良妻って何だ?
「死ぬ……マジ死ぬ…………絶対、死ぬ……………」
補習開始から三日目。
ユーシャはパンダと深海魚を足して2で割ったような顔になっていた。
(甘かった。完全に舐めきってたわ)
補習が終わり通常授業の間なら休めると思っていた。
が、眠気はあるのに瞼がラヴによる『不思議パワー!(笑)』のせいで
なぜか閉じないようにされ、
かぶらされた金剛圏とかいう帽子(『私はテストで赤点を取りました』の文字付)は
きちんと授業をノートに取っていないと自動的に頭を締め付けてくる仕掛けになっているので、
上の空になることもできなかった。
「ぁぁ、ぁぁぁぁ……………………」
ゆえに、休み時間は専らこのような生ける屍と化していた。
クラスの女子たちもそんな様子のユーシャから一歩距離を空けていた、ただ一人を除いて。
「ちょっと。空気が悪くなるから帰ってくれない?
前からもそうだったんだけど、この三日は特にひどいわよ。
今すぐ出ていけ。もう来るな。学校止めろ」
汚物を見るような視線で毒舌を吐くこの女子生徒の名は、
シャルロット・ディ・神野(旧姓:アズロン)。
ユーシャの(戸籍上での)嫁である。
ユーシャは高等二年として転入して早々、彼女とある騒動を起こし、
一時は退学という事態にまで陥っていたが、色々あって現在に至る。
その色々の中に二人の結婚が含まれているのだが、決して嬉しくなるようなことではなく
両者の妥協から成り立ったのであった。
むしろ両方とも、記憶から抹消したい、と思っているくらいだ。
「と言うか、あんた臭いわよ。風呂入ってんの?
補習終わっても最低一週間は風呂に浸かってからじゃないと、
部屋入れないから」
同じ長机に座る彼女は鼻を摘まんでそう言った。
実際、自分でもわかるくらい臭っているのだから仕方がないのだが、
それでもやはり腹は立つ。
「うっせーぞ、クソが。テメエもあの補習受けてみろ。
その辺りを割り切らねえと発狂するか倫理観崩壊すんだよ」
と、言ったつもりだが驚くことに疲労のせいか
口をパクパクさせているだけで音が全くしなかった。
「キモ。息吐かないでくれる? 菌が飛んでくるんだけど」
(殺す!!)
その瞬間、シャルロットの足元から内側に無数の剣が生えた
鉄の拘束具が現れ、彼女を丸呑みにした。
ガシャンと拘束具が閉まると同時に隙間から赤い液体が滴り落ちる。
『紅蓮の騎士』と呼ばれた彼女には皮肉な最期を迎えることになったのだった。
というのが、普段のユーシャにはできたのだが。
(やっぱり能力が使えねえ! っつか、今の俺、完全に無力じゃん。
そりゃ戦闘経験がないっつったら嘘だが、こいつに通用するもんじゃねえし。
うん。間違いなく返り討ちにあう)
そう納得したユーシャは黙ってこの場から引き下がるのであった。
「せんぱぁ~い……」
入り口からやつれた声で呼びかける後輩にクラス一同、目を向けた。
普通、上級生が一斉に自分の方を向いたらたたらを踏んでしまうのが
一般的なのだが、この女子は少々頭が足りていないおかげで平気なようだった。
「エクスマ?」




