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勇者は神様に頼んでギャルゲーの世界に転生しました  作者: 火村静
攻略ヒロイン一つ目 ツンデレ編(63928文字[空白・改行含む])
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国王なんていなかった

シャルロットの体を荷物のように車に積んで

学校を出発してから、三十分が経った。

補足すると、ユーシャは現在無免許運転中だが、

それを取り締まる人間が現れないので

快適にタイヤを転がしていった。(※本当に危ないので絶対にやめましょう)


車窓から周りを見ると周期的に並ぶ木と雲一つない青空、

そして中央線がまっすぐ続くだけの車道を走っていた。

分かりやすい『道』ではあるけれど、何の音もせず

人の気配を全く感じ取れないこの場所は明らかに普通の場所ではなかった。

「ワープ中に通るワームホールっていう亜空間らしい」

と、ユーシャは適当に答えた。

それから十分間走り続けた後、

(というよりこの男(ユーシャ)が運転を楽しみ終えたときのような……)

トンネルを抜けるように世界が変わった。

「ここは……」

シャルロットは全く予想していなかった光景に目を丸くした。

水を張った堀で囲んだ純白の城壁、その中にそびえたつ三又の槍のような城。

グリスーア城。

シャルロットの故郷、オーレステゥー皇国の王が住む城だった。

「よし、行くぞ」

ユーシャが降りると今まで乗っていた車が霧となって消え、シャルロットは尻餅をついた。

そして、どういうトリックを使ったのか。シャルロットの体がふわりと浮かび上がり

ユーシャの後ろをついて行く。

「ちょっ、ちょっと待ちなさい。まさか城に入る気!?

止めなさい。そんなことをしたら私たちそろって死刑よ」

「そんなこと知ったことか」

シャルロットの警告を無視してユーシャは城門に向かう。

「今まで城に入るときは裏口とか荷物に紛れてしかできなかったが、

正面から乗り込むのってテンション上がるな!」

ユーシャが名前を聞かれたときに応える口上を考えていると、

タイミングよく二人の門番が現れる。

「貴様! 一体この城に何の用だ! 名乗れ!」

「(おおっ。良いな、これ。)俺は――」

「おいっ、こいつ。魔王を倒したっていう神野ユーシャと我らオーレステゥー兵士の面汚し、

アズロン伯の娘のシャルロットだ。前日のテレビで見たことがある!」

「本当だ。急いで国王様に報告せねば!」

「兵を集めろ! 絶対に通してはならん!」

と、門番をはじめとする兵隊タイの迅速な対応のせいで、

ユーシャが名乗りを上げる前に万全な防御態勢が敷かれた。

ブチッ!

それは、かっこよく決める期待を裏切られて激怒したユーシャの青筋が切れた音だった。

【《スキップ》発動 →ユーシャは王室にたどり着いた。

ユーシャは誰に感じ取られる間もないほどの超スピードで走り、

0.001秒で城の最上階にある王室の扉の前に着いた。】

「お前ら、めんどくさい」

少し不機嫌気味なユーシャは三メートルを超える目の前の扉を蹴破った。

「チーッス! コンチワー!」

蹴破った扉は真っすぐ奥へ飛んでいき、国王の頬を擦って壁に刺さった。

「おやおや、これは珍しいお客人だ」

玉座に座る国王は傷から血を一筋垂らしていながら、

毅然とした対応で迎えた。

「本日は一体どのようなぶげらっ!」

「やかましい。てめえは喋るな。モブキャラ風情が」

ユーシャは国王の頭を踏みつけ、【以下省略】

ということで新しい国王になった。


『はい。つー事で早速、貴族共の財産と土地は国の物、つまり俺の物だから

全て没収させてもらうわ。あと、爵位も無し。お前ら全員農民、いやそれ以下の何かだ。

ふざけるなって? 良いよ? 国外追放してやる。

俺に歯向かう奴、余計な騒ぎを起こして無駄に俺を働かせる奴は、処罰対象だ。

それ以外なら何をしようと構わねえ。てめえらの事はてめえらでなんとかしろ。

それがこの国、唯一の法律だ。

最後に言っておく。今日からこの国にある全ての決定権は俺にあるんだ。

俺を立てろ。跪け。黙って従え。以上』

何の前触れもなく流された国営ラジオの放送は国中に広がり、

のちに多くの波紋を作ることにもなるがそんなこと知ったものかと、

ユーシャは一方的に言ってはスピーカーの電源を落とした。

「一体、これはどういうつもり」

二人だけとなった城の中で、シャルロットの声は良く響いた。

(滅茶苦茶だ)

シャルロットはただこの国の事を憂いていた。

社会へ貢献してきた貴族たちが軒並み一文無しへ落とされ、

いきなり騎士隊が解体されて国民が混乱しているにも関わらず何の対策も打たない。

しかし、あまりある財産で何かをしようという素振りも無ければ、

自分への仕返しとしてわざわざ貴族を没落させる理由も思いつかない。

シャルロットは怒るより先に疑問をぶつけた。

それに対して、ユーシャは言う。

「別に? 強いて言えば、俺は国王、お前の家は農民以下。

この身分の差が欲しいだけだ」

「そう」

自分から聞いてきたにもかかわらず素っ気無い返事にユーシャはがっかりする。

「おいおい、あんまりショック受けてねえみたいだな?

やりがいが無えじゃねえかよ」

「いや、もうここまで貶められると怒る気もないというか」

「失うものが無いからもう好きにしてくれってか?

何言ってんだよ。まだあるじゃねえか。むしろ今までのはそのための前座だぜ?」

「前座? 今度は一体何をするつもり」

ユーシャはふっと笑うとシャルロットの唇を指で触れた。

「お前の『初めて』をもらう」

それを聞いた途端、生気を失った瞳に恐怖がよみがえり、

顔が真っ青に染まる。

「今日、午後七時にここで俺とお前の結婚式を挙げる。これも全国生中継だ。

学園の奴らにも招待状を送るからよ、思いっきり大勢の奴らに見せつけてやろうぜ」

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