: 火村静
攻略ヒロイン二つ目 バカ後輩編(84057文字[空白・改行含む]
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男子って何だ?

「草食系男子? あ~……」

ユーシャは記憶の中に存在する草食系男子を探してみたが、

良く考えると現実の男に対して思っていたイメージは

奪いたいものを持ったゴミかその価値すらないゴミかの

どちらかだけだった。だから、ギャルゲーに登場するキャラクターを思い浮かべた。

「なんというか、普通だな。良くもなく悪くもなく。

(俺意外の男という時点でそいつに生きる価値は無いしな)」

「じゃあ肉食系男子は?」

「そっちは分かりやすいな。敵だ。俺にとっても敵だし、

お前ら女にとってもそういう野郎は気に入らねえんじゃねえの?」

ギャルゲーの中には肉食系男子も存在した。

主人公の仲間だったり、敵であったり。

しかし、両方ともあまり良い終わりを迎えることはなかった。

前者は女に声をかけるも毒舌や暴力で返され、

後者は主人公が立ち上がるまでは女を侍らせたり、

随分うらやましい思いをしていたが、最後には倒される。

「そうですね。肉食系男子なんてただの自分勝手なスケベとしか

思わないのが今の風潮だと思います。でもね、先輩。

肉食じゃない男なんかに女子が惚れる魅力なんて

持ってるわけがないと私は思うんです」

「ん?」

魅力を持たないとはどういう事だろう。

ユーシャはそこに疑問を持った。

「先輩は自分を好きと言ってくれる女子と

好きだけどそれを言わない女子とだったらどっちが可愛いと思いますか?」

そう聞かれてユーシャは前者にエクスマを、そして後者にシャルロットを思い浮かべる。

エクスマ:自分を先輩と呼んで慕う素直で従順な女子。

シャルロット:自分を目障りと思いイラつくことばかり言う女子。

その二人を比べると答えは明らかだった。

「そりゃ、好きと言ってくる方だな」

「でしょ? 普通はそうです。それの度合いを激しくしたり、

節操を失くした人を肉食系って言いますけれど、

根本的な部分は割と普通なんです。

むしろ、断られたり、肉食系ウザいとか言われたりするリスクを知ったうえで

やっているんですから勇気というか男気を感じるじゃないですか。

それに比べて草食系って。謙虚? おとなしい?

何を言ってるんですか。あんなの自分の気持ちすら言えないただのヘタレですよ。

どうせそんな奴は異性の扱い方が下手で結婚してもすぐに破局したり、

部屋に閉じこもって下半身丸出しでエロサイトを漁るしか能のない玉無しですって」

エクスマはずいと一歩進んでユーシャの背中に腕を回す。

密着した彼女は胸板に頭を押し付けユーシャにだけ聞こえるように言った。

「神野ユーシャ先輩、私はあなたが好きです。

あなたのその凶暴な欲望(愛情)が好きです。

他に何人の女に告白してもいいですから

私をあなたの女にしてください。

滅茶苦茶にしていいから私に本当の愛をください」

その言葉にユーシャは鳥肌が立った。

告白というより脅迫じみたそのセリフは

艶めかしくも心臓を握りつぶすほどの威力を持っていて、

まさに魔性の女が吐くものに違いない。

今まで見てきたバカっぽい後輩という印象とは大きくかけ離れていて、

彼女の種族が低級悪魔(デビル)であることを思い出した。


(怖ぇ)

シャルロットや今まで戦ってきた野郎どもとは違った恐怖。

この女を自分のハーレムに入れてしまったらどうなってしまうんだろう。

自分は他の美少女も残らず自分のものにする。

その中でこいつはその一番になってしまうんじゃないか。

俺はこの女を一番好きになってしまうんじゃないか。

それが怖い。自分の中に大きな波紋が起きる。

この脅迫(告白)を受け入れることがそれを起こす一滴になる。

(怖ぇ。けど、面白ぇっ!)

本気で惚れてしまうかもしれないというスリル。

そんな聞いたことのない感覚がユーシャに緊張感と一緒に

ある種の期待を運んでくる。

それは例えるなら、どこかの貴族を護衛している兵士たちに

遊び感覚で殺しにかかったときと似ていた。

その時は命からがら逃げるという結果で終ったが、

死ぬかもしれないという恐怖に頭を突っ込んだことには

本心から楽しかった。

「はは、やべえなぁ。油断してると惚れ(食われ)ちまうわけか。

エクスマ、実はお前も肉食だろ?

俺を惚れさせにかかってんだろ」

にやりと慇懃に笑うユーシャにエクスマも同じく応える。

「そうですよ。私、肉食系女子なんです。

先輩、覚悟してくださいね」

「ハハハ」「フフフ」

挑戦的に笑いあう二人だけの狭い補習部屋。

時計の針が二つとも十二時を指したこの瞬間、

この場所で一組のカップルが愛欲と独占欲によって成立した。


自分の欲望に忠実な二人はこうして彼氏と彼女の関係になった。

感覚として近いものを持った者同士、

きっと良好な関係が長く続いっていくのだろう。

これにて二人目のヒロイン、エクスマを攻略する物語に終止符が打たれたのであった。

めでたし、めでたし。


























そして―ー

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