善意なんてなかった
精魂を使い果たし、床に座り込むシャルロットの問いにユーシャは答える。
「そりゃお前、お前みたいなゴミを最初に攻略しようとしたことだよ」
攻略と言う言葉が何を表しているのか、聞いたほとんどの人間がすぐには理解できなかったが、
とりあえずどうでもいいことなのだろうと分類付けした。
ユーシャは膝を曲げて胡坐をかいて言う。
「俺は、とにかく女にちやほやされたい。
ハーレムの中で生活して、好きな時に乳揉んだり、膝枕してもらいたい。
そのハーレムの第一号としてお前を選んだんだけど……ホンットに失敗したわ。
まさか中身がこんなに鬱陶しい奴とは思わなかった。
ツンデレはもういらねえわ」
人権の侵害。名誉棄損。思想の自由の侵害。
ユーシャの言葉を聞く人間は全員それを思った。
「けどまぁ、一番目って大事だろ? なんていうかモチベーションとか色々あるじゃん。
落ちが攻略ヒロインの退学って完全にBADENDだろ。
つーか、もう色々どうでも良いからよぉ。
せめて形だけでもヒロインとの結婚っていうHAPPYENDを作りたかったわけだ。
あぁ、そうそう。結婚って終わり方にしたのはさ、そうした方がお前と関わらなくて済みそうだからだ。
なんていうか行きつくとこまで行っちゃった後っていうか?
HAPPYENDなんだけど、もうそいつとはそこで終わり、な感じがするわけ。
まっ、半分はお前へのいやがらせだがな」
ユーシャの斜め上な発言に牧師役をさせられたラブは、開いた口をふさげなかった。
(よくもここまで身勝手になれたものだ)
「おい。今お前、いや何人か俺のことを自分の事しか考えてないクソ野郎って思っただろ」
ユーシャのドスのきいた言葉は彼に慣れているラヴを動じさせることはなかったが、
会場の何人かがひっと息を吸い込んだ。
殺される。これだけ身勝手な人間なら自信を罵倒する思想を持った人間に対して
どれほど凄惨で理不尽な報復をしてくるか分からない。
自分のことを言われていると感じた人間は軒並み、心臓を握りつぶされた心地になっていた。
しかし、
「実際そうなんだろうな。社会的に見れば俺は身勝手で、ジコチューで、
とんだDQNのクソ野郎なんだろうよ」
意外にも、ユーシャは目を伏せて自虐的なことを言い出した。
「俺って(ギャルゲー上での)人生経験が多いから、分かってんだよ。
主人公が強くなって敵を倒す系のゲームの悪役は大体そんなことを言ってたし、
主人公が他人のために戦う時もカッコいいBGMが流れてた。
それは多分、そういう奴がカッコいいって社会から思われてるからなんだろうな」
さらに意外なことにユーシャが何やら哲学的なことを言い出した。
例に挙げているものはともかく、言っている内容自体はそれほど悪質ではない。
それに目を丸くしていた。
「けど、聞いていいか?
自分の事しか考え無いって悪いか?」




