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勇者は神様に頼んでギャルゲーの世界に転生しました  作者: 火村静
攻略ヒロイン一つ目 ツンデレ編(63928文字[空白・改行含む])
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聖戦なんてなかった

死を宣告するようにユーシャは言ったその時、

地面が揺れ二人の足元に亀裂が入る。

「そんな事、僕が許すと思っているのかなっ!」

石畳の地面が割って伸びる細い腕がユーシャを掴もうとする。

しかし、ユーシャはシャルロットを抱き上げて軽やかに逃げる。

「来るとは思ってたぜ」

地面から這い出して来るのは事務員兼大天使のラブだった。

「恐喝くらいなら許せるんだけどね。凌辱行為はちょっと見過ごせないかな。

しかも、こんな公衆の面前で宣言されちゃった上に放置した、なんてことになったら、

学校の評価が下がっちゃうからね。是が非でも阻止しないと。と言うかさ」

ラヴの作業服が輝きだし、真っ白な絹で織られた祭服に変わる。

「なんで力使わないの? 力を使えば僕が干渉することもなかったのに」

「あん? そりゃ俺にも色々思うところがあってな。ちょっと縛りプレイでもしようかなって」

「ほうほう。つまり、僕が邪魔することを知ったうえで力を全く使わずに犯罪を成功させると?」

「全く使わねえわけじゃねえけど、まぁ~、お前を出し抜くくらいなら余裕だわ」

「ほう~。なるほどなるほど」

ラヴは腕を組んで何度も深くうなずく。そして、一歩、足を出す。

その瞬間、割れた地面に草花が咲き誇り、大樹が伸びる。

色彩の鮮やかな自然と歩いているラヴ自体が美形であることから

美術館に展示してもいいほどの絵になること間違いなしの光景だった。

しかし、それに見とれてはいけない。

想像してほしい。目の前で生い茂る草木を赤々と燃える火に置き換えたとして、

同じことが思えるだろうか。

危険と思える度合いが小さいだけで、やっていることは明らかに異常だ。

神業、と言っても起こしたものが大天使なら本来の力を発揮したと言える。

そして、この局面でそれを使った理由など言うまでもないだろう。

「ちょっと舐めすぎじゃない?」

背中から十枚の光の翼が展開されると、それまで生えていた草花がありえない成長をする。

普通の花を一本丸ごと縦・横・奥行きに引き延ばした物体の束は、

もはや不気味としか言いようがない。

「主人公の絶対条件って知ってる? 特殊能力だよ。

人に好かれる能力もない。出鱈目な強さもない。

伝説と呼ばれるような存在の七光りを受けているわけでもない。

そういうものを持っている雑魚でさえ、わざわざやられて『あげて』、

好きに『させてやる』のが僕らだというのに、DQN風情に出し抜かれたら、

何回世界が滅ぶと思っているんだ。調子に乗るのもいい加減にしてほしいな!」

ラヴに向かって天から光が差し込み、神々しさがどんどん増していく。

威光に恐れおののいてへたり込む生徒たちがいる中、

それでもユーシャは不適な笑顔を見せつけ、自信満々で立っていた。

「余裕だね。良いよ? 殺しくれて全然かまわない。

それを君が本気を出さずにできるならね!」

他を圧倒する力を持ったラヴが動く。平和な学校の入り口が今、

聖戦の舞台となるのだった。

♪ピンポンパンポーン

「「…………」」

緊迫する空気に息をのむ生徒を含む学校関係者たちは、

タイミング良く、いや悪く鳴ったチャイムの音にコケた。

『ええ。学校事務担当、ラヴ様。至急職員室までお願いします。

繰り返します。学校事務担当、ラヴ様。至急職員室までお願いします』

♪ピンポンパンポン

(((台無しだ……)))

