友情って何だ?
「って上級者すぎるぞ、コレ!」
ユーシャはそこから激化する痴態の想像を打ち切り、思うままに叫んだ。
「とか言いつつ、かなり際どいところまで考えていたじゃないか」
「うるせえ黙れ。人の妄想を勝手に見るな!
そりゃあ確かに脱衣シーンはマジでタったぞ?
けどお前、スカト□とか。俺の趣味じゃねえし!」
「『あきらめるな』。『限界を超えろ』。『お前ならやれる。俺はそう信じてる!』」
「カッコ良さげなセリフ並べたところで俺に腹を立たせる以外、
何の意味もねえんだが、そこンとこ分かってんだよなぁ!!」
「とりあえずまぁ、ともに補習を受ける生徒を呼ぼうか」
「無視すんなっ」
無視した。
ラヴはユーシャの言葉を右から左へ流し、二回拍手をした。
すると、体育倉庫の入り口からひょっこりと頭を出す人影が現れる。
残念ながら逆光で顔がよく見えなかったが、ラヴのクソウザいノリに乗ったことや
ひょこひょこ動くツインテールの房から割と軽い女だという事は伝わった。
「じゃあ軽く自己紹介でもしてくれるかな」
「ハーイっ、分っかりましたぁっ」
美少女は踵をくっつけ直立の姿勢から右手を額の前へ斜めに傾けておいた。
「初めまして! 高等部一年T組低級悪魔のエクスマです。
よろよろ~」
(ウッゼ! ~( ̄" ̄#)~)
という気持ちはさておいて、ユーシャはエクスマを観察した。
神だろうと悪魔だろうとそれの一面だけを見て判断することは人としてやってはいけないことだ。
きちんと相手の心に秘めたものまで見るつもりで接し、どういう人物かをしっかり把握してこそ、
友情とか愛情とかそういうものができるとユーシャは考えていた。
(ふむ、なるほどよく分かった。
つまり、『ギャル系バカ女』ということだな、こいつは)
「全然見てないじゃん」
ユーシャの思考を盗み聞いたラヴは思わずそう呟いてしまった。
「ところで先輩、先輩」
「ああ゛。馴れ馴れしいぞ、テメエ。犯すぞ」
「僕の目の前で良くそんなことが言えるね。させるわけないでしょ」
「じゃあ顎割るぞ」
「それなら良し」
舐めた口をきかれて機嫌を悪くしたユーシャの脅しにエクスマは
へらへら笑って答える。
「嫌ですねぇ。そんな怖いこと言わないで下さいよ、先輩。
ちょっとお願いしようとしただけじゃないですか?」
「お願い?」
「はい! あのですね。ちょっと協力して一緒に補習サボりません?」
「おい」
またもラヴは呆れた口調で会話を止めた。
「君らね。学校関係者の目の前で悪事の企画を立てようとしないでくれるかな?
せめて僕のいないとこでやってよ。悲しくなるんだよ」
「えっへへ」
頭を掻いているものの全く反省の色を見せないエクスマにラヴ……
ではなくユーシャが一歩近づいた。
「ぜひ協力しよう」
「さすが先輩。話が分かりますね」
どちらからともなくお互いに手を伸ばし固く握った。
「先輩とはいい友達になれそうな気がします」
「何言ってやがる。俺たちはもう『同志』、だろ?」
同じ目標を目指すもの同士が立ちふさがる困難を打開するため、
助け合い、心の深いところで繋がりあう。これを友情というのだろう。
学生といえば青春。青春といえば友情。ユーシャは今、学生の本分を感受しているのだった。
「…………何これ?」
蚊帳の外に追い出されたラヴは目の前の山門芝居のような友情劇を
遠い目で眺めていた。
「…………何これ?」