この場にいる誰もがそう思った。

ラヴは呼び出しに応じるため、展開していた力を鞘に納める。

「運が良かったね、なんて言わない。偶然じゃないはずだ。

けれど、力は使っていなかった。

一体何をしたんだい?」

「別に何も? そんなに知りたいなら、ネットで検索しろよ。

世の中のほとんどの事が載ってるぞ」

ユーシャは茶化した口調を止めない。それを咎めようとしたとき、

野次馬の一人が悲鳴を上げた。

「今、ここであったことがテレビに流されてる」

「「「えええっっっ!!!」」」

それを聞いた生徒たちが携帯電話を起動して検索する。

テレビ:生中継された映像を背にアナウンサーが報道する。

学園HP:炎上

ネット掲示板:『聖マリア学園、オワターww』、誹謗中傷の書き込み勃発

今もなお、校門の様子がネットで生放送されていた。

その画面が不自然に揺れ、次の画面にはズームアップされたユーシャの顔が映る。

「俺とこいつの決闘を生放送したようにこいつの惨めな姿を全世界に晒してやった。

これで先ず、こいつの『強い』っていうアイデンティティをぶち壊してやったんだよ」

ハハハ、と高らかに笑う声も野次馬の全ての携帯から流れて反響する。

そして、この状況からラヴは自分が職員室に呼び出された理由を理解した。

「君、正気か!? 下手すれば学園ごと破滅するよ!?」

ラヴの言葉に野次馬の一人、猫耳娘が驚き、隣に立つクラスメートに聞いた。

「にゃにゃっ!? どうしてにゃっ!? 何で学園がつぶれちゃうんにゃよ」

「それはね。今のような酷いことをするような危ない人を学園が入学させたからなの」

「それでにゃんで学園が破滅するんにゃっ!

にゃにも関係にゃいにゃん」

「いいや。あるんだよ、二年H組、ネココ・ストリングス」

ラヴは背後にいるネココに説明する。

「どんな事情であれ、生徒の問題は学園側にある。

保護者から預からせてもらっている立場がその子供に危険人物を近づけさせたこと。

もしくは、問題のある生徒を更生できなかったこと。どちらも教育機関としては問題だ。

しかも、特例で入学させた女子校初の男子生徒が問題を起こした。

もうこれだけ多くの人に知られてしまった。穏便に済ませる事はできない。

最悪の場合、みんな仲良くバラバラになってしまう!」

「ええええっ」

今まで他人の事だと思っていた転校の話が自分に向けられると、

それまで大人しくしていた生徒たちが慌てだした。

「だまれーっ!」

不安と焦りでざわつく校門、そこへユーシャが鶴の一声を上げる。

「心配すんな! ンなことは絶対に起きねえっ。

何でかと言うとそこの事務員が何とかしてくれるからだ!」

「ちょっ!!」

責任を全て押し付けられ、ラヴは白目を剥く。それを無視してユーシャは続ける。

「こいつは普段、ギャグパートのサンドバック役だったり、

似非お助けキャラだったりするが、かなり優秀なはずだ。

だから、今回のこれもなんとかできる。それがこいつの仕事だからだ。そうだよな!」

「ふざけるなっ! それこそ、君の力を使え! まだ僕には別の仕事が残ってるんだぞ!」

「エー、ソンナコトボクデキナーイ」

「うざいっ! こいつ、マジうざい!」

ラヴは理知的で穏やかなキャラをぼろぼろと崩していく。

「どうだ? てめえを殺すことは無理だが、引っ込ませることはできる。

てめえの弱点は仕事だ。俺の監視のために事務員としている以上、

学校の存続にかかわる仕事からは逃げられないだろ?」

「くっ、そぉ」

そう言って歯ぎしりさせながら振り返ると

「仕事量で給料変わらないんだぞ、畜生めっ!」

と涙ながらに走り去っていった。

「さて、邪魔者は消えた。じゃ、行こうか」

「待ていっ!」

そこへ立ちふさがる二人の男。

彼らはシャルロットを迎えに来ていたモブキャラAとモブキャラBだ。

「あ~…………うん」



モブと言う言葉で察していたと思うだろうが、彼らは普通に()された。

ユーシャは止めてあった車の助手席にシャルロットを縛り付け、

次の目的地に向かうのだった。

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